第355話【23万PV感謝】魔王様とミカンちゃんと大都会飲み

 お久しぶりです。天童ひなです。本日は池袋に向かっています。

 

 今朝方こんな掛け合いがありました。

 

「くーはっはっは! 本日はネトゲの友人と飲みに行く故、ひなも共に参ると良い! ダークエルフの奴はバイトで死天使のやつもバイト先の者とピクニックにいく故。共がおらぬ」

「いや、まぁいいですけど。お友達とのお時間邪魔にならないですか?」

「クハハハハ! そのような事を気にする奴でもなし」

 

 魔王様のお友達ってセラさんとかニケさんとかぶっ飛んだ人がたまに出てくるから当たり外れの振れ幅が凄いんですよね。それにしても一体どこに行くのでしょうか?

 

「ところでどこに行くんですか?」

「池袋にてミカンの奴がもでるぅの仕事を終えたのでそこで落ち合う。故にひなにおすすめのブクロの呑みどころの案内を任せよう」

 

 なんでモデルのイントネーションは微妙なのに、東京都民のブクロやジュクの発音はまともなんでしょうか? 魔王様はやはり謎ですね。というかモデルって事は凄いハンサムか美女が来るんでしょうか?

 これは少しだけテンションが上がりますね。

 

「まおー! こっちなりぃ!」

「おぉ! ミカン!」

 

 そう言って声がする方向、可愛らしい声の主は……ポンチョに短いスカートを合わせてウサミミニットで決めています。ご尊顔はめちゃくちゃ愛くるしいお顔をされていますが、この方は果たして成人しているんでしょうか? 

 私は可愛ければ何でもいいんですが、女子から嫌われそうな女の子ですね。

 

「ミカンよ。余の従者たるひなである」

「天童ひなです。よろしくお願いします」

「勇者ミカン・オレンジーヌなりにけり!」

 

 勇者って言ってますけど? あれ? そういえばミカンさんも魔王様の事をまおーって呼んでますけど。まぁ細かいことはいいですよね。

 

「ミカンさんはお酒飲めるご年齢なんですか?」

「勇者、飲めり!」

「身分証とかは?」

「なきー」

「それ多分、お店でお酒飲めないですよ」

「クハハハハ! 構わぬ。問題なかろう」

 

 いやー、大有りなんですけどねぇ。ミカンさんのテンション……どう考えても魔王様側なんですが、お互い気づいてこの距離感なんでしょうか? 

 まぁいいです。

 

「ミカンさんは苦手な物とかありますか? また、好きな物とか?」

「勇者、さかなスキー! 嫌いな物なき!」

 

 おぉ、好き嫌いがなくてお魚好きとは中々いいですねぇ。じゃあ、あそこにいきましょうか? たまに金糸雀ちゃんと呑みに行っていた池袋激安居酒屋。

 

“大都会“

 

「ほぉ、悪くない出立ちであるな!」

「うおー! うおー! 大衆なりにけり!」

 

 

 魔王様、私、ミカンさんと私が挟まれる形で並んでいます。

 やはり二人は感性が似ていますね。とりあえずこの大都会のルールを二人に説明しないといけませんね。私も金糸雀さんに教わった事ですが、

 

「ミカンさん、魔王様。ここでは1000円でビール四杯券を買う事が法律なんです」

 

 ※関東の友人にそう嘘を当方は教わりました。そんな事はなく、150円とかで一杯ビールが飲める時とかあるのでビール一杯、おつまみ一つ。合計300円くらいで帰っても問題ないですが、そこはお店を存続してもらいたいので、サクッと飲んでも1000円は使って欲しいなと思う意味なのかなと今は考えています。

 

「店麦酒、1000円四杯は価格破壊なりけり!」

「うむ! 一杯250円であるな! クハハハハ! 安い!」

「ですね! 四杯はまず飲めるという事で、次はおつまみです」

 

 何と言ってもここのタイムサービスおつまみが化け物じみているんですよね。コロッケ100円、春巻き100円、小鉢100円などなどです。価格破壊と言ってもいいのですが、一つだけ問題点があります。

 このお店は分煙とかは一切していないのでものすごく煙たいです。

 

「勇者食券買ってけり!」

「うむ!」

「行ってらっしゃい」

 

 私たちは運ばれてきたビールを前に喉がなりますが、我慢です。そんな中、常連らしいおじさんのタバコの煙が魔王様の方へ。

 

「クハハハ! けむい! ダークネスフィルター! これで煙はこぬぞ!」

「ただいまなりぃ! まおー買いにゆくとよし!」

「そうしよう!」

 

 魔王様が食券を買いに行った時、ミカンさん側のおばさんのタバコの煙が流れてきました。それにミカンさんは「ケホケホ! 勇者タバコ嫌い。シャイニング・フィルターなり!」あら? お二人とも魔法をお使いになり、私たちの席だけ空気清浄が凄い事になってます。

 

「クハハハ! ひな、お前の分も余が購入してきたぞ! ありがとうを言う事を許す」

「ありがとうございます。魔王様」

「どうしたしましてだ! さて、ひな。ミカンよ。この面白き酒場に乾杯!」

「乾杯なりっ!」

「乾杯です!」

 

 んっんっん! アサヒスーパードライ、安いから味もそれ相応とお思いかもしれませんがサーバーもしっかり洗浄されていて。これはつぎ方も上手です。

 

「うむ、うまい!」

「ぷひゃあああ! うみゃあああ!」

「はい、最高ですね! 二杯目いただきましょう」

 

 すっとグラスを下げるお二人、おつまみが届いて二杯目です。

 

 本日のお刺身、揚げ出し豆腐、唐揚げ、川えびの唐揚げ、ハムカツ、トマトサラダ。平均すると1品300円くらいです。

 

「うおー! うおー! うまそー!」

「うむ! これは良い! 川えびは美味しだ」

 

 チョイスが揚げ物多めで大衆居酒屋はこうでないといけませんね。ビールが進み、翌日少しだけ後悔するんですが……そんな事を考えていたらこういう場所では飲めませんよね。

 

「刺身うまー! さかなつよつよー! 麦酒うんみゃー!」

 

 三杯目ですね。ミカンさん、中々強いです。魔王様はまだ二杯目、私も、

 

「すみませーん! 三杯目お願いしまーす!」

「はいよー」

 

 そしてすぐに出してもらえるのがまたいいですね。ミカンさんはホクホクの表情で唐揚げを大きな口を開けてパクり! 実に可愛いです。そして……いつの間にか四杯目のビールをぐいっと飲んで……この飲み方、金糸雀さんみたいです。

 四杯呑み終えた金糸雀さんは……

 

「でか生セット所望なりっ!」

 

 780円で1Lビールと小鉢のセット、これは金糸雀さんの再来。

 

「クハハハハハ! いつもミカンはよく飲むであるな!」

「まおーは味わいすぎなりっ! 麦酒はゴクゴクの神の水なり!」

 

 グイグイ1Lビールも飲んでます! 川えびをサクサクと私たちは食べながら、私も四杯目。魔王様は三杯目のビールに入ります。

 

「そーせーじの盛り合わせ所望なりっ!」

 

 食券をどれだけミカンさんは購入されてるんでしょうか? 小さい体でモデル体型でものすごい食べられますね。

 

「ひなっ! ビールとそーせーじの組み合わせ神っ!」

「わかります! 神ですね!」

「ひな、ウェーイ!」

「乾杯です!」

 

 ミカンさん、可愛くて素直でいいですねぇ! また一緒に飲みたいです。それにしてもソーセージとビールの組み合わせの間違いない事この上ないです。

 

「おいしー! 私、日本酒セット入れちゃいます」

 

 日本酒二杯にお刺身三点盛り付きで1000円。価格破壊です! 魔王様はようやく四杯目を受け取り、ハムカツをパクり。

 

「うむ! 色々な揚げ物があるが、余はこのハムカツが大好きである! くーはっはっはー!」

「勇者もハムカツすきー! もう一杯でか生セット入れり!」

 

 と言ってミカンさんが食券を買いに行ったっきり帰ってきません。ミカンさんの大好きなお刺身もあるのに……何故でしょう?

 

「魔王! ひなちゃん! お酒を買うお金がありません! お金ください!」

 

 こ、この声は……すでに何処かで呑んできたであろう感じで出来上がったニケさんがやってきました。しかし、さすがは大都会です、ヤバいお客さんが割とやってくるだけあって誰も動じません。ミカンさんはまさか……ニケさんがいるから消えたんですか?

 

 いや、そんな事は……

 

「聞いてますか! ひなちゃん!」

「あ、はい。ニケさん。このお店、かけそばがとーっても美味しいんですよ! まずはそれ食べませんか?」

「食べますぅ!」

 

 そう、大都会に来たならシメは絶対にこの250円のかけぞばです。ニケさんにお酒飲ませると大変な事になるのでささっと食べさせて帰ってもらいましょう。

 

「お酒ですぅ! いただきます」

 

 あっ! 私の熱燗の方を……冷酒でお刺身、熱燗でかけそばなのに……酷いです。魔王様は残りのおつまみじーっと見つめて残りの揚げ物をかけそばに乗せてます。

 

「くーはっはっは! よい、おそばにコロッケである!」

 

 なるほど、アリですね! 私もおそばをささっと処理して、冷酒をくぴっと飲み干し。

 

「さぁ! 魔王様、ニケさん。帰りましょう」

「うむ! 前払いは実に良いな」

「私は何も頼んでませんよー! なんで私だけ飲めないんですかっ!」

 

 あっ……この展開って……

 

「よい、女神ニケよ。余とひなの家にて飲み直すとするぞ! この前、町内会の福引にて当てた美味い酒がある。来ると良い」


 えぇ……あれ今度ゆっくり飲もうと思ってた、お酒じゃないですかぁ。ゲゲゲの謎でも飲まれていた……私がしょんぼりと二人の後ろを歩いていると、私の服をくいくいと引っ張る。

 痴漢でしょうか?

 

 いえ、ミカンさんが隠れて「かなりあの家で飲めり! クソ女神はまおーに任せ勇者達はこれにてドロンなり!」

 

 いい事ってあるんですね! 私はミカンさんと手を繋ぎながらお酒とおつまみを購入する為にドンキに行きます!

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