第199話 愚痴マス
「元はお前らのせいなんだぞ? 俺がこんな
俺たちはそのまま、上の階にあるギルドマスターの部屋へと連行されて、スキンヘッドに延々と愚痴られております。はい。
このスキンヘッドの男、名前はバルドゥール・ミリタグビートと仰るそうで、この部屋からも分かるように、ギルドマスターだそうで。
また、その名が示すようにご本人も
てかなんで、ギルドマスターなのに、あんな受付で暇そうにしてたんだよ、あんた。
「去年の末に本部のギルマスから呼び出されて、何しくじったかと思ったら、妙な笑顔で『栄転だ』なんてぬかしやがる。んで、年明けからはここで働けって言われて、来てみりゃ『ようこそギルドマスター』だとよ。俺は直前までギルドで
えーと……講師からギルマスとは、そりゃ確かに出世も出世、大出世じゃないですかね。
「で、元の同僚を使って、なんで降って湧いたように学園にギルドを置く話になったか探り入れたらよ……何でも、来年
……どうやら、有望な冒険者を冒険者ギルドとして
仮にそのまま冒険者になるにしても、どこかの貴族に雇われるなり
なお、この冒険者ギルドの向かいにあった、消耗品の販売や武器防具の整備といったものは、昨年末まで無かったそうな。
元からあったのは、手数料を多めに取って代理でギルドに納品するための、買取窓口だけだったらしい。
当然、冒険者ギルドが管理していないので、ダンジョンの入退場管理は
「ギルドの奴ら、大半が冒険者上がりばっかりで、
「えーと……それで? 俺らを
こちとら学生だからな、ギルド内のゴタゴタなんざ知ったことあるかって話で。
ヌールちゃんの学習状況も確認しなきゃいけないしな……本当は北にある王立図書館ってやつも見ておきたかったけど、もう
とにかく話を切り上げさせてほしい
「別にお前らに何か動いてもらおうってんじゃねえよ。そもそも、こっちは何か頼むだけの手札をそんなに持ってるわけじゃねえからな。ただ、お前らの影響でこの設備ってのが整えられたってことを知っておいてもらわねえと、この3カ月で何とか体裁を整えたこっちの苦労が報われねえから、当てつけたってだけだ」
……正直、知ったことあるか、なんだけど、まあ修理設備やら消耗品やらと事前に環境を整えてもらったことは、感謝しておいた方がいいだろう。
ダンジョンへ潜るにあたって、わざわざ街まで出向いて
「つまるところ、用意した分は働けと?」
「ま、そういうこったな。10層以降は宝箱が落ちる。初級HPポーションは1本
あれ、薬草から作るポーションよりも、随分と高くないか? しかも買取値段だろ? それ。
たしか店売りの値段は、初級が
「ああ、店で買うやつより買取が高いってか? あれだな、ダンジョン産は効果が安定していて劣化しねえからな。お貴族様向けの価格ってやつだ。薬師のやつは割と当たり外れがあるし、大体が味も悪いから、上位冒険者も一度使うと次からはダンジョン産を買うようになるんで、その値段でいいんだよ」
なるほどね、市販品はゲロマズポーションの印象がついてるから、むしろ安いって見る方が正しいのかもしれない。
……そういや、
でも、そうなると大半の生徒にとっては、ダンジョン産ポーションは使わずに売った方がお得って話になりそうだから、案外納品数は確保できるのかもしれないな。
「ちなみに、ここのダンジョンの地図ってのは買えるのか?」
そういえば、去年まで冒険者ギルドが無かったなら、地図とかも基本は先輩から貰ったような、いわゆる『草地図』しか無かったんじゃないだろうか。
「ああ、それについては学園から『10層までは販売するな』って通達があってな。授業の一環として地図制作を盛り込んでるから、その解答になるようなものは出さないでくれってよ」
へえ、なるほど。授業で地図作成するのは面白そうだ。
教育機関の課程に地図制作が盛り込まれるのは、後々の生存率を高めるのに必要なのかもしれない。
「まあ、売らないってだけでギルド内部では作ってあるが、そんな理由で基本は非公開だ。11層以降の地図は、10層の
一応、ギルドでは20層まで販売しているらしい。
なお、お値段は一律
「21層以降は他のダンジョン同様に『先行者利益』てことで、自由に販売していいぞ」
……最高精度の地図ってやつを【
多分、貴族を中心に既に教会で
たしか、
恐らくそれは
……唐突に、横に座っていたリナが、脇腹を小突いてきた。
何かと思って目を向けると、僅かに頭を振っている。
おっといけない、確かにやらかしかけていたかもしれない。【
……しかしよく分かったな、リナ。
何か変な顔でもしていただろうか。流石に口からは出てないとは思うけど。
「
基本的に、このギルド職員として集められているのは、王立学園の卒業生なんだそうで、結果として大半が相続から外れた貴族出身なんだそうな。
しかし、冒険者ギルドが自前での
ある意味で、ギルドにとっては新発見のダンジョンみたいなものとも言えるんだろうな。
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