第204話 朝会
「おはよう諸君、今日からこの時間で連絡事項などを伝えることになる。遅刻しないよう夜更かしを慎むなど生活習慣を整えるようにしてほしい」
真面目な表情であまりに普通のことを言うフィン先生に、少し吹きそうになってしまった。
どこの世界でも一緒なんだな、寝坊しないよう注意するやつ。
でも、こっちの世界でもいるんだろうな。寝坊の常習犯は。
一説には朝に納豆を食べると良いって話があった気がするけど、果たして
そもそも納豆は出回ってないけど。バナナでもいいんだったかな?
「では連絡事項だ。本日から始まる、各授業の
今日はこの後、1〜2時限分の時間を使って基礎科目である『
それに続いて、3〜4時限分の時間を使って、単位認定試験として筆記の
これも『話法』『文法』に分けて試験があるとのことで、2時限分の配分となっているようだ。
その後、昼休みを
こちらは、両方を受ける場合
「単位認定試験を受けない者は、3限目以降は自由にしてもらってかまわないが、この教室を含む東西の『教室棟』では1〜3年の試験が行われているので、この辺りで騒ぐことがないようにしてもらいたい」
もしも試験中、廊下で騒ぐ輩がいた場合に、
それこそ、廊下の端から撃てば、証拠も残さず完全犯罪できそうだけど。
「最後に……ロブ。昨日質問されて保留にしていた『成績優秀者』の件だが、確認が取れたので報告する。こちらは単位認定試験の成績または通常の授業による試験成績を参照し、順位付けを行うことになった」
なるほど、一斉試験ではなくても順位付けする方式になるようだ。
ただ、試験の点数で評価すると、片方の試験で全員が満点を取れるような、不当に簡単な問題が出された場合に公平ではなくなってしまうため、試験ごとに『優・良・可・不可』で評価を行うらしい。
偏差値で評価を点数化する、みたいな感じになるのかな。偏差値60以上は3点、50以上は2点、とかそういう。
「この場合、昨日配布した資料の時間割りに含まれる、必修および選択の基礎科目の単位のみを参照することになるが、同じ評価の場合にはより単位認定数の多い方を上位とする。これは次年度以降も必修と選択の応用科目として同様の参照が行われる想定になる。詳しくは試験期間終了後を目処に掲示が行われる予定なので、そちらを確認してほしい」
つまり、時間割りにある科目の『優』や『良』の数が多いほど上位になり、同数だった場合は応用科目などで先行して単位認定されている科目が多い方が有利、ということらしい。
うん、聞いた感じでは割と公平感があって良さそうだ。
単純に、より良い評価を受けた人、その中でもより多くの科目を習得している人が『成績優秀者』となるわけで、非常に分かりやすい。
もちろん、厳密に1点の差が出にくくなるので、規定の科目だけでは同率1位が何人もいたりするかもしれないけど、応用科目の単位数には差が出るだろうし、探索実習での評価の方も入れば完全な同率は少なそうだから、問題ない気はする。
「ありがとうございます、『成績優秀者』の件は把握しました。お手数をおかけしました」
「よし。では以上で朝会を終わる。この後は
そう言い残すと、フィン先生は教室から颯爽と退出していった。
間もなくして
学園の時間割りでは、この後の10分が休憩時間、または教室の移動時間になる。
そして、授業時間は50分となっており、休憩時間と併せて1時限あたりちょうど
この
……というかむしろ、終了時間を鐘の音に合わせる都合で、授業時間が組まれているように思えるなこれ。
まあ、基本的にこの世界は聖白銀教会の鐘の音を基準に動いているから、これがある意味での必然なのかもしれない。
前世の時間割って『8:20〜9:05』みたいな微妙な開始・終了時間だったよね。
それで、教室には必ず時計が教壇の上にかけられていて、その微妙な開始と終了が分かるようになっていたっていう。
あれは、恐らくあのアナログ時計ってやつが量産されて、至る所に置けるほど安価な商品であることが前提なのだろう。こっちでは懐中時計すら見かけないもんな。
……もし、こっちの世界でも時計を持っているのが常識だったら、5分刻みの微妙な開始・終了の
さて、この後は
そうだ、ヌールちゃんとの授業内容のすり合わせについて、どうだったのか聞き忘れてたな。
「リナ、そういえばヌールちゃんって試験は大丈夫そう?」
「そうね、
……あー、そうだった。
お国が違うから、そりゃ『歴史』って言ったって、知っていそうなのは『ルーデミリュ』史の方になるだろうなぁ。
『勇者』史とかだったら満点取れそうなんだけど。
「試験は2日後だから、多少は覚えられるかもしれないけど……一応、歴史の
まあ、俺も付け焼き刃で10日ほど馬車の中で読み込んだら、なんだかんだで結構点数取れる程度になったんだよな。
ヌールちゃんはハイエルフの血を強く引いてるようだから
「……ヌールちゃん、それ覚えるのために、昨日夜更かししてた?」
「あっ。え、えっと…………」
ああ……そりゃ眠いはずだ。何時までやってたのかは分からないけど。
「あの、みんなとダンジョン行きたくって……置いていかれたくないし…………」
「ああ、うん、別に責めてるわけじゃないから。大丈夫大丈夫」
まあ、探索を楽しみにしてくれているなら良かったし、でも試験に落ちて行けなくなるかもって焦る気持ちも分かる。
それに、夜更かしは良くないけど、俺もバイトで追われて試験勉強がヤバかった時は、大量に売れ残ってて捨て値で貰ってきてた、変な風味のエナドリ飲んで徹夜してたからなぁ……。責めるに責められない。
「でも、万が一落としても、授業時間を他に移せば何とかなるとは思うから。無理はしないでね」
「はい、わかりました。勇──」
ちょ、待ッ────!!
咄嗟に、ヌールちゃんの口を塞いでしまった。
……そうだった、その注意を朝会前にしておくんだった。
「……ヌールちゃん、俺はロブだからね、ロブ。いいね?」
「あっ、ハイ…………ロブ様」
なんとか笑顔を作ったつもりだったけど、多少引き攣ってしまっていたかもしれない。
周りから若干の視線を感じなくは無いけど、必死に無視を決め込みながら、席へと座り直した。
「……ロブ、女の顔どころか唇に触れるだなんて、流石に私も
うぐッ……!
だ、だって仕方なかっただろ……ヌールちゃんが『勇者』って言いかけてたあの状況は。完全に事故だよ、事故。
てか、昨日の食堂での話からの翌朝って、いくら何でもフラグ回収早過ぎだろ……。
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