第215話 渾沌と紅白饅頭とストロングゼロ大満足みかんと

「今日は成人式なり! 成人式ってなんなり?」

「あれであろう。重い重税をかせられるようになるという事であろうな?」

 

 まぁ、そうなんだけど……武道館とかディズニーランドとか使って成人をお祝いするクソイベントね。その後、酒盛りして二日酔いになるまでが流れね。私は生まれが東京じゃないので、行かなかったのよね。※30話より

 

「かなりあは二十歳なり、成人式いかれり?」

「私は早生きだから、去年だったのよ。行ってないの覚えてるでしょ? キャラ定まってない時のミカンちゃんお祝いしてくれたでしょ?」

「それは残念であったな……我魔王軍では魔物として認められた者達は魔王様直々に盛大なパーティーを開いてくれたものであった。あれは楽しかったであるなー。去年、金糸雀殿の成人式もであるな」

「おぉ! 勇者も魔王軍入れり」

 

 私も入ろうかしら……もう入ってたんだっけ? 最近の成人ってお酒飲まないだっけ? 成人式してもらいたかったわねぇ。まぁ、知らない人の中でお祝いされてもね。

 

「では、金糸雀殿の成人式は去年したので、今年は今年の成人した人間共を祝って飲むであるか?」

 

 もう、アレね。飲兵衛あるある。なんでもいいから飲める理由をってやつね。まぁいいわ。どうせだから飲みましょうか、冷蔵庫になんかあるでしょ? おあつらえ向きのが入ってるわね。

 

「デュラさん、あんまり飲みすぎないでくださいね? デュラさんが苦手なストゼロ飲みますので!」

「おぉ、あの魔の酒であるか、うむ! 心してかかろう」

「勇者ストゼロスキー!」

 

 ミカンちゃんは炭酸系ならなんでもいけるものね。じゃあなんかおつまみでも作ろうかしら? 

 

 ピーンポーン! 

 

 あら、密林とか配達業者かしら? 私が玄関を開けるとそこには、管理人さん。


「カナちゃ〜ん! 孫がね。成人式でもらった紅白饅頭、お友達の分も置いていっちゃって、よかったら食べて食べて! ミカンちゃんも甘い物好きでしょ?」

「あー、ありがとうございまー」

 

 さて、お孫さん、管理人さんの部屋はゴミ箱じゃないわよ。7箱って……お皿に14個の紅白饅頭を並べると胸焼け起こしそうね。

 

「おぉー! おぉー! うまそーなりー!」

「これは管理人殿からという事であればいただくしかあるまいな、が多い」

 

 ガチャリ。

 

 私とデュラさん歓喜、誰かが来た。この際、ちょっと面倒くさい女神のニケ様でもいいわ。紅白饅頭を処理させましょう。

 

「ははははは! ワタツミー来たぞー!」

 

 あら、ワタツミちゃんの知り合い来たわ。というか私の住所、神々の世界に開示されすぎでしょうよ。まぁいいけど……

 さて、やってきたのは、赤髪で曲がったツノの元気そうな男の子。やーん! かーわーいーい!

 

「こんにちは、犬神金糸雀。この家の家主よ。ワタツミちゃんはもうこの世界にはいないんだけど」

「なんだ……と、あやつ。幼馴染の誕生日まで忘れたのか! ははははは! 剛毅な奴め!」

「あー、ワタツミちゃん、そういうの秒で忘れそうよね。まぁ、とりあえずお誕生日おめでとう。貴方は?」

「渾沌。まぁ、貴様ら人間からすれば邪神に相当する存在だ! が、一応神は神だ! はははははは!」

 

 元気な子ねぇ。聞いた事ない神様だけど、とりあえずリビングに「こちら絵どうぞ渾沌くん」「そうしよう!」と連れて行くと、まずデュラさんが、

 

「おぉ、これは心地よい暗黒の神であるな」

「やばやばなりぃ! でもクソ女神よりましそうなりけり」

「はははははは! 暗黒の徒と超越した人間か、面白い部屋だ」

 

 私は全員の手元にストゼロ大満足みかんのロング缶を用意。それじゃあ。

 

「渾沌くんの誕生日と、全世界の成人に乾杯!」

「乾杯なり!」

「おめでとうであるぞ!」

「おぉ! 人間と人外に祝われるとはめでたい! ありがとー! そして乾杯! そして、このさけ、うまい!」

 

 ストゼロは神様にも大人気と、じゃあ。このクソジャンクなお酒には甘い紅白饅頭でも合うかしら? つつつと紅白饅頭を差し出すと、

 

「ハッピバースデートゥーユー! 渾沌くん、紅白饅頭。邪神とかへのお祝いになるか分からないけどどうぞ」

「ほぉ、これはめでたい。ではいただこう!」

 

 もむもむと紅白饅頭を食べる渾沌くん、「うまーい! なんだこれ! 神界の饅頭なんて泥饅頭だな!」神様の世界、どんだけ食べ物不味いのよ。渾沌くんはバクバクと紅白饅頭を食べてストゼロをゴキュゴキュと飲み干し、

 

「金糸雀ぁ! お代わりは?」

「はーい! どんどんあるわよ。どんどん飲んで飲んで!」

 

 ストゼロのロング缶は三本も飲めばアフリカゾウでも失神するけど渾沌くんは中国系の邪神みたいだからお酒とか強いのかしら? ミカンちゃんも渾沌くんに負けずにストゼロを一本飲み干してから、

 

「うまー! 紅白饅頭うまー! 赤と白で同じ味なりぃ!」

「うむ、この世界。いや金糸雀殿の国、やたら紅白饅頭配るであるな? あと赤飯」

 

 うん、超昔からね。縁起物だからだと思うけど、江戸時代の侍、今でというところのサラリーマンにも正月とかに配られてたらしいからね。

 というかストゼロと餡子の入った紅白饅頭って……なんでこんなに合うのかしら?

 

「普通に美味しいわね。まぁ、血糖値がバグ上がりするからそんな何個も食べられないけど」

「うむ、そもそも酒を飲むとブドウ糖を消費するであるから、甘い物を食べたくなる物であるからな」

 

 お酒好きは甘い物を食べないとかいうのは実は真っ赤な嘘なのよね。私の兄貴は私の100倍は酒を飲むけど、ショートケーキをおつまみにビールを飲む怪人だったしね。

 

「ふぐぅ、しかしストゼロはよく回るであるなぁ」

 

 そう、お酒かなりデュラさん強いんだけど、ストゼロはあんまり飲めないのよね。言ってロング缶三本か、そろそろデュラさんは烏龍茶に変えておきましょうか、

 

「邪神乾杯なりぃー!」

「ははははは! 英傑かんぱーい!」

 

 すごっ! ミカンちゃんと一緒に飲んでも潰れない系の神様ね。それにしても紅白饅頭が残り四つ。すでに二人は缶詰とか塩辛い物で飲んでるからこれ以上紅白饅頭がなくなる事はないわね。

 デュラさんは? 首を横に振っているからもう食べられないと、私もはっきり言って手を伸ばそうと思えない。

 

 ガチャリ。

 よし来た。これで残りの紅白饅頭が消費できるわ。私はお茶を用意すると、時間通りに大概やってくるニケ様をお出迎えしたわ。

 

「こーん! にーち! わー!」

「ニケ様、こんにちは! はい、紅白饅頭、それと熱いお茶ですよー!」

「えっ? いただきまーす! でもどうしたんですか? こんな歓迎ムードで?」

「いいからいいから! ぜーんぶニケ様のですから!」

「そうですか? では、お酒は」

「お茶をどうぞニケ様」

 

 お饅頭4個も食べさせればニケ様も満足するでしょう。熱い高級な緑茶も用意したしね。

 

「あのぉ、金糸雀ちゃん? お酒は?」

 

 あーあー! キコエナー。

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