第153話 ※薔子視点
***薔子視点***
夜明け前、由衣はスマホの振動に気づいて目が覚めた。
時刻は四時四十九分。
白々と明けそめる黎明の光が、紫色の空を薄く縁どっている。
隣で寝息を立てている高遠を起こさないようにして、由衣は液晶画面に目を落とす。
新着はメールのようだった。
件名なし、宛先はアドレス登録されておらず、見覚えのない英数字が並んでいる。
開いて、由衣は喉の奥で悲鳴を押し殺した。
そのメールには、スマホで撮った写真が添付されていた。
そこに写っているのは、ほかならぬ清瀬芽衣の姿だった。
芽衣が見知らぬ車の運転席に座り、無防備に幼い寝顔をさらけ出している。
一見したところ、ドライブ帰りらしい何の変哲もない写真だったが、問題は写真の被写体ではなく撮影者だった。
本文には短く、こう刻まれていた。
『かわいい妹さんの寝顔が撮れたので送りました。 暁』
ほの白い光の中、由衣は強張った表情のまま、筋が浮くほど強くスマホを握り締めていた。
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