第207話 試験結果

「2限目の時間は屋内演習場へと向かってもらい、学年合同での探索実習に関する説明会ガイダンスとなるので、遅れないよう移動すること。では」


そう言って、今日もフィン先生は颯爽と退出していった。


今日は先生が言った通り、2限目から3限目の時間を使ってダンジョンの説明会ガイダンスが行われるという。


一応は『成長』したことのない生徒がいることを前提として、初めてダンジョンに潜る際の必要な準備や諸注意などを伝える会になるのだろう。


さて試験の後と言えば、結果を見せあったり勝った負けたと騒いだりするものだけど……教室内はそういった感じではなさそうだ。


次の時限まで食堂や売店に行ったり、寮に戻ったりするほどゆっくりはできなさそうなので、教室の中で駄弁だべり始めている。


……そういえば、Sクラスではあまり単位認定試験を受けた生徒はそんなにいなかったし、履修に頭を悩ませることも無いんだったな。


まあ、時間帯変更するとなると、他クラスに合流することになるだろうから、それを許容できるほどの目標や、それに向けた意欲モチベが無いのだろう。


例外といえば、一緒に探索したいと言っていたドロテーアさんと、彼女と親しい様子のズィルビアさんを含む数名だろうか。


探索目的なのかは確認していないから分からないけど、Sクラスにしては珍しく単位認定試験を受けていた。


というか、半数程度の上級貴族は説明会ガイダンスを聞き終わったら退出してしまっていたので、教室は閑散としていたぐらいだ。


奇しくも後方に座る生徒ばかりだったので、先生によっては苦笑していたけど。


……しかし、単位認定試験が通ったからといって授業を整理しなくても問題ないんだろうし、空き時間を多く作った方が楽でいいんじゃない? とは思わなくもない。


まあ、最初にフィン先生から『他クラスと合同』みたいな話を聞いたから、とりあえずやめておこうって感じなのかもしれないけど。


「ねえロブ、あなたの試験結果はどうだったの?」


リナが、クララやヌールちゃんと試験結果を見せ合っていたようで、こちらにも聞いてきた。


「ああうん、見ていいよ。割と良かったかな」


『優:9・良:3・可:1』の結果を3人の前に出すと、3人が覗き込んできた。


「……うっ。僅差で負けたわ。『優:9・良:2・可:2』ね」


リナは流石貴族家というべきか、『礼法』で優を取っていた一方で、数学の『解法』でつまづいてしまったらしく、『良』止まりになっていた。


また、『魔法陣学』と『薬学』は入学試験用の『科学』の問題集を一応確認して臨んだ程度の知識だったために、『可』だったようだ。


……そういう意味では、俺の知識も似たり寄ったりで、『魔法陣学』については本を1冊読んでいた分だけ優位だった程度なんだけど。


「私は……やっぱり『法学』がダメでした。『魔法陣学』も落としてしまったので、そちらも受講しないとですね」


クララは『優:7・良:3・可:1・不可:2』だった。


聖白銀教会で薬草を育てている関係か、『薬学』が『優』だった。


そうか、クララに教えを請うべきだったかもしれない。


他に『礼法』も『優』だった一方で、歴史の『世界史』は『良』になっていて、やはり苦手な部分のようだ。


『法学』と『魔法陣学』は落としてしまっていたので、そちらは履修が必要だろう。


「ロブ様、見て! 歴史、合格してた!」


ヌールちゃんが指差す先には、『王国史』が『可』、そして『世界史』がなんと『良』と記されていた。


ほぼ4日で『良』判定まで取れたのは、ルーデミリュ側の『世界史』の前知識も影響しているかもしれないけど、実質的な覚え直しでこれは凄いの一言だろう。


「え、『法学』が『可』で通ってる?」


「えへへ、それもちょっと頑張った」


こちらの国トレフェンフィーハの法であるため、こちらも新規で覚え直しだったはずだけど、リナから帳面ノートを借りて勉強したらしい。


これはクララの立つ背がない……あ、俯いちゃってる。


全体的な成績としては『優:6・良:2・可:5』で、なんと全て単位認定が通っていた。


……ま、まあ、前世でもクララみたいに『数学だけ苦手』とか『英語だけは無理』って同級生は普通にいたからな。


恐らくクララは、歴史や法学であったような、羅列された項目を丸暗記する科目が苦手なんだろう。


ああいうのは、面白い余話エピソードとかを交えたり、漫画や小説の中に出てくるような実際にその知識を前提とした場面に遭遇すると、割と覚えられたりするよね。


さて、そうなるとだ。


必修の基礎教科はみんなひと通り単位取得できたので、その時間は空くことになる。


リナは『経営学』と『戦略論』、クララは『薬学』……と『魔法陣学』『法学』、ヌールちゃんは『ダンジョン学』を履修予定だから……こんな感じか。


─────────────

 橙|赤|青|緑|黄|水

─────────────

1 |法|踊| | |探

2 |法|踊| | |索

3 |ダ| |薬|略|実

4 |ダ| |薬|略|習

5陣| |戦| |経|

6陣| |闘| |経|

─────────────


時間割りから、単位取得済みで履修予定にないものを消してみた表を、メモへと書き出してみた。


うん、黄曜日に『経営学』と『戦略論』がまとまってるし、『法学』と『ダンジョン学』も赤曜日にまとまってるから、橙曜日の『魔法陣学』と緑曜日の『薬学』を移してしまうのが良さそうだな。


「クララ、赤曜日の5限目に『魔法陣学』、青曜日の3限目に『薬学』に移そうかと思うんだけど、どうだろう? 第2希望は、いずれも黄曜日の1限目で予備にしておく感じで」


「えーと……はい、それが良さそうですね」


うん、これで橙・緑曜日が空きになるから、最大で週3回をダンジョン探索で過ごすことが出来そうだ。


もちろん、時には片方を休みにしてもいいと思うし。橙曜日を休みにしたら白曜日からの連休だ。


週休2日制なんて、前世の週5で入れていたバイトのシフトを思い出してしまうな。


さて、後はブート嬢との擦り合わせが問題なければいいんだけど、Aクラスとは時間割りが違うだろうから、確認が必要そうだ。


後は……ああ、そういえばドロテーアさんとは試験期間が終わった辺りで、お試しで潜る話をしていたんだった。


探索実習の説明ガイダンスまではもう少しだけ時間があるし、いつ潜ろうかとか日程スケジュールを擦り合わせておいた方がよさそうだ。


明日は履修届の提出があるし、準備も必要だろうから、最短で来週の白曜日になるか?


「リナ、試験前に言ってたドロテーアさんとのお試しで潜る件だけど、とりあえず来週の白曜日でいい?」


「そういえば、そんなことも言ってたわね。まあ、そろそろヌールの『審査』も結果が出る頃でしょうし、問題ないと思うわ」


ああ、そういやヌールちゃんのギルド証の問い合わせの件もあったっけ。


一応、愚痴マスからは『ルーデミリュでのダンジョンへの入場条件と同様、正規の入場許可のあるアイアンDランク以上が過半数いるパーティで入ることを条件に、探索許可が降りるはず』と説明されてはいたので、返事さえ来れば潜れると思われる。


でもそうか、もしお試しの後もドロテーアさんとも潜るようになった場合を考えると……


「ちなみにだけど……もしドロテーアさんも加入するとなると、彼女にも橙曜日とかに1日空けてもらえるよう、今のうちに相談が必要そうだよね?」


「まあ、そうでしょうね。でも……もし空けてもらったら、もうそれはある程度は責任・・をとる必要があるわよ? 流石にそれでやっぱり組めませんは可哀想だわ」


……まあ、そうなるか。少なくとも、次の単位認定試験がある半年後までは変更できないだろうし、それで『ごめんなさい』は酷だろう。

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