第57話 ダンジョンから帰還
あ、そういえば。
「リナとクララは、成長ポイントの振り方決めたのか?」
ポイントの振り方まで説明したところで、2人にお任せしたまま結果を聞いてなかったことを思い出した。
「とりあえず、貴方の提案通りにしたわ。1ポイントずつ振って、様子見ね」
「私もです。ただ……明らかに【聖魔法】の使い方というか、上手いやり方が分かったような気がします」
なるほど、既に使っていた魔法がある場合は、効率が良くなったり性能が上がったりするのかもしれない。
また、【片手剣】スキルのような物理系でも同様のようだ。
リナは【剣術】Lv.1で【スラッシュ】の使い方を覚えたと出たそうだけれど、既に【スラッシュ】は習得していたのだという。
試し打ちをしておきたいというリナが、4層に出るウサギの魔物にリナが【スラッシュ】を打ち込むと、勢いよく胴体に斬撃が入って魔物は魔石へと変わった。
3層まででは苦戦……とは言わないまでも、一撃で倒せていたような記憶はないので、明らかに威力が違うということだろう。
リナ本人も手応えを感じているようで、嬉しそうに魔石を拾っていた。
こっちで拾うからそのままでもよかったんだけど、そこは「効果があったようでよかった」と言いながら渡してきたものを受け取った。
【火属性】や【聖属性】の方でも何度か発動させて、魔法の威力が上がったようだとのことだけど、その辺りはまた次回の『
そんなこんなで、6層手前の
「次の探索はどうしようか、来週1週間の予定ってどうなってる?」
「私の方はいつでも問題ないけど、勇者様のお時間がとれるならお預かりしてる品々の引き渡しをお願いしたいわ」
ああ、それがあったか。
「スケさんはどうする? 問題なければ早めに行ってしまうのもいいと思うけど」
「せやな、ワイはしばらくロブのところで世話になって飯を食うだけやからな。元から予定なんて無かったようなもんやし。リナのとこが問題ないなら行っとこか。
そう、ラビット氏の残した無限の食い物があるので、スケさんはこちらで預かるのが順当だという話になっている。
最初はリナが引き取りたいと思っていたようだけど、やはり唐突に連れて行っても話は進まなそうだし、詐欺を疑われて嫌な思いをさせることにならないか問うたら、一度俺に預けた方がいいという話に落ち着いた。
まあ、怪しい詐欺師に無限に飯を出してはくれなそうだし、そうなると結局は俺もついて行くことになるから、だったら拠点で話が決まるまで待ってた方がいいっていうね。
「あれ、でも『勇者様の魔法袋』なんて軽々しく持ちだせなさそうだし、仮に譲渡するにしてもウェスヘイムのご当主抜きってわけには行かないだろ? その辺りってどうなんだ?」
いつでも行けば問題ない、というものでもないのでは? と思ったので、念のため横からツッコんでおく。
「勇者様より優先することなんて、私の家に限っては何も無いわ。仮に国からの呼び出しでも後回しにするって言うでしょうね。……まあ、お父様の予定を調整するかもしれないから、念のため
確かに
しかし、自慢気に言う様からするに、ウェスヘイム家にとって勇者様由来の品を守ってきたことが本当に誇りで、それが達成されることは悲願なんだろうな。
「ワイは問題ないで。ほな、その時間にリナの家に行けばええんか?」
「いえ! 馬車を用意させますので、それに乗っておいで下さい。場所はこの家の前でいいかしら? ロブ」
まあ、一応はクランの拠点が並ぶ区画だけに馬車は入れるけど……貴族様の馬車が下町に入ってきたら目立ちそうだよなぁ。
……でも、気にするほどのご近所付き合いもないから問題ないか。
「うん、馬車を出してもらえるならそれでかまわないよ。ちなみに俺は行かなくても問題ないよね?」
「別に構わないわ……と言いたいところだけど、勇者様が復活なさったのは、あの女神像が関係してるんでしょう? 念のため、あなたもいた方が間違いないと思うわ」
……まあ、仕方ないか。
「了解、俺も待機しておくよ」
◇◆◇
一応、どこにでもある
スケさんに風呂場を案内して勧めたところ、家主が先と律儀にも断ってきたので、先に汚れを落とした。
その後、2階でポーションを追加で仕込んでる間に、スケさんが数百年ぶりの湯を浴びに行ったようなので、今のうちにリビングへと食べ物を用意しておく。
ポテサラ、カプレーゼ、シチューと大量のパン、コカトリスの唐揚げ、ブルーブルの塊肉煮込み、オークジェネラルのローストンテキ。トンテキ?
ワインも赤に白にスパークリングにと様々出しておく。蒸留酒とかは……言われたら出そうか。
せっかくだし和食を用意してあげたかったところだけど、やはり米がないからなぁ。
ちなみに、ヨンキーファの市場もバザーも、冒険者ギルドの講習帰りとかに寄って探したけど、種籾ひとつ無い。
ラビット氏は
この世界にも野菜ダンジョンとか肉ダンジョンとかあるとしたら、可能性はありそうだ。
……そういえば、スケさんの服を買ってこないとな。今着れる服っぽいものが、着ぐるみぐらいしかない。
実際、全裸着ぐるみだもんな、今の状態だと。流石に明日、これで貴族のお宅にお伺いはできないだろう。
今日はどの道、白曜日だったから店は閉まっていて買えなかったけれど、明日の午前中にでも買いに行こう。
ああ、ついでに商業ギルドにポーションを納品してこようか。今日中にもう一度仕込めば、明日の朝には全部で1637本の中級体力ポーションが出来上がるし。
……案外、予定が入って忙しいな、明日。こっちとしても訪問を午後にしておいてもらって助かった。
「はー、さっぱりしたわ」
スケさんが風呂場から出てきたようだ。……下半身に着ぐるみを着て。腕の部分を帯のように腰に巻いて。肩にタオル代わりの木綿っぽい布をかけて。夏場の遊園地バイト休憩かな。
【
『勇者様の全裸着用済み』とでも書けば、一部の人には需要がありそうだけど。
「おお、豪勢やな〜!」
テーブルいっぱいに並んだ食べ物に目を輝かせるスケさん。
ある意味でお祝いみたいなもんだしね、久々に生身で食べ物を食べられるようになったってことで。
おっと、お祝いと言えば。
「ああ、そうそう。食べる前にこれを渡しておこうかな。ダンジョンの案内を手伝ってもらったのと、ついでに【受肉】して復活したお祝いということで」
【空間収納】から取り出したのは、もちろん刀だ。大小2本だ。
見た目……いわゆる
「刀! 刀か!! こんなん貰うてええんか!?」
早速、スケさんは大刀を抜いて眺めはじめた。よかった、喜んでもらえているようだ。
「前に、居合っぽい仕草とかもしてたから、やっぱり好きなのかなと思ってね」
「ワイが魔王討伐に行った頃は、刀が作れる鍛冶職人てのがおらんくてなぁ。しゃーないから両刃でも片方を潰したりしてやっとったんや。けど、やっぱ
流石に抜き身を振り回すような真似はしなかったが、鞘に納めた大刀に頬擦りしている。
まあ、近々ミスリル刀も届くから、そちらも何かの折にプレゼントすることにしよう。
「それじゃ、スケさんの肉体復活を祝って乾杯でもしようか」
一応、俺の身体は12歳っぽいのでオレンジジュースを出し、スケさん向けにはスパークリングワインのコルクを鳴らした。
「「乾杯!」」
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