第80話 掃除完了
「ロブ、なんやオークの流れが遅くなってきたな」
「うん、15層のオークは大体間引けたかもしれない」
開始から
上下の層に向かうそれぞれの階段に
オークとハイオークが落とした
まだちらほらはオークの集団らしきものがあるものの、最短経路からは離れているので、スケさん並みの速度とまでは言わなくても
「じゃあ、14層より下の出口に繋いで、順次流していくけどいい?」
「そうやな……ほんなら、ゴブたちのをこっちに回して、14層より下はゴブたちに回してもらえるか?」
「ギャッ!」
「フゴフゴッ!」
3人の同意が取れたようなので、格納門の位置を調整して再開する。
14層の方は、15層からの流入が格納門によって絶たれてから
長さにして半分ほど、といったところだろうか。なんか高速道路の渋滞っぽいな。
早速、渋滞解消されるように階段の穴をゴブ師匠とブタさんの上に開いて、排出を開始する。
勢いとしては悪くないものの、14層に移動させた上空からの視界で確認していると、列解消は結構早めなので、割とすぐ消化されてしまいそうだ。
俺は15層と14層をそれぞれ監視しつつ、再び
ちなみに2人に渡したのはあんパンだったけど、非常に好評のようだった。
そうして10層、9層、8層と続けて、もう間もなくそれらも解消されるかという辺りで、開始から
残りは7層〜4層ではあるけど、狼やゴブリン、あとは若干のオークといった程度なので、
「それじゃ、今の層の排出が終わったら一旦終了ということでよろしくー」
3人からそれぞれ了解を取ったところで、俺は16層の様子を
「……それじゃ、今のところ
「ああ、もしかして15層の異常増殖が収まりつつあるのかもしれない」
「一旦、土壁を外して15層まで押し込み、偵察しつつ判断しようか」
派手な鎧の
ほどなくして作戦が共有されると、前衛と斥候の精鋭って感じの
実は格納門は15層側の出口に張っていたので、16層側で塞いでいた土壁から階段の間には結構な数のオークやハイオークが残っていたようで、土壁が開いた途端に飛び出してきた。
16層に続く階段からの騒ぎを聞きつけたのか、周囲にいた多少のオークたちが寄ってくるものの、物ともせずに切り捨てていく。
その隙を縫って斥候が周りへと散っていき、様子を探りに行ったようだ。
そう言えば、と
恐らく今上がって行った先陣が行けると判断したら、
俺はメモ書きに現在の状況として8層までの間引きが完了していることを記載し、周囲の目線がないことを確認しつつ、ベルトの空いていた左手をこっそりつついた後にメモを握らせた。
……あ、そうだった。
これからのことで、
クロエが元いた、ルーデミリュの地理とか貴族とかについて、ね。
結構込み入った話になりそうだし、今は話すわけにもいかないから、地上に戻ったら話をしに会いに行くことにしよう。
ベルトがウォルウォレンの
かなり間引いておいたし、行けると判断されたのだろう。
総勢100人近い冒険者たちが勢いよく15層を進んでいく。
16層まで来れるパーティなだけあって、それなりの速度で進んでいても遅れずに付いていっているようだ。
……正直、俺はまだ体力的にあの速度だと早々に息切れしてしまうかもしれない。
やはり『成長』とは別に、基礎体力というのが必要なんだと思う。
「おう、向こうの様子はどうなん?」
8層までの
ゴブ師匠やブタさんも一応警戒している程度で待機状態だ。
俺は開けっぱなしになっていた格納門を閉じつつ、3人に感謝を伝えた。
「助かったよ、おかげで冒険者たちも無事帰還できそうだ」
ゴブ師匠とブタさんに手伝ってくれたお礼として、菓子パンや惣菜パンなどをひと抱えほど渡すと、文字通り飛び上がって喜んでくれた。
うん、今度10層にまた訓練に来る時とかには、差し入れでも持ってこよう。
スケさんにもと思って何か欲しいものを聞いたら、既に食事で世話になっているから十分だと固辞された。
「そんなことより、どうするんや?
一応、スケさんには15層の一連のことを話してある。
「うん、もちろん」
予定通り、全力で戦争を潰しに行く。
犠牲を出さない、なんて綺麗事を言うつもりはない。
ただ、今後を考えて結果が最善となるような方向になるよう、可能な限り良い潰し方にしようとは思っている。
具体的に言えば、目標となるのはこの辺りだろうか。
(1)侵攻は確実に中止させるか、戦力を無効化する
(2)首謀者を可能な限り網羅的に討ち取る
(3)次の侵略が発生しないように
ルーデミリュ側の情報があまりに足りてないので、その辺りは地上に戻った
10年経ったとはいえ、王都や主要な貴族の本拠地といったものは変わらないだろうから、その辺りを確認したい。
そして……可能であれば、マシな貴族に渡りをつけて、その人たちに仕切ってもらえるよう手配する。
正直なところ、(1)の進軍の阻止に関しては地上なので本当の意味で何とでもなると思っている。
それこそ、地形を変える勢いで土を削って足止めすることも可能だし、付近にあるという湖の水を全部抜く勢いで格納しつつ、それらを一気に放出して隊列ごと押し流してしまうこともできる。
まあ、1リットルの水は1kgだからね。至近距離で加速してぶつけりゃ、よっぽど事前に対策でもしてない限りは、文字通り『初見殺し』になるだろうから。
でも、この場合って魔法で水を作り出したわけではないから、恐らく物理攻撃になるんだよな?
だとすると、咄嗟に大量の水が飛んでくると認識した後、当前のように魔法だと判断して魔法防御したところ、実は物理の水が噴出するわけで、2重に『初見殺し』かもしれない。
まして、術者である俺はその場にいる必要が一切無い。実際に出来るかは分からないけど『逆探知』でもされない限りは、バレる心配も無い。
隠密性とかゲリラとかって意味では、本当にチートだと思う。
だから、そっちについてはギリギリまで無視できると思っている。
でも問題はやっぱり、『終わらせ方』だと思うんだよなぁ……。
本当、この辺りは1から情報を集める必要があるわけだけど…………まあ、何とかなる、というか、何とかしよう。
さて、後はベルトたちが上まで戻ってくるの待ってればいいか。
4層からも一斉突入が始まっているようだし、割と早めに終わるかもな。
………………。
…………そういや、なーんか忘れてる気がするんだよな。何だっけ。
多分15層辺りでやることが……あったような?
…………あ。
完全に忘れてた。
というか、忘れたままオークたちを追い立てるのに
…………うん、人工
よし、2人をアジトダンジョンに一旦飛ばした後、スケさんに手伝ってもらってダンジョン外に運び出して、冒険者ギルドにお届けしちゃおう。
後はギルドに任せよう。こっちは戦争を潰すのに忙しいんだ。
さて、フィファウデのギルマスの部屋はどこだったかな…………。
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