第83話 ダンジョン巡り
「50カ所ぐらいだったかな、結局回ることになったのは」
協力した貴族家は保守派と中立派合わせて30家程度で、他にも庇護下にあるという男爵家などを合わせて40程度の領地を回った。
一部の領地は辺境伯領や侯爵領とあって広く、2カ所に仕掛けられているものもあったため、結果として50程度は回ったと思う。
というか、記憶にあるのは午前と午後とで1カ所ずつ回ったのが25日前後だったということで、まあその数字が恐らく正しいんだろう、という程度。
いわゆるカレンダーみたいなものを確認していなかったため、ルーデミリュに渡ってから数日がどの程度の昼夜で終わったのか、正直記憶が無くて。
王宮での
その後、起きたら急いで約束だった
幸いにも、魔道具を仕掛けたのが大体は10層を少し超えたぐらいの浅い層で、災害級の魔物が層の全域を埋め尽くすような事態は無かった。
そもそも、仕掛けた奴隷たちがそこまで強くはなかったので、深くは潜れなかったんだとは思うんだけど。
「昔はダンジョンなんぞ興味も無かったけどな、知り合いが当時ダンジョン巡りにハマっとったんが今になってよう分かったわ。ありゃ場所ごとに個性があって楽しいな。
スケさんが言ったように、討伐をアジトダンジョンで続けると飽きるということもあり、途中からはスケさんが出向いて無双するようになった。
ただ、ゴブ師匠とブタさんはそれぞれ10層と20層のボス役という制約があるのか、ダンジョン同士を移動できないらしい。
そのため、フィファウデの15層のような震源地から階層の出口に格納門を繋いで
ダンジョンは50も巡ると特色ある階層に出会うことも多くなり、いくつかはまた今度ゆっくり探索したいと思う場所もあった。
記憶に残っているものだと、宝箱や隠し部屋がとにかく多い『
でも、一番記憶に残ってるのは……
「やっぱり『
「ああ、果物やら野菜やらが
そう、食材ダンジョンの1つ、『
通常の
ちなみに、地形扱いの植物などは武器で収穫しようとしても敵を倒した時と同様に一定時間で消えてしまうので、専用の採集道具を手に入れないとお持ち帰りできない。
下の層に行くほど高級食材になっていくようなので、そういった意味でもまた行きたい場所ではあるんだけど。
でも、何より記憶に残っている理由……それは、念願の『米』があったこと。
たしか8層だったかな、階段を降りたところに一面に広がる稲穂の波を見た瞬間に『私ここの家の子になる!!』って思ってしまった。
その日はまだ次の
幸いにも、我が万能なる【空間収納】は『素材指定』によって
もうね、隠密だとか
たぶん『五分づき』とか『七分づき』とかも指定すれば一瞬で出来てしまうと思う。
午後にもう1件を終えた後、鍋を使って米を炊き、ずっとラビット氏のシリーズの中でおあずけになっていた『豚汁』と『焼鮭』を、スケさんと堪能した。あれは最高だったなぁ。
やっぱり米と一緒に食べたい料理ってのはあるもんだよね。
実はその『
その際には、手伝ってくれたゴブ師匠やブタさんにも、塩むすびでも作って差し入れたいところだ。もちろんおかずは唐揚げとウインナーに沢庵ですよ。
「ほー、俺らが間引きやら検証やらと残務作業に駆り出されてた間に、お楽しみだったようだな」
「まあ、その分こっちも
「しかし、そんな美味いってんなら食ってみたいとこでさぁね、その米ってやつを」
お、ファルコから
こいつは未だ封印中になってる『天ぷら』辺りで『天丼』でも作って黙らせるしかないんじゃないでしょうかね。
いや、せっかくだし『牛丼』『豚丼』『親子丼』『鰻丼』辺りも並べて食べ比べてもらってもいいかもしれない。
なお、『カツ丼』は俺の前世のこだわりで『煮込みカツ丼』と『ソースカツ丼』の2種類作ると決まっている。うん。
そして最後に『カレーライス』でも出せば、もう米食からは抜け出せなくなるわけですね。指定薬物か何かですよあんなものは。
◇◆◇
その後、話に出ていた通りに冒険者ギルドに行って野盗騒ぎの時の精算を行い、名目上は俺は報酬を受け取らない話になっていたので、人目につかない場所ということでまた拠点に戻ってきて分配を行った。
そして、せっかくだし格納門での移動を体験してもらおうということで、一度アジトダンジョンに入ってもらう。
そこで終わるかと思いきや、ノリで話に出た『
やはり
刈り取られた一帯はまた壮観ではあったけど、地形は半日もしないうちに元に戻ってしまうらしい。
ひとしきりの労働を終え、思いつきでフィファウデの南で見つけた『温泉』へと移動して、たっぷり浸かってもらった。
クロエは時間を区切って別で入ってもらうことにした方がいいか、と思ったけど、流石は冒険者というか、気にせず一緒に入るらしい。
流石に肌着は着けたままだったけどね。ちなみに『【精霊魔法】で一瞬で乾かせるから、洗うのも省略できて便利』と女子力皆無な発言をしていたのは聞かなかったことにした。
そして風呂上がりにコーヒー牛乳を出して
もちろん、予定通り米料理を振る舞うつもりだ。
労働してもらった対価という意味でもね。おかげで、しばらく米には困らない程度には収穫してもらったし。
幸いにも、ラビット氏の調味料には割下や
次々に覗きに来る面子を、
流石に丼は無いので、コンビニの焼肉弁当とかみたいな感じで深皿に広く盛って完成させた。
まあ、牛丼や豚丼辺りは既に鍋いっぱいのがあったから盛っただけだし、豚カツとかも作ったのがあったから切って卵とじにした程度だけどね。
「「「「………………」」」」
「いやー、黙々と食ってるね……」
「やっぱ美味いで、米の飯は。肉にも魚にも合うしな」
うん、焼魚をずっと封印してたのは、米が無かったのが大きいかったしね。
豚カツとかはキャベツや葉野菜とあわせてカツサンドなんてのもできたかもしれないけど、魚料理はなかなかパンと合わせにくい印象がある。
酒を飲むなら
さておき、ベルトたちが気に入ってくれたようで何よりだ。
ベルトはやはりカツ丼、特にソースカツ丼を気に入ったのかお代わりしている。
他3人はといえば、クロエは鰻丼、ファルコは親子丼、グスタフは牛丼を気に入ってくれたようだ。
スケさんは全種類をとりあえず片っ端から食べているようだけど。
なぜか、みんな天丼は様子見していたので、俺がいただくことにする。
あー、いいね。やっぱり揚げたての海老天にこの甘いタレを贅沢にかけて食べるのがね。
バイトの夜勤明けのはずが昼過ぎまで交代の遅刻で延長した時とかに、気晴らしついでに行った天丼てんやの出来立てを食べたのが記憶に残ってるなぁ……。
他のファストフードと比べたお値段ゆえに、なかなか行けなかったけど。
そうだ。天ぷら作ってたラビット氏ならきっとアレも…………あったあった!『七味』!
これを甘いタレにかけて食べるとね、うん、これこれ。この味。
……俺も黙々と食べてるな、これ。
いや、こうなるんですって。美味いものを食べる場ってのは。
◇◆◇
「それじゃ、またな!」
「温泉よかった」
「また飯お願いしやすぜ!」
ある意味で
しばらくはヨンキーファの冒険者ギルドで頼まれた案件に付き合った後、またフィファウデに戻って探索する予定だそうだ。
一応俺はまだ
前の世界みたいに、海外で運転免許取ったら日本でも乗れる! みたいなことって無いのかね。
…………さて。
ひと騒動あって1カ月空いてしまったけど、再開しますかね。パーティ活動を。
当初のクエストを進めるために。
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