第146話 地図

……いや、うん。


これ多分、クエストのクリア後で報酬受け取ってたら、バチクソにキレ散らかしてたかもしれないやつだ。


『このクエストやる最中に一番欲しかったやつじゃねえかよ!』って。


▼地図 Lv.1 / 0%

使用可能:

 【地図表示ビューア】【検索サーチ】【移動ムーブ

性能補正:

 なし


【地図表示】

行ったことのある場所の地図が記録され、任意の位置を表示することができる。


【検索】

【地図表示】内にある検索対象を表示できる。

※【地図】【鑑定】【気配察知】の所持により解放されました


【移動】

【地図表示】の任意の位置へ対象を移動させることが可能。ただし移動方法および消費MPはスキルに依存する。

※【地図】【空間魔法】の所持により解放されました


……うん、ステータス画面の左で【地図】と表示されるようになったボタンを選択し、現在地のヨンキーファ付近を広域表示させて、画面上部の空欄に『教会』って口頭で指定したら、付近の教会がちょうど15カ所表示されましたね。ええ。


完全にWeb地図の操作機構システムを踏襲してますよね、これ。


それで……うん、付近にあるヨンキーファの教会を選択して、【移動】で格納門を移動させると。


はい、移動時間ナシで目的地の上空付近に格納門を置くことができるようですね。


実質これ、瞬間移動ファストトラベルって言われるやつだわ。いいの?


そういえば、【移動】の追記を見る限りだと【空間収納】ってやっぱり分類カテゴリ的には【空間魔法】に入るんだなって。


まあ、収納はもちろんのこと、格納門転移ゲートワープも使えるわけで、疑いようもなく関連性があるとは思っていたけど。


あと【空間魔法】で有名な性質って言うと……『空間切断』とか、そういうやつぐらいか?


ただし個人的には、空間と空間が見かけ上は切断されてても、それは3次元空間上の視認であって、4次元空間上では接続されてる可能性が普通にありそうだから……なんて考えてしまって、ちょっとその存在に懐疑的なんだけどね。


格納門転移ゲートワープにせよ格納門単体にせよ、側から見たら切断手品マジックだもの。


実際は【空間収納】という次元を介して、連続性は保たれてるわけだけど。


……逆に、そんな感じで俺が出来なそうだと考えてるからこそ、『空間切断』ってのが実現できてないとも言えるんだろうけど。


鉄の塊が空を飛ぶなんてあり得ないと考えているうちは、飛行機なんて開発できないんだよな。


ん? 何の話だっけ? ああ、【移動】の性能確認だったか。


あとはそう、拡大率によって排出先の高さが決まるようなんで、あまり拡大させた状態で使うと、人がいる目の前に格納門が出現することになるので、注意が必要って事ぐらいだろうか。


……もう、あと下準備で必要なことって、高速で付近を移動して地図を埋めることだけじゃね?


というか、移動時間が圧縮されることで一気に件数が稼げるようになったから、2〜3日で済む可能性も出てきたよね、これ。


教会の位置を探す必要も無くなったから、あとは格納門を内部に潜入させて、箱を置いていくだけの単純作業。


うーん、ここ数日で懸案だったことの半分ぐらいはすっ飛ばしていくような、そんなスキル。


……いや、配布の優先順位とかは必要な検討だったから、元から『巡礼帳』とかは必要だったとは思うんだけど。


元から描かれた地図が無かったら、リナやラビット氏に協力してもらって、情報を集約することも出来なかっただろうし。


流石に【地図】からは、現在の政治情勢や経済状況といった、各地域の詳細は読み取れないわけでね。


いずれにしても、これで明日以降の作業の大部分が省略できる。


簡易地図と実際の【地図表示】を照らし合わせつつ、優先順位に合わせて配っていく流れになるわけだ。


まあ、結局は格納門が【距離延長】の範囲である5日の距離に制限されるので、この拠点で全て寝ながら作業、というわけには行かなそうではあるんだけど。


ちなみに【地図表示】で行ったことがあると判定される面積は、【気配察知】できる範囲程度は含んでくれるらしいので、鉛筆1本で地図を塗りつぶすかのように、細かく埋めていく必要はなさそうだ。


……うん、箱詰め作業はとっとと終わらせることにして、各区画の拠点となる宿を取って、地図埋め作業しよっか。


というか、これクロエの案件でも使えそうだよね。


適当なルーデミリュのダンジョンから出て、主要な都市を検索しつつ地図を埋めておけば、俺が瞬間移動ファストトラベルを繰り返して移動し、【ダンジョン化】する流れで、どこにでも大人数で移動できてしまう。


とはいえ、あんまりルーデミリュの王都に直接は近付かない方が無難そうだし、宿を拠点として確保するにしても【距離延長】が届く範囲で適当な街にでも泊まるのがいいかもしれない。


5日の距離範囲であれば、都合いい場所もあるだろうし。


まあ、先の話は置いておこう。まずは納品物の梱包を済ませてしまわないとね。


…………と思ったら。


『神託メールが1件届いています』


作業再開、と思って女神像フィギュアを持ち上げようとしたところで、再度新着・・メールが来た様子。


あれ、やっぱ【地図マッピング】が便利すぎるから調整ナーフするわ、とかじゃないよね? ね?


「……あー……うーん、なるほどなるほど。確かに、ね」


そこに記載されていたのは、運用方法について一文を追加してほしい、といった内容だった。


うん、これはあった方がいい。


というか、この辺りを女神様が、あるいは女神像および更新アプデ機構システム側で担保してくれるのは、悪用される心配が減るので心理的に助かる。


…………ただし。


「蓋、作り直しだな……」


いや、これは必要な作業だから、そこまでの落胆は無いんだけどね。


アレだ、ゲームとかの制作に不具合バグってものは付きものだそうだから。仕方ない。


◇◆◇


「よし、これでいいかな」


蓋に彫られた文章に、1行ほど追加が入った。


・犯罪歴や悪行カルマにより更新内容が無効化される場合があります


幸いなことに、蓋の文章にはまだ余白があったので、詰め込むことが出来た。


これ、確かに心配事の1つではあったんだよね。教会から盗まれた場合はどうしようか、とか。


上記の仕様で、仮に盗まれた場合は『窃盗』という犯罪歴が付くだろうし、盗まれた先で犯罪者が更新アプデしようとしても効果は出ないだろう。


結構根本から対応を入れてもらえた感じだ。非常に助かる。


そういや、ルーデミリュでは早めにダンジョンに入れる関係で、『成長レベリング』によって犯罪者が強化されてしまうって弊害が発生してる話もあったっけ。


あの誘拐の件も黒幕・・と思われる逃亡者……恐らく貴族絡みの犯人はまだ捕まってないわけだし、もし犯罪者側が更新アプデできず相対的に弱体化するのであれば、解決の糸口になり得るかもしれない。


その辺りは、調査をしてると思われる王立騎士団の方々に、優先的に更新アプデ入れてもらって頑張ってもらうことにしよう。ダンジョンは多くないけど教会は余分にあるからね、王都は。


さて、再度女神像フィギュアに触れても……うん、流石に更新アプデやメールはもう無さそうかな。


よし、それじゃ改めて梱包を開始しますか。はいどんどんしまっちゃおうねー。


◇◆◇


※しばらくお待ちください


◇◆◇


えーと、うん。


勢い余っていくつか余分に梱包してしまったけど、まあいいか。


888箱(+12箱)の女神像フィギュアBOX完成!!


作業時間は鐘1つ2時間ちょっと、ってところだろうか。最初は10秒ぐらいかかってたけど、慣れると平均で5秒ぐらいで入れられるようになったからね。


途中から対応を入れた、机の表面に作られた板1枚程度の段差・・。割とこれがいい仕事をしてくれた気がする。


横から箱に入れる際、女神像を少しだけ持ち上げる工程が、繰り返すうち若干手間に感じて。


それで、箱の底にある段差と女神像を置いた机の上が同じ高さになるよう、箱を置く辺りの机自体を【空間切削】で削り取って、置いたらそのまま横に滑らせるだけにしたわけだ。


多分、女神像フィギュア梱包専用で今後一生出番は無さそうだから、この微妙な段差がついた机は【空間収納】の奥底に眠ることになると思うけど。


……個数に間違いないか【空間収納】の記載を確認したところ、


『女神デメディシナ像(梱包済)×900』


となっていたのは、果たしてツッコむべきなのかどうか。


まあ、スルーしておこう。うん。


さて、時間はもうすぐ7の鐘18時を回ろうとしている。


配布は明日の夜から開始する予定と、リナ経由で子爵には伝えてもらっているから、それまでに埋められるだけ地図を埋めていくことにしよう。


……あ、そうだ。


せっかく時間に余裕が出来そうだから、いくつか教会の礼拝堂にでも潜入して、配布の予行リハーサルでもしておこうかな? ぶっつけ本番ってやつだと、何かと怖いし。


場所は……せっかくだし、あそこ行ってみるか?

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