第17話 貸し
街に戻ったところで、野盗や捕虜たちは冒険者ギルド預かりとなり、また明日にでも改めて報告することになった。
一応、馬も冒険者ギルドの厩舎に預けられたので、ここでお別れだ。
さーて帰ろうかと思って、宿に向かおうと足を踏み出したところで、その足が地面につくことはなかった。
「……おう、お疲れさん。なに1人で帰ろうとしてんだ?」
しかも、行きつけで少し大きめな酒場といった感じで、飯のついでに会議するのに丁度いい
丸焼きにされたひと抱えある肉とソーセージに、シチューとパンが添えられた定番だというメニューと、
「……さーて、それじゃ話を聞かせてもらおうか」
「え……ええと、何を?」
「そうだな。まずは『到着したら野盗が討伐されていたところから』だな」
「は、はぁ……」
チラリと
「その辺りは、
「……おい、そこの何も知らねーみてえに肉食ってるやつ、何か言うことはねえのか?」
「あっしのことですかい? ロブ君の言葉通りでさぁね。スキルを実際にやって見せてもらって、それで安全に偵察できそうだったから、中の様子を探ることにした。何も間違っちゃいやせん」
「ほう……そのスキルってのは?」
「あっしの口からは何とも。スキル詮索は
「……まあ、そうだな。んで?」
ジロリ、とこちらに視線が向けられる。まあ、あの【
俺は諦めて、そもそも俺のスキルが何であるかから始まり、世紀末たちとの絡みから
◇◆◇
「藪蛇」
「……いや、蛇なんて可愛いもんじゃねえよ」
「あっしも、あの場では詳しく聞く時間がないので気にしないようにしてやしたが……改めてこれは想像を超えていやすね」
俺は試しに、
「でも、こんな
結果は出してるからいい、というのは実に冒険者らしい発言なんだろうけれど……
「……探していた2人の安全が確認できた時点で、
「
そう、この能力はまだ慣れてないどころか習得して1日しか経ってない。
恐らくではあるが、あくまで『魔法は
だから、
「……今回上手くいったのは、運が良かったと思うことだな。まずは地道に
「はい」
これはもう、その通りだなとは思う。この世界における常識ってやつが、俺には圧倒的に足りてない。
「それで、どうする? その能力。隠す?」
途中からは
「……隠せるなら隠した方がいいけどな。しかし、どうやってあの穴やら潜入やらを説明つけるんだ?」
「地面はあくまで【土魔法】で通す。潜入はファルコが【透過】のスクロールを偶然見つけたことにする」
「冗談だと思って使ってみたら本物でしたー、使ってしまったからもうありませーん、てか。……まあ、そんなもんでいけるかもしれねえな」
本当、面倒見がいい人たちすぎる。今日出会ったばかりのヤツに、能力を隠すための算段をつけようとしてくれている。
迷惑かけまくってるけど、何で返せるんだこれ……。
「本人としては、どうしたいんで? 隠さないってことも出来るんでやしょうけど……止めておいた方がいいですぜ?」
「迷惑かけるから、なんてのなら、気にしなくていい」
「そうだな、その能力はバレたら危険すぎる。貴族どもが黙っちゃいねえ」
あー。貴族かー、貴族はダメだ。絶対に関わりたくない。
生存バイアスでも、冒険者で貴族に関わって良かったケースなんて、殆ど見たことがない。
貴族転生だって、王族やら侯爵やらに関わって
いざという時に、交渉のテーブルに立てるぐらいの反撃力がないと、弱みを握られて使い潰されたり、犯罪やら濡れ衣やらで尻尾を切られたりするのがオチだ。
「まあ、上位貴族だろうと黙らせられるだけのコネってやつを手に入れるか、あるいは十分な
「伝説の
「……その例は極端だと思いやすが、身の丈に合わない強力な能力を持って生まれてしまった冒険者が、不幸な生涯を過ごすことになった例は数多くありやすからね」
なるほど、
圧倒的に隙が多い現状を解決しない限り、下手に知られてしまうことで、貴族とかに利用されるリスクがついて回る、と。
「でも逆に言やあ、貴族でも何でも跳ね返すだけの
「まあ、貸しだな。ある時払いの催促無し。俺たちは健全なシゴトで有名だからな」
「なるべく返すのは先にして、利子をつけて返してもらいたいもんでさぁね」
「
「あー、いいな。食い物とかで魔法袋が圧迫されないってだけでも助かるが、バカでかい容量で素材を丸ごと持って帰れるなら、解体する時間も要らねえし選別も要らねえから、一気に稼げるぜ!」
みんな、気を遣って負担じゃないって風にしてくれようとしてるんだろうことは、言わずもがな分かった。
実際のところ、出会ったのなんてほんの数時間前なのに、こんなにも親身にしてくれる。果たしてこんな対応を、俺は誰かにしてやれるだろうか。
……いや、そう出来る冒険者となれるように、今はただ彼らに甘えておこう。何倍も利子をつけて返せるように。
「……わかりました、それでお願いします」
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