第156話 地図表示
翌朝、
流石はダンジョン街、高級宿とはいえ冒険者も受け入れるだけあって、その時間から朝食を出してもらえた。
焼いたパンに柑橘系のジャム、塩漬肉のソテー、果物と簡単なものではあったけど、酒場とかで出るものとは比べ物にならない満足感だった。
……流石にラビット氏のそれとの比較はやめておこう。
第3層から中央の穴の近くまでは宿の用意した馬車で送ってもらい、穴の底にある冒険者ギルドへと降りていく。
昨日、ベルトから貰った
へい、私はしがない
ひとまず下まで降りてきたが、ベルトたちの姿は見当たらなかった。
上の階にある酒場も軽く見たものの、そちらにも無し。まだ来ていないらしい。
ヨンキーファのギルドの朝が、貼り出された
階段が辛うじて見えるぐらいの隅にある席で、俺たちはウォルウォレンを待つことにした。
朝食が物足りなかった様子のスケさんにはおにぎり(おかか&ツナマヨ&唐揚げ)を出しつつ、他の冒険者の様子を眺める。
どうやら、既に
そうか、公開からは既に4日経っているから、耳が早い冒険者であれば、近隣の教会まで往復していてもおかしくはないか。
……そう言えば、ダンジョンみたいな階層がある場所の【
ふと思いついて、俺もステータスオープンで画面を開いた。
……なるほど、現在いる穴の中だけが表示されていて、地上の部分は表示されていないようだ。
ただ、ステータス画面の【
【地図表示】で表示された本来の
ダンジョンに放置されたものは一定時間で消えるのに対し、
窓口の机や階段は、
【地図表示】上では、ギルド窓口の横からダンジョン入口となっている通路が伸びていて、その途中で途切れている。
この先は下へ降りる階段になっていたので、恐らく【地図表示】は階層単位で表示が変わっていくのだろう。
【地図】を受け取ってから今まで、アジトダンジョンの探索には出ていなかったけど、恐らくそちらでも同様に、
【地図表示】はご丁寧にも、ステータスオープンの画面が出ている方向に合わせて矢印が表示されるので、今どちらを向いているかが分かって便利だ。
方角で言えば、北側にある階段と西側にあるギルド窓口&ダンジョン入口。ちなみに窓口の2階には、ギルマスの部屋や会議室、資料室なんかもある。
俺たちが座る南側は冒険者たちが待ち合わせにつかう広場になっていて、長椅子なんかが並んでいる。ちょっと病院とかの待合室っぽい。
残る東側は、【地図表示】上ではまだ空間がある部分が石素材の壁になっていて、その2階部分が酒場になっている。
酒場は2階の壁を掘り込んだ形で作られていて、壁の上は客席が置かれている。店舗拡張のために埋め立てられているのだろうか。
【地図表示】を見る限り、その埋め立てられた辺りに元は通路があったようで、ダンジョン入口のそれと同様に通路が表示されていた。
そういえば、フィファウデのダンジョンは元が地下鉱山だったという話があった気がする。
仮にダンジョンが坑道を模しているのだとすれば、この先には本来の鉱山の坑道があったのだろう。
「…………んん?」
東側、そのちょうど埋め立てられた壁際が、【地図表示】上で妙な形状になっていることに気がついた。
なんか部屋あるよね、これ。
「えっと……ちょっと待って…………」
なんか凄く嫌な予感というか何というか……マズいものを発見した気がする。
ダンジョンの入口になっている
「……なにさっきからブツブツ言ってるの? ほら、来たわよ」
えっ? あ、本当だ。階段を降りてくるのは、装備を整えたベルトたちで間違いない。ちょうど時間は
いや、どうでもいいってことはないけど、そっちより優先する案件が出てきてしまった。
これさぁ、見つけてしまったからには見なかったことにするのは難しいんだけど……いや、見なかったことにするか…………?
と、そんなことを考えている間に、ベルトたちもこちらを発見したようで、既に近くまで来ていた。
「おう、待たせたか。……何だロブ、その顔は。今更ダンジョンに緊張ってガラでもないよな?」
まあ確かに緊張ってわけではないし、そんな話で済むならよかったんだけど。
「いや、ちょっと変なものを見つけちゃってさ……どうしたもんかなって」
◇◆◇
「……おい、どうすんだよコレ」
はい。どうしましょうね、コレ。
【
恐る恐る中を覗いてみたところ……やっぱりありましたね、部屋の真ん中に、あの
……
「ん、登録された」
「ちょっ、クロエお前ッ!」
何の躊躇いもなく、クロエが
「まあ、ええんやないの? 便利になるんやったら」
スケさんは気楽にそう言うけどさ……問題は、これをどうするかであってね。
「うーん……これ、秘匿して俺たちだけで使う?」
「いや、無理だろ。たしか冒険者ギルドのすぐ横にあるんだろ? どっからバレずに入るんだよ、こんなとこ」
まあ、そうだよなぁ……こっそり通路を作るにしても怪しすぎる。
ましてや、アジトダンジョンとは違って、中には大量に他の冒険者がいるわけで、受付してない日にダンジョン内にいることは簡単にバレるだろう。
それに、隠れて入った日に手に入れた戦利品は、当然ながら冒険者ギルドに持ち込めないわけで、別の日にまた正規の方法で探索して入手したことにでもするしかない。
つまりは、一度
そう考えると、深い階層から日帰りできるという
となると……だ。
「公開してギルドに管理してもらった方が、面倒が少なくて済む?」
「そうかもな……少なくとも、非正規で入ってコソコソしなくて済むのは間違いないだろうよ」
まあ、独占して面倒が多いぐらいなら、公開して便利になった方がいいよね。
となると、次の問題は……どうやって公開するか、か。
そもそもが、この部屋の外は恐らく埋め立てられた壁の中であって、そこからバーンと出て行ったら騒ぎになるだろうし。
さらには、小部屋に
ついでに言えば、他の
「そもそも、東の壁際ってなんで埋め立てられてるの?」
「ああ、それなら知ってやすぜ」
ファルコによると、
その後、ダンジョン産業が本格化して人が集まり出し、繁盛している酒場を広げようとなった時に出たのが、【土魔法】の業者に頼んで瓦礫ごと埋め立てる案だったとか何とか。
エルフに並んで寿命が長いと言われる、ドワーフ族の冒険者に聞いた、フィファウデの昔話だそうな。
「つまり、ここから出た先にあるのは、瓦礫を土魔法で埋め立てた壁ってことかな」
「まあ、見てみりゃ早えな」
アジトダンジョンで既に
案の定であるけど、そこにあったのは、瓦礫で埋まった新たな壁だった。
【地図表示】から言っても、そこから10mほど掘った先には、長椅子が並んだ冒険者ギルドの待ち合わせ広場がある。
うーん……どうやってこいつを公開したものか。
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