第65話 素材系
「ほんなら、次は素材系やな。そういや昨日は『欲しいモノがあるか中身を確認〜』なんて言うとったけど、何かあるんか?」
ああ、そんな感じで
その件については自信というか確信があったから、半ば強引に話を持って行ってしまった部分はある。
けどまあ、大丈夫だろう。何せ、スケさんは『暴食の勇者』だからね。
「ほら、一昨日ダンジョンから帰ってきた時に話したでしょ? 俺がリナとクララの『
「生き返らせたいヤツがおるって話やったか? ……ああ! なるほどな、『
そう、きっとスケさんの魔法袋には討伐した魔物の素材が大量に入ってるんじゃないかと思ったんだよね。
『暴食の勇者』が、魔石とかを拾ってるのに『食材』を拾わないわけがないだろうって。
魔物の肉が使われているラビット氏の料理は既にいくつか見ているし、何らかの手段で解体する
「あったあった、すっかり飯から離れてたからな、そんなん集めてる時のことすっかり忘れとったわ。なるほどな、確かにそれは残しとかな勿体無いとこやった」
「でしょ?」
「また獲ってくればええんやけど、今の時代やと探すのも面倒やろうしなー。昔ならあっこに獲り行くかー、って感じやったけど、今は地上におらんやろうし。ダンジョンの何層で〜みたいなん調べるとかややこしいし」
まあでも、食材ダンジョンとかは楽しそうだから行ってみたいけどね。
2つに割ると中からカツ丼とかカレーとか出てくるような植物なんてあったりしないかな。
「ちなみに食べられそうなのだと、どんなのが残ってる?」
「結構あるで。でもデカすぎて、この辺りのは出すの難しいな。リビングでは狭いし、解体するわけにもいかんしやな。名前だけ挙げとくと、オークキング、ブルーブル、コカトリス、グレートディア、レッドサーペント、グランアリゲーター……おお、ワイバーンもあるで。こいつは塩振って丸焼きにするだけでも美味いんや」
……ここに出せないサイズの素材がゴロゴロあるのって、どうなの? しかもダンジョンでの
いや、食い出があって美味いものを、絶対スケさんは狩りに行ってるはずとは思ってたけど……かなり溜め込んでいたようだ。
「ちなみに、食えないのもあったりする?」
「そこそこあるな。虎とか蠍とか、あと一部の毒持ちの蛇とかドラゴンとかもやな。一応は武器とかにも使えるやろうからゴミってわけでもないんやけど」
狩りの最中に乱入してきたやつも一応回収してきてある、といった感じで、換金目的とかではなかったようだ。
それより、ついでみたいに最強種の名前が出てこなかった?
「うん、その辺りは男爵の手間賃として預けちゃえばいいと思う。てかドラゴンもあるんだ」
「流石に
……文脈的にはそうなんだけど、美味さ基準で語られるドラゴン種ってのはどうなのよ。
まあ何にせよ、『装備品+素材を男爵に渡してよしなに対応してもらいつつ、食材はこちらで回収する』という目論見通りに行きそうで何よりだ。
「ところでさ……スケさんって、解体とか出来る?」
「肉を
うーん、まあそうだよなぁ……。
別に気にしない分にはいいんだけど、どうにも
「ましてドラゴン辺りは血とかも錬金屋が欲しがるんやったか? エリクサーの素材や言うて」
……エリクサーとか錬金の話を引っ張ると、学園フラグが立ちそうなので華麗にスルーするとして。
「やっぱり本業の人に任せたいところだけど……絶対に目立つよねー。冒険者ギルドとかに持ち込んだら」
そう、持ち込んだらそこから足がつきそうだから、自前でやってしまえればって……
…………うわー、嫌なことに気がついてしまった。
だから【加工】があったの、もしかして!?
いや、あるよね。あるある。【加工】というスキル名称じゃないかもしれないけど、一瞬にして肉と皮と骨とを劣化させることなく切り分けられるみたいなやつ。
すげー後悔させてくるじゃん、女神様!!
もしかして、【確率操作】も何かあったりするの? ねえ。
単に『蘇生薬が最弱のスライムから手に入る!』みたいなやつで勘弁してください、本当に。
「何を頭抱えとるんや? トラウマでもフラッシュバックしたんか?」
「いや、この前の女神様の報酬に【加工】ってのがあったなって思って。あれがあれば自前で素材を取り出せたりしたのかもなー、とかね」
「んー、まあ可能性はあったかもわからんけど、一朝一夕には無理なんと違うかなぁ。そもそも相応の道具でもないと魔物の皮にキズひとつ付けられん可能性あるしな」
……まあ、そうか。そうだよな、うん。
「でもそうなると、ドラゴンステーキを好きなだけ食う、みたいなのはお預けかなぁ。可能性としては、蘇生させようとしてるラビット氏が【
「あり得そうではあるな。いずれにせよ、焼くのもソースも
うーん、果たしてそんな都合いい人と出会えるのかどうかだな。
「それじゃ、とりあえずは要らないものを詰め替えるのに、どっか別の場所でやろうか。
「ああ、あんくらい広ければ十分やな。ほんならちゃっちゃとやってしまおか」
◇◆◇
「スケさん、この『軍手』も貰っておいていい?」
「ああ、別にええで。確かに1つあるとこういう時に便利やな」
【安全手袋】
危険な荷物の運搬に最適な手袋。一部を除く状態異常に強い耐性あり。魔力を込めると、【
状態異常耐性:特大
毒のある素材をスケさんの魔法袋から移すにあたって、箸でつまんで捨てる……みたいなことが出来る大きさではなかったので、床に置いておっかなびっくり移していたんだけど。
大抵の状態異常に耐性があるという手袋があったのを、装備品の移し替えの時に【鑑定】で見た記憶があったので、一度拠点まで取りに戻った。装備用に詰め替えてた魔法袋は、拠点に置きっぱなしだったのだ。
【安全手袋】の見た目が白地で手首の部分に黄色い縁取りがされていたので、俺たちの中での呼称は『軍手』で即決した。
「それにしても、さっきの現象は何だったんだろ」
「うーん、
さっき、その『軍手』を取ってこようとした時だ。
一瞬、『外に出られなくなった!?』と思って焦ったものの、今まで帰っていた手順でもある通路の崩落地点まで戻って格納門を開いたところ、問題なく拠点と繋げることができた。
「しかし、格納門やったか?【空間収納】の穴自体が使えなくなったワケやないもんな」
「うん、3層の休憩場所からこの
「んー、調べておいた方が安全かも分からんな。
スケさんの勧めにも従って調べてみた結果分かったのは、『ダンジョンとの境界を挟んでの格納門の移動が出来ない』ということだった。
具体的に言えば、
逆に、崩落地点で開いた格納門を
「前の世界では、ダンジョンが別次元の空間だって設定をよく見かけたけど……そういうことなんだろうか」
「かもしれんな。まあ、ダンジョンの境界から歩いて出れば開けるって分かったんならええんやないの?」
とりあえずは、格納門で行けるのがどこにでも自由にってわけではない、という使用条件が分かっただけでも良しとするか。
それで困ることってのも、現状ではそこまで無さそうに思えるしね。
……フラグじゃないよね? これ。
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