第206話 試験期間終了

「ロブ様、これすごく美味しかった! これってロブ様が焼いたの?」


たっぷりあったステーキを食べきって、満足気なヌールちゃんが訊いてきた。


ああ、その辺りの話って全然ヌールちゃんにしてなかったな。


「いや、俺じゃないな。学園に入る前に活動していた俺のパーティの1人が、とても腕のいい料理人シェフでね。その人にいっぱい作ってもらって、収納してるんだよ」


ヌールちゃんにはまだあまり【空間収納】やその派生、それ以外のスキルに関してもまだ情報共有していないから、機会を見て話さないとだよな。


ブート嬢も一緒に集まれる時間を確認して、今後の学園ダンジョン探索の計画を交えながら、その辺りの話をしておこうかな。


ラビット氏やスケさん、あとヴァル氏辺りのことは……まあ、機会があればでいいかな。


食べ終わったヌールちゃんの皿を片付けつつ、丁度いい寸法サイズのフルーツパフェを『特別にね』と言って出すと、目を輝かせて食べ始めた。


……若干、あの残念エルフヴァル氏の姿が重なったのは、このハイエルフに近い血による耳のせい、ということにしておこう。


あ、そういえば。ヌールちゃんの更新アプデをクララにお願いしてたんだっけ。


「クララ、ヌールちゃんの更新アプデって、いつ行くか予定って決まってるの?」


流石にヌールちゃんを更新アプデするとなると、公的に証拠を残さないとマズそうだから、俺の持っている女神像は使わないことになった。


そのため、クララに聖白銀教会に連れていってもらえないかと相談していたのだ。


「あ、はい。白曜日でも『女神像の加護』を受け付けている場所が王都内にあるそうなので、そちらで済ませてこようかと思っています。ブートさんも実はまだとのことなので、ご一緒する予定ですね」


そうか、ブート嬢もまだだったのか。それなら、来週末以降の探索を前にやってしまった方が、都合がよさそうだ。


ヌールちゃんも、ルクレール家の血筋に沿って【精霊魔法】を持っていることは前から聞いているので、クロエと同様に【精霊召喚】が出来るようになったら、喜んでくれるんじゃないだろうか。


「ところで、リナとクララはこの後の試験は受けるのか?」


ヌールちゃんは、この後に実施される応用科目の内容までは手が回ってなかっただろうから、このまま寮に戻るのだろう。


俺は当然ながら、試験を受けるつもりでいる。もちろん、図書館の閉架書庫に入る条件である『成績優秀者』のためだけど。


「私は受けておくつもりよ。既に予習してあるからってのもあるけど、どの程度理解できているかも確認しておきたいし」


リナは問題なく受けるらしい。まあ、2年次以降も選択科目とかで『経営学』や『戦略論』が履修済みな場合に受けられる領地関連の授業を取るようだし、既にその辺りが定まっている感じだな。


「私は……あまり歴史が得意じゃないので、『歴史2』まででしょうか。『歴史3』は覚えきれてない気がします」


クララは一応受けるには受けるみたいだけど……自身はない、といった感じか。


そういや、クララは入学試験の時も『歴史』が得意じゃないと言っていたっけ。


彼女もINT知力は高いはずだし、暗記はそれなりに出来るはずなんだけど、こういうのは好みや性格的なもので苦手だったりもするから、仕方ないのだろう。


ひとまず、説明会ガイダンスを含む試験期間はあと4日、科目数としては7科目だ。


結果は試験期間終了の翌日である水曜日に発表されるので、橙曜日の朝会までに履修届を提出することとなっている。


水曜日の午後か、白曜日のクララたちが戻ってきてからでも、ブート嬢も交えて授業履修と探索日程のすり合わせをしつつ、試験おつかれさま会&パーティ結成会でもやることにしようか。


◇◆◇


──────────

語学1・話法:優

語学1・文法:優

数学1・算法:優

数学1・解法:優

歴史1・王国史:優

歴史1・世界史:優

経営学1:優

戦略論1:優

法学1:優

ダンジョン学1:良

薬学1:可

魔法陣学1:良

礼法1:良

──────────


優が9、良が3、可が1。


……うん、まあ悪くないんじゃないか?


薬学と魔法陣学については授業を履修する予定があるので、通常の試験の方で点が取れれば挽回リカバリーできるだろうし。


──試験がひと通り終了した翌日の水曜日、朝会から1限目の時間を使って、試験結果の配布と来週以降の授業の説明が行われている。


獣皮紙に手書きされた各試験結果が一覧となり、単位認定された教科が並べられている。


これで、後はダンジョンに潜る『探索実習』と『戦闘訓練』、あとは……新制度説明会の時点では見逃していたけど、もう1つ実習系の『舞踏ダンス』という科目だけを受ければいい状態となった。


舞踏ダンス』はその名の通り、社交会とかで踊る時のための基礎的な型式パターンを学ぶ時間らしい。


……まあ、前世でも音楽とか美術とか、基礎教養的な科目ってやつがあったから、そういった枠なのだろう。


いずれにせよ、大半の授業が単位取得済みとなり、かなりの空き時間が出来ることになった。


俺は予定通り『薬学』と『魔法陣学』は授業に出るつもりだし、並行して応用科目の『魔法陣学2』の方を履修しようかと思っているけど。


そして、週に1日ぐらいは丸一日を空けておいて、学園ダンジョンの探索の時間に充てるつもりだ。


……ちなみに、『成績優秀者』の初回認定は、授業での定期試験がある3カ月後になっており、それまで図書館の閉架書庫は今しばらくお預け・・・となっている。ぐぬぬ。


「さて、授業の履修について改めて説明しておこう。先に渡してある時間割り通りの授業については──」


フィン先生が、授業の履修について改めて説明するのを聞き流しながら、成績表を改めて眺める。


しかし、ワルター氏の帳面ノートは今回、本当に助かったな。


あれで『経営学』『戦略論』『法学』の単位は取れたようなものだ。


恐らくこの3カ月ほどをかけて予習できていなければ、良を取るのも難しかったと思う。


逆に、優が取れていない科目は……そういうことだ。予習が出来ていなかった科目ということになる。


……正直、薬学はもっと出来るかと思っていた。試験問題を見るまでは。


しかし、薬草の仕分けや品質管理を【空間収納】に完全に頼っていたために、試験で『劣化した特徴として誤りのあるものを〜』とか『偽薬草を見分ける特徴は以下のうちどれか』なんて言われても、全然分からなかった。


実物を渡してくれたら、ギルドに置かれた水晶よりも高精度で完璧に【鑑定】できるのにな。


あっちは、薬草と中薬草も見分けられないし、どうやら劣化の度合いもある程度は許容してしまうようだから。


魔法陣学も、結構細かい用語の知識を問われたりしていて、魔法陣自体ではない問題があったために、点を落としてしまったと思う。


まあ、それでも試験があった全科目で単位認定が取れたのは、良かったと言っていいのではないだろうか。


「……では、これから提出する履修届を配布する。授業を整理する目的で時間割りからの変更を希望する場合は、希望する曜日と時間を第2候補まで記入してほしい」


フィン先生が、毎度のことながら説明と並行して机の間を縫うように歩いて、履修届を配っていく。


しかしなるほど、希望する時間帯か。


時間帯変更で希望者が特定の枠に集中した場合、教室に収まらない可能性があるということなのだろう。


「来週1週間は調整期間となり、必要があれば再提出を依頼する場合があるので、適宜従ってほしい。当然ながら、時間割り通りの履修を予定している者はこの限りではないが。では、質問が無ければ以上で履修説明を終えることにする」


希望枠が満席の場合、別枠への変更が必要になるのだろうけど……なんかこう、現時点で空いてる枠とかが見れて、即座に予約できるような機構システムとかが欲しくなるよね。前世の感覚からすると。


PCパソコンが無い時代のように完全に手作業でやっているんだろうから、情報を整理するだけでも大変だとは思うけど。

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