第192話 学園ダンジョン
「5枚目は、ダンジョンでの『探索実習』および、その補講としての『戦闘訓練』についてだ。この2つについては、単位制への移行とは別で、通年での扱いとなる」
単位認定試験の一覧には無かったから、そういうことなんだろうとは思っていたやつだ。
でも、確かにこういった実習系は、何をもって単位とするか難しそうだしなー。
元から非戦闘職だったり、スキルの成長度合いで強さがピンキリだったり、前衛と後衛で基準が変わったりと、単純な物差しでは測りにくそうだし。仕方ないのかね。
「学園では、自らの安全を自分自身で確保できるようになることを、卒業までに達成すべき項目として挙げている」
うん、本来は『才能を持つ子供たちの保護』だったはずだけど、それを生徒全体へと拡大解釈すれば、各自の『成長』による自己防衛能力の向上とも言える。
「1つの目安としては『
…………えっと。
たしか、オークが倒せるぐらい、だったっけ?
うーん、その程度であれば
それって、果たして目安として妥当なんだろうか…………。
……あー、でもそうか。
たしか【蘇生】をする際に『成長』を消費するって話で、それに必要な基準がLv.20って話だった気がする。
貴族家だったら蘇生薬を確保してる可能性もあるから、残機を持っているのは、ある意味では『安全(の
いずれにせよ、『探索実習』の単位は焦らなくても全然取れそうだ。
あれ。もしかして卒業要件、
まあ、実際のところ学園ダンジョンを好きに探索できて、図書館の閉架書庫が閲覧できれば、俺にとっての学園編は完結しちゃうんだけどさ。
「なお、ダンジョンを探索するに当たって、本年度から階層の制限が入ることになった」
……ん? 制限??
「既に多くの生徒が、教会で『女神の加護』を受けていると思うが、それにより確認できるようになった『
へー、なるほど。良さそう。
確かに、見栄なのか慢心なのか、『成長』が低すぎるまま深い階層に挑んで、
冒険者ギルド側でそういった施策の話は聞いたことがなかった気がするけど、実験的なものだろうか。
「現在の制限基準は研究中のものにはなるが、既に怪我の頻度が下げられることや、妥当な戦力差による継続的な戦闘力の確保が1回あたりの『
あれ、思ったより随分と
俺たちのパーティであれば、ざっくりとした体感で『成長』+5階層ぐらいが丁度いいってことで、アジトダンジョンの階層移動の目安にしていた。
学園内で研究なり分析なりをした結果のようだけど、どんな基準で制限をかける想定なのかは気になるな。
「探索実習の際に各自の『
…………申告、か。
確かに、ステータス画面って他人からは直接見えないから、自己申告にはなるんだよな。
ただしパーティを組むと、メンバーたちからは(
うーん、流石に俺たちが既にLv.30台ってことは、ダンジョン探索の頻度から言っても明らかにおかしいから、適当に誤魔化す必要があるだろうなぁ。
まあ既に
その辺りは、リナたちと口裏を合わせておくことにしよう。
「また、学園内には冒険者ギルドの支部が昨年末から設置されている。これにより、ダンジョン内で入手した素材の納品および換金が可能になり、またパーティを組んで探索を行うことも可能になった」
な、な、何ィ──ッ!?
え、もしかして、急いで
学園内でも納品して依頼達成できるんなら、
つまるところ、フィファウデで
……いや、多分フィファウデの冒険者からは深い階層からも帰りやすくなったって、きっと感謝されてるから。うん。そう思おう。
「授業外で学年や学級を超えてパーティを組んで探索することも可能だが、これにも探索階層の制限や、補助員の同行を条件とするなど、ダンジョン探索に制限がかかる場合があるので、その指示には従うように」
ああ、そういえば。
ブート嬢を盾役として、パーティにお迎えしたいと思ってたんだよな。
向こうさえ良ければ、授業外でパーティを組んで探索できるといいんだけど。
出来るなら早めに打ち合わせして、単位認定試験で空けられそうな日程とかを擦り合わせたいところだな……。
「最後に、2年次での専門選択についてだが……単位制に移行したことにより、次年度以降に専門による
専門選択か……もっとも、このSクラスにいる子女たちが、薬学者を目指したり官職を目指したりする姿は思い浮かばないんだけどさ。
大半が、事勿れで必須科目と基礎教養を平均的にこなして、3年間を過ごすだけになるんじゃないだろうか。
なんだかんだ、ダンジョン経済によって上位貴族家であれば、管理まわりで大量の仕事があるようだし、名ばかりの管理職にでも就けば、食うに困らないらしいから。
アレだ、前世における『取締役』みたいな感じでね。名前を貸しておけば、出勤もしないのに定期的にお金が入る簡単なお仕事。しらんけど。
「……さて、これで単位制に伴う変更点と単位認定試験に関する説明は以上となる。何か質問のある者はいるか?」
おっと、質問の時間が来たようだ。ようやく肝心なことが聞けるかな。
「すみません、2点質問があります」
特に貴族勢からは質問がなさそうだったので挙手すると、担任のフィン先生がこちらへと手のひらを向けた。
ほぼ同時にリナが動こうとして手をピクリとしていたけど、ここは任せてもらおうかな。別件もあるし。
周りの貴族の一部は相変わらずの態度というか、『お前が?』みたいな表情で睨んでいる。
「冒険者のロブと申します。まず1点目ですが……
途端、吹き出す奴らが数人いた。さっきの公爵家の雅メンのお付きだった2人だろうか。
とはいえ、こればっかりは真っ先に確認しないと始まらないからな。
「それについては確認済みだ。
……やっぱりあの
しかし、フィン先生の『入試成績』への言及と『学長推薦』という論拠による追認がきちんと効いたのか、吹き出した奴らは黙ったようだ。
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