第213話 秘密

「じゃあ改めて。私のスキルは【片手剣】と【火属性】ね。でも、あまり【火魔法】として使うことは少なくて、火が効く魔物に【火属性付与】として使うことが多いかしら。剣の腕はそれ・・なり・・自信があるわ」


スキル紹介の先陣を切ったのはリナなわけだけど……勇者スケさん仕込みの剣の腕は、果たして『それなりに』で済ませていいのか。


そんなリナの本領が発揮されるのは、まだ結構先のことになりそうだしなぁ……そのうち『腕がなまる』とかで深い層に連れて行けとか言い出さないか心配ではある。


「それじゃ次は私でしょうか。【聖属性】が使えて、【回復ヒール】【解毒アンチドーデ】【蘇生リバイブ】などを含む【聖魔法】と、クロスボウのボルトなどに付与する【聖属性付与】が使えます」


クララはパーティの回復役としてまさに生命線だから、出てきた魔物によってはテアに専業で守ってもらう必要があるかもしれない。


この辺り、補助戦力サブアタッカーがいることで柔軟に組み換えができるようになると助かるよね。


今までは割と見守り役のスケさんお任せだったけど、本気でクララが倒れたら確実に撤退判断だから、後衛の維持は1つの課題かな。


「それじゃ次は──」


「あんたは最後に決まってるでしょ。次はヌールちゃんお願い」


何でだよ。座ってる並び順で言えば、俺の番だったでしょうに。


まあ別にいいけど……。


「うん! 私は【精霊魔法】が使えるよ。この前教会でお祈りに行ったら、【精霊召喚】が出来るようになったんだ!」


そう言って、戦闘用に着ているローブの袖を少しまくってみせると、その隙間から水色がかった白い蛇が顔を出した。


ヌールちゃんは水属性が得意なんだそうで、水の精霊であるナーガってのが呼び出されたらしい。


基本的に精霊は、呼び出された時間が長いほど結びつきが強くなると伝えられているそうなので、召喚して以来ずっとヌールちゃんは袖の中に飼っているとのこと。


「オーちゃんだよ、よろしくね!」


オーちゃんは持ち上げた頭を下げた。挨拶ができるとは完全に意思疎通できてるようだし、きちんと知能がある感じの精霊らしい。


ちょっとクララが引いてる感じはするけど、女性陣にそこまで蛇が苦手な子はいないようでよかった。苦手な人は本当に視界に入るだけで駄目らしいからね。


俺も黒い悪魔GKは、精霊だったとしても無理だろうと思う。


なお、オーちゃんを出しておくことで、水属性の魔法が強化されるとのことではあるんだけど、一方でリナの【火属性】を弱めてしまう効果もあるので、その辺の相性は若干悪いかもしれない。


とはいえ、【火属性】を持つ敵には特効になるので、適材適所といったところだろう。


ちなみに、【精霊魔法】としては【水球】や【水刃】、あとは【水癒】という回復魔法も使えるんだとか。


攻撃も回復もいけるので、立ち回りは色々検討が必要そうだ。


「次は私だな。この前の『女神像の加護』で【盾職】のスキルの詳細が判明したところで、目下試行錯誤中だ。技としては先程使った【挑発タウント】と、その他に【盾反撃シールドバッシュ】がある。まだ使い始めたばかりではあるが、なかなか有用な技だな」


ブートは辺境伯家に仕える騎士の家系として、盾を扱うには扱ってきたものの、剣のスキルにある【スラッシュ】のような、スキルに紐づいた技があることは知らなかったようだ。


その意味で言えば、習熟度が低めということになるだろうけど、伸びしろが一番あるとも言えるわけで、頑張ってもらいたいところだ。


ブートはタワーシールド系の木に鉄枠がついた盾を装備していて、片手剣も帯剣している。


基本は被弾を防ぐことになるだろうけど、ずっと敵対心ヘイトを維持するために攻撃も適宜加えてもらうことになるので、彼女の疲労状況を把握して適宜休ませるなどの采配マネジメントをする必要があるだろう。


盾の技といえば、被弾を軽減する【受流しパリィ】とか、身体を堅くしつつその場で受け止める【要塞フォートレス】とかが思い浮かぶけど、成長スキルの【盾技】を上げれば、有用な技が次第に増えていくんじゃないだろうか。


さて、(俺以外での)最後はテアだ。


「私のスキルは【斥候】と【短剣】ですね。実はブートさんと同じで【斥候】については『女神像の加護』で詳しく知った程度で、まだまだ練習中になりますね……」


うーん、それにしてはとどめの刺しっぷりは相当慣れてるように見えたけどね。


【斥候】については、先ほど見せた【不意打ち】や【気配消失】、あとは耳が良くなる【聞き耳】で遠くの音を聞いて魔物を探したりもできるようだ。……やっぱり聞かれてたっぽいな。


とはいえ、【聞き耳】は索敵向きなスキルだし、【気配消失】と合わせて偵察役にはお誂え向きって感じの組み合わせだろう。


【短剣】は単純にナイフとかの扱いが得意な他、【必中】という投擲した短剣に強い命中補正がかかる技もあるという。


入学試験の際に、最後に使われたあの技だ。あれは普通にやってたら確実に一発はもらってたし、そこに気を取られて姿を見失い追撃されていたと思う。


動きの速さについては、『成長』とスキル上げによるものなんだろうなー。俺たち3人に次いで、『成長』が高いのがテアだったし。


「さて……最後はロブ。手短によろしくね」


手短、ねぇ……うーん、何をどう見せるべきか。


まあ、俺の場合は色々な理由でスキルが多いってのもあるんだけど……1番の売りはなんだかんだで【空間収納】だよね。


◇◆◇


※しばらくお待ちください


◇◆◇


はい。


説明するより、見てもらった方が早いかなってことでね。


大量の土を取り出してみたり、それを【空間切削】で一部だけ削り取ったり、格納門砲ゲートキャノンで撃ち抜いたり。


最後に、魔力を通す前の透過してないバニッシュマントで皆の視界を塞ぎ、格納門転移ゲートワープでブートとテアの背後に出現して見せて、マジシャン・ロブのスーパーマジックショーは閉幕した。


頭の中にはずっと『オリーブの首飾り』が流れていて、逆になんかインチキショーっぽくて、途中で吹きそうになってしまった。


「すごいすごい! 勇者様すごい!!」


ヌールちゃんは終始喜んでくれていたけど、勇者様って言っちゃってるからちょっと減点かな。


リナが『なにやってんだこいつ』って目で見ていたのは置いておくとして。


ブートとテアは最初こそ驚いていたが、次第に宇宙猫みたいな表情となっていった。


「……とまあ、基本はモノを入れたり出したり出来る【空間収納】ってスキルなんだけど、結構応用が効いてね。移動に使ったり、偵察に使ったり、攻撃にも使えたりする感じかな」


その他、【生活魔法】や【地図】といったスキルもあることを告げると、ブートとテアはなんかお腹いっぱいといった溜息をつかれてしまった。


「……噂の勇者・・パーティ・・・・に加われると思ったら、まさか別格・・が勇者や聖女の他にいるとは思わなかったよ」


「本当、伝説の勇者は剣も魔法も別格の腕前だったと言い伝えがありますが、ロブさんのそれは別格といっていいでしょうね……」


いや、勇者様と重ねてもらってる流れっぽいけど、本物・・はまた別にいるんだよなぁ。機会があれば会わせてみたいけど。


「しかし……良かったのか? こんな秘密を、まだ出会って間もない私たちに話すなんて」


まあ……そこだよな。俺としても、若干心配な部分はある。


しかし、リナ曰く『少なくともロブが同行する間は心配ない』と言っていたので、その辺は任せることにしている。


でも、本当に2人を黙らせる説得材料みたいなものってあるのか?


今もなんか、自信満々に指を一本上に向けて立てているんだけどさ。


流石に『家を潰す(物理)』みたいな脅迫で黙らせるつもりではないとは思うんだけど。


…………違うよな?

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