第12話 取り調べ
「そういや、何の依頼で来たんだ? あー……」
あー、名前も何も言ってなかった。
「ええと、ロビンソン、だよ。ロブとでも呼んで。まだ冒険者ギルドに登録したばかりの
「ロブか。こっちも名乗ってなかったな。俺は
「
「あっしは
なるほど、大体は予想通りの職業って感じだ。
「それで、ロブは何の依頼で来たんだ。採集か?」
「ちょっと人を探してて。昨日この辺りで会った女子2人なんだけど、帰る途中で別れてから街に戻ってないらしいんだ。片方は皮鎧に金髪で
「んー、ここに来るまでには見てないが……そりゃあ
「リナは昨日の朝、見慣れない同い年ぐらいの男と街を出るのを見た」
うん、オットーだったっけ。あわせて3人だとしたら可能性は高そうだ。
「実は、2人がそこの
若干、ワナを作ったタイミングとか場所とかは
「それで、出来れば、その
◇◆◇
「……つまり、こいつらが流れ者で、この先の森に巣食ってるんじゃないかと思って来たわけか」
「そうだね、あの辺りで他にも
俺がここまで来た理由を一通り話したが、彼らは
一応、ラビット氏の運んだ荷物やそこから連想されるキナ臭い話には触れなかったから、
「戻る途中で他の
「ここじゃねえが……ついこの前、街道との合流辺りで野盗があったよな」
「あー、ありやしたね。依頼書のボード眺めてたら、ダンジョン交易路までなのに
結構ここ数週ぐらいで被害件数があって、商業ギルド経由で冒険者ギルドに情報が回っていたらしい。
彼らとしてもピンとくるものがあったのだろうか。後ろの盾職も頷いている。
「本当はギルドに戻って尋問する……でもまた来るのも時間が無駄。2人の件も急いだ方がいい」
「わかった。ここでやっちまおう。しかしそうなると、逃がさないようにする必要があるわけだが……穴に戻した方がいいか?」
「せめて木でも生えてりゃあ、縛りつけることもできたんですがねぇ。ここいらは草ばっかりだ」
木か。それなら建材で売れたらなんて思って加工したのがあったな。
「こんなのでいい?」
軽く縦穴を50cmほど掘って、そこに2m長の柱を挿しこんで埋めた。
「お前……魔法袋まで持ってたのか!?」
「あ、ああ、うん。コレね。あんまり低ランクで持ってるの知られるとマズいんだっけ。ナイショね?」
完全に【空間収納】から出していたけど、魔法袋から出したと思ってくれたので、それに話を合わせる。
「【土魔法】と魔法袋とか、
「やっぱり荷物持てないと稼げねえからな……おっと、そんなことより、そいつを縛りつけてくれ」
ちょうど
「グスタフは道で誰か来ないか念のため探ってくれ。それじゃ……クロエ」
「うん。【覚醒】」
引きずられても腕を縛られてもピクリともしなかった世紀末が、
「……あ? な、なんだこれはオイ!」
後ろ手に縛られて周りから見下ろされたら、中々に威圧的だろうな。しかも、直前の記憶は穴の中で
「お前ら、この辺りで商人や通行人を襲ってる奴らだそうだな」
「ああ? 何でンなこと答えなきゃなんねえんだよ」
「いいからさっさと吐け、魔法で自白させんのは時間かかるんだよ。この辺りに
「何わけわかんねえこと言ってんだテメェ! そんなことより縄を解けや!」
あの状況で黙秘するでもなく、よく強気に出れるなーと思いつつ、こっそり
「あの……今言ってた、魔法で自白ってできるの?」
「可能。でも結構MPは食うから、持続が難しい」
金がかけられるならポーション使うこともあるそうだが、その分利益が減るから緊急性のある時の最終手段という位置付けらしい。
大抵は、ある程度の聞き込みをして目星をつけた核心となる質問を用意した上で、短時間で終わらせるのが多いそうだ。
あまり殴ったり蹴ったりすると、冒険者の
うーん、前世のような水責めとか痛覚責めとかは発明も持ち込まれてもいない感じなのかな。
「ちなみに、骨折とかの治療ってクロエさんいける?」
「クロエでいい。可能」
そっか。ちょうど昨日作ったやつで思いついたものがあるから、時間も無いし、やってみようか。
◇◆◇
※しばらくおまちください
◇◆◇
「……これはひどい」
「……まあ、聞けることは聞けたな」
世紀末が白目を剥いて泡を吹いて失神していた。
うん、単なる痛みとかよりも、目の前に迫る恐怖ってのを可視化した方が、口を割りやすいんだろうね。
材料はこちら。
・木の板をギザギザにしたもの
・一抱えほどの岩を適度にスライスしたもの
あとは簡単、木の板の上に正座させて、膝の上に石を乗せていけば、あっという間にちょっと膝から先が『見せられないよ!』になった世紀末の出来上がりです。
野外だから、垂れ流した汚物とかを処理するのが楽ってのがわかったよね。
そう、日本古来の拷問具、『
まあ前世のそれと違うことといえば……容易に足を回復させることができるので、『もう一度最初から』が簡単なこと。
失神した世紀末に
3周目に入ったところで、目の前で1枚目を持ち上げた瞬間に世紀末が顔中から液という液を流して洗いざらい吐いたよね。
「
彼らと同じく、
単なる流れ者だったと思いきや、どこかからの仕込みだったとなると……完全に俺の手には余るから、
さて、情報も手に入ったし、あとは
「……何か住まれても面倒だし、埋めておこうか」
ふと振り返った先にあった、古代遺跡発掘現場みたいに掘り返された穴を見て、収納に積まれた土を放出しておくことにした。
「……割と詰まるな、これ」
もっとドサドサーっと吐き出せるかと思いきや、穴が小さいと土が詰まって出てこなくなる。振らないと出てこない塩の瓶みたいな感じだ。
デカい門を開くと無駄にMPを食うし出す量がコントロールしにくいしで、ほぼ消費しない両腕でひと抱えほどの門を何度か閉じては開きを繰り返していたが、少し出ては止まる感じで時間がかかる。
どうするか……と思ったとこで、そういや排出するのに丁度いいのがあったことを思い出し、【距離延長】の副次効果【
すると、水道の蛇口のようにドバドバ土がスムーズに吐き出されていくようになった。
なるほど、これならデカい門を出すほどではなく大量の土を吐き出せそうだ。Lv.3にしておいてよかった【距離延長】。
ただ、タイミングを見誤ると溢れるので、その辺は監視してギリギリを見極める必要性がある。1つ目は危うく門まで積み上がって詰まるところだった。
そんな感じで3つ目の穴を中ほどまで埋めていた時に、あのウィンドウが表示された。
『空間収納レベルが上昇しました』
『空間収納レベルが10に達したので、成長ポイントが5pt加算されます』
『成長ポイントを割り振ってください』
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