第209話 聞き耳
「ロブ君のは……『成績優秀者』を狙ってるだけはありますよね」
「流石は、…………ロブ様!」
うん、よく飲み込んだ、ヌールちゃん。その調子だ。
ちなみに俺のはと言えば、必修の応用科目である12単位については『優:10・良:1・可:1』、選択科目については『経営学』『戦略論』『法学』で『優:4・良:1・可:1』といった戦果となった。
『成長』とスキル上げによる
……もっとも、選択科目は基礎科目の時点で手応えが無くて諦めた科目が半数以上なので、
とはいえ、『薬学1』と『魔法陣学1』を履修して『優』が取れれば今期の成績は『優:11・良:2』になる。
そこに応用科目の『優:14・良:2・可:2』と探索実習の成績が加われば、『成績優秀者』の順位でもいいところを狙えるのではないかと思っている。
後は、黄曜日か赤曜日の授業の無い時間帯に『魔法陣学2』辺りを入れておくつもりなので、問題なく承認されれば上乗せできそうだ。
……と、そんな応用科目の結果を見せ合っている間に、Aクラスまでブート嬢へと聞きにいってくれていたリナが帰ってきた。
「ありがとう、リナ。……それで、どうだった?」
「ええ、とりあえず橙曜日と緑曜日で問題ないそうよ」
ブート嬢も無事に基礎科目は全て単位認定が通ったようで、授業の整理をして参加できるらしい。よかった。
彼女もヌールちゃんと一緒に試験対策していたようだけど、なんか騎士志望で生真面目そうだから、元から予習していた方が大きく影響してそうな気がする。
さて、それじゃ……後は、ドロテーアさんに確認してきましょうか。
◇◆◇
「では、来週の白曜日で予定を入れておきます。恐らく集合は
「わかりました、よろしくお願いします!」
ドロテーアさんの方も来週の想定だったようで、あっさり初回の探索日は決まった。
念のため、ドロテーアさんがダンジョンに入るのに問題ないか確認したところ、正規に冒険者ギルドへ登録済みで
初回の確認が取れたところで、あっちの方も話しておきますかね。
「それでですが……今後のパーティ活動で授業枠を調整して探索する日を作ろうかって話しておりまして、ただし授業を整理する必要がありますので──」
「あ! 大丈夫です! 単位も必修は取れたので、1〜2科目を調整すれば2日ぐらいは空けられます!」
………………。
なんだろう、随分と話が早いな。食い気味だったし。
もしかして、俺たちが時間を空けて探索しようとしていた話が聴こえていたのかもしれないけど……まあいいか。
「しかし、他の学級で授業を受けるというのは……大丈夫ですか?」
「別に大丈夫だと思いますよ? ほら、ロブさんも赤曜日に変…………あっ、いえ! すみません何でもないです。大丈夫です!」
…………いや、そこまで言ったら流石に何もないは無理があるでしょ。
赤曜日に変更するって、クララと話していた、授業の調整予定が聞かれてたってことだよな。
で、俺たちと同じ時間にするつもりだから大丈夫、ってことか?
……いや、それなりに教室内はざわついてるし、今もリナ達が向こうで話してる声は辛うじて断片的なものが聞こえるものの、言葉で認識できるものではない。
さっきクララに相談した時も、そんな教室の端まで届くような声で話してはいなかったと思うんだけど。
それに、もし聞かれてたんだとしたら、どちらかと言うとリナと話していた『(スキルを)明かす』とかの話の方があんまり探られたくはないやつだろう。そちらも聞かれてしまっていただろうか。
うーん……
俺は、いずれも格納門で代替ができてしまうけど……逆に使われるとなると、なかなか厄介だな。
それこそ、ヴァル氏に『遮音結界』を作ってもらっていた意味が、大いに高まったとも言えるかもしれない。
これは早めに、何とかして身内に取り込むか、あるいは口外しないよう何かしらで
「……ロブさん? あの、大丈夫です?」
「え? あ、いえ、失礼しました」
いけない、また思考の海に潜ってしまっていた。
……ちなみに、
パンケーキを口に突っ込んで、物理的に口を塞いでやるとか、それぐらいのね。
「それじゃ、もし調整がつくようであれば、橙曜日と緑曜日を空けて、履修届を提出してもらえますか」
スキルの詮索は、冒険者相手ですら失礼どころではないのに、貴族相手では流石に無理があるだろう。ここを今ここで掘り下げるのは得策ではなさそうだ。
と、そんな話を切り上げようと思っていたのを汲んだかのように、1限目の終わりを告げる鐘が鳴った。
教会の
アレだ、炊飯器の釜の縁を叩いた時みたいな感じ。あれ割といい音するんだよね。
「話はついたの?」
ドロテーアさんに、何かあれば男子寮まで伝言をと伝えて戻ってきたところで、リナが訊いてきた。
「ああ、うん。詳しくは
やはり詳しい話は、個室でした方が安全だろう。念のためね。
「それじゃ、鐘も鳴ったし室内演習場に向かおうか」
そう言って、俺はリナ達に移動を促した。
正直なところ、ドロテーアさんが悪意や策謀で近づいてきているとは思わないし、思えないけど、相手はあくまで高位貴族なわけで、警戒しておいた方がいいんだと思う。
◇◆◇
……それが、どうしてこうなった?
「これは……非常に食欲をそそりますね」
「凄いですね、こんな料理初めて見ます!」
「ブートに
リナがグラスにオレンジジュースを注ぎながら、ブート嬢とドロテーアさんの2人に声をかけている。
クララは元より、ヌールちゃんも先週からずっと昼食を一緒に食べているため、勝手知ったるとばかりに、皿を片手に好きなものを取り分けている。
机の上に並ぶのは、前世の弁当屋の広告で載っているような『ザ・オードブル』という感じの料理の数々だ。
大皿に盛られたシーザーサラダにはじまり、唐揚げにエビフライ、ポテトフライにチキンナゲット、ローストビーフ、肉団子。
茶色い絵面の言い訳とばかりに中央へと添えられているのは、レタスの上に山と盛られたポテトサラダとマカロニサラダ。もちろんトマトときゅうりも添えられてますよ。
一応、別皿には1口
……既に受付とは顔馴染みになりつつあるぐらい使い慣れつつある個室には、ドロテーアさんも含めたパーティ結成予定の
「……こういうのは、最初が肝心らしいわよ」
いつの間にか横に来ていたリナが、俺用にとオレンジジュースを注いで持ってきてくれたようだ。
「半端に仲間外れを作ると、その後ずっと引きずるって、前に知り合った護衛の冒険者が言ってたのよ。ずっと引きずってる仲間が実際にいることを紹介しながらね」
ああ……まあ、確かにドロテーアさんだけが外れた状態で、お疲れ様会をするつもりではいたけれど。
それが、何故かダンジョンの
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