第241話【17万P V特別編】魔王様と大学の学園祭の居酒屋(?)と
「グス……」
天童ひなです。
何やら今日は私の部屋にやってきたダークエルフさんが泣いています。ジャンプコミックスのドラゴンボールを全巻持って、読みながら号泣していますね。そうです。また一人、漫画の神様がこの世を去りました。ダークエルフさんの愛読書、その作者である鳥山明先生の有名な一冊ですね。
「ダークエルフよ。涙を拭け、きっと泣くよりも、ギャグ漫画の作者へは沢山笑った方が手向けになるであろう」
「はい、魔王様ぁ……」
昭和、平成、令和と人々の魂と振るわせ、大いに笑いを届けてくれた鳥山明先生にご冥福を祈ります。きっと鳥山ソウルを受け継いだ新参の漫画家さんによって今後も素晴らしい漫画で世界は溢れるでしょう。
「本日なのですが、私のガールズバーの同僚の金糸雀ちゃんの大学で学園祭があるらしいので、そこにお呼ばれしてるんですよね。割と、飲食、当然お酒もあるんです。行ってみませんか?」
そうなんです、なんと私の友人であり同僚の金糸雀さんの大学の学園祭です。
※大学のモデルはご想像にお任せします。最近は大学の学園祭で居酒屋とかバーがあるんですね。驚きました。
私たちは電車に乗り、東京の大きなとある街に向かいます。その付近にある大学で確かにお祭りは開催されていました。私は高校卒業後、留学の為にお金を稼いでいるので、大学はもとより、専門学校も選択しませんでしたので、少しだけ羨ましくもありますね。
「ひなよ。ここは学校であろう? こやつら。学生の性分を忘れ、何を惚けているのか?」
うん、まぁ。学園祭って日本独自の謎の文化なんですよね。もしかすると、社会経験の一環と思い出づくりの為に時の天才達が考えたのかもしれませんが……文化祭的なものはあれど、世界でも類を見ない特殊なお祭りなんです。当然、魔王様がそう仰るのも分かるのですが……
「魔王様! 私、漫画の知識で知っております! 学生達がお店やら出し物を行うんです! こら! 勝手に私と魔王様を撮影するな!」
「良い、ダークエルフ。許す」
「仰せのままに」
魔王様とダークエルフさん、コスプレだと思われているのかめちゃめちゃ写真撮られます。というか二人ともやばいくらい美人ですからね。
ダークエルフさん、漫画でしか私の世界の知識を得ていないのも中々ヤバいですね。キョロキョロと魔王様が珍しそうに周りのお店を見て一言。
「この学園祭とやら、価格設定ぶっ壊れておらぬか? チョコバナナ200円で売っておるぞ?」
「まぁ、儲ける事をメインじゃないんですよ。基本は……それを主に考えちゃう学生さんもいるんですけどね」
「うむ。気に入った! 許す! では、ひなよ。ゆるりと案内するがいい」
私の大学じゃないんですけどね。でも、ご機嫌そうなので私たちはチョコバナナを人数分購入すると、ダンスやらマーチングバンドを見ながら拍手をして学園祭を楽しんでいました。
「ねぇねぇ、ちょいとお客さん、そこのイケてるお兄さんとイケてるお姉さんお二人さん、いいとこありますぜ?」
ちょいちょいと私たちの袖を引っ張る女の子。いや、きっと大学生なんでしょうね。ややガーリーな服に白衣を着てます。バケ学関係の学生さんでしょうか? 私たちはついていくと……
「キャバクラ……いえ、ラウンジでしょうか? 中々のクオリティーですね」
「そんなあやしいお店じゃありませんて! 居酒屋です! 建前上。い・ざ・か・や! お安くしときますよぅ! どうですかー? 一杯400円からですぜ? さぁ、入った入った!」
無理やり連れて来させられたこの人、なんだかいろはさんを彷彿させますが、名札には孔雀という源氏名のらしき名前、強引さがとんでもないです。
「三名様、ごらいてーん! はい、ウェルカムビール、どーん! ポーションの詰め合わせどーん! これメニューでーす!」
そう言って他のお客さんの接客に入っちゃいましたけど、ビールを小さめのプラスチック容器で出すんですね。学園祭っぽいです。ポテチにポッキーに何故かハイチュウ。
「クハハハハ! 中々に面白い女であるな! では、学園祭とやらに乾杯!」
「魔王様の栄光に乾杯!」
「金糸雀ちゃんの大学に乾杯!」
私たちは、ビールを飲んで驚きました。思った以上に、ビールが美味しいんです。当然、市販品のハズなんですが、注ぎ方が上手です。
「ひなよ。メニューを見てみるといい。クハハハハ! ここの連中。考えたであるな」
「えーっと、チョコバナナ。400円。タコス、600円。たこ焼き600円。わたあめ、500円……これは……学園内で売られている物ですね」
学園祭で売ってる物を買ってきて倍の値段でおつまみとして提供してますね。このお店のお客さんの大半が男性の、それも中年の方です。この程度の値段で現役女子大生とお酒が飲めるなら、そりゃ安いからいくらでも出すでしょうね。おそらく、本来のラウンジの相場の5分の1くらいの価格で楽しめるんじゃないでしょうか?
「では余は焼きそばを頼むとしよう」
「魔王様、お言葉ですが、先ほど食されませんでしたか? あの可もなく不可もない焼きそば」
ダークエルフさん! それ言っちゃダメです! 大学生の男の子がめっちゃ自信満々ダークエルフさんの為に作ってたじゃないですか。学祭の食べ物なんて不味いか、普通かのどっちかなんですよ。
「クハハハハ! ビールといえば焼きそばであろう? 違うか?」
「仰るとおりでございます! 魔王様!」
ダークエルフさんもなんで聞いたんでしょう。とにかく私たちは、焼きそば、タコス。チェロスと生ビールのおかわりをお願いしました。
「はーい、お待たせー! これなーんだ?」
そう言って孔雀さんが持ってきたのは小さいホットプレートです。すると、焼きそばに調味料を振って卵で包んでアレンジしてます。チュロスはホットチョコレートにブッ刺して持って来られました。タコスなんて揚げて別料理になってます。
「美味しい魔法をかけましたー! じゃあ、座らせてもらいまーす。店長の犬神孔雀でーす! ピチピチの二十四歳院生でーす」
ナチュラルに同席してきました。魔王様、ダークエルフさん、そして私にウィンクをしてくるんですが、うん。色気が全くないですね。よく言えば親戚の子みたいな愛らしさ、悪く言えば、ずいぶん幼いです。
「ほぉ、確かに美味くなった。貴様に魔法店長の官位を授けてやろう」
「あざっす! ところで、そのー、ドリンクとかぁ、頼んじゃっていいですかー?」
「好きにやると良い! 余達もビールおかわりだ」
こんないかがわしいお店を学園祭で開いていいんでしょうか? それにしてもこの孔雀さん、どこかのお店で働かれてるんでしょうか? 滅茶苦茶お店の回し方が上手ですね。
※某大学の学園祭にガチでありましたわ。お水系のバイトをする学生さんもいるのでクオリティはかなり高めでしたね。田舎のキャバクラより高かったです。
「聞いていますか、人間達? 私はですね! かつて、異世界の魔物がやって来た時に神々が見捨てた中、私だけは、全ての命の勝利を願い、先陣を切って」
ややこしいお客さんが来てるみたいですが、気にしないようにしましょう。魔王様もダークエルフさんも楽しまれているみたいですし。
「この揚げたタコス、実に美味い! 魔王様、是非ご賞味ください」
「うむ。あとビールお代わり」
「孔雀もお代わりでー」
孔雀さん、一体何杯呑むつもりなんだろう。周りを見渡すと、オフショルダーで胸元を強調させた女の子や、マーメイドスカートでスタイルに自信ありげな、ガチ目のラウンジ嬢役、というかほぼラウンジ嬢の女子大生の方々が接客しています。孔雀さんの服装はコンセンプトバーやどちらかというと私と同じガールズバースタイルの服装ですね。ガーリーな格好は基本、ラウンジ通いの男性からは好まれないんですよね。
ダメですねー。お仕事目線の考えに行っちゃいます。
「ひなよ。飲んでおるか? 先ほどからグラスが減っておらぬが」
「飲んでますよ。次はハイボールいただきましょうか?」
「いいねいいね! ちゃんひな! んじゃ孔雀さんが作っちゃおーかなー」
アイスピールをドンと持ってくると、銘柄は角瓶ですか、氷少なめ、濃いめ、炭酸強め……なんでしょう。この孔雀さんの小料理店のママみたいなハイボール。
「お、おいし」
「でしょー、孔雀さん、ハイボール名人なんよー、魔王様に、ダークエルフちゃんも一杯、いっとくぅ?」
「いただこう」
「では、私もご一緒します」
孔雀さん、お酒を作るのもとっても上手です。そしてなんかどこかで見た事がある気がするんですよね。凛々しさの中に何か冷静な情熱を持った瞳。
「孔雀ちゃん! 四番テーブルのお客様が……」
「オッケー、いく。翠ちゃん、このテーブルお願いね」
孔雀さんは酔って女子大生に絡む、おじさんに「うち、そういうお店じゃないんでー、まぁまぁ。落ちつてー、あー、ちょっと裏行きましょうか裏」と宥めて、戻ってきたおじさんはしょんぼりして、お会計をして帰っていきました。というか私の見間違いではなければなんか凄い諭吉さん払ってた感じですけど。ここそういうお店ですか?
「翠ちゃん、こうたーい。ごめんなさいねー! 孔雀さんの奢りで、ビール追加でーす」
「貴様、中々の手腕を持っているな。余の家来にならぬか?」
「あー、恋愛とかー禁止のお店なんですぅ」
ビールを飲みながら魔王様と孔雀さんが見つめ合ってます。お互い、目力が凄いです。
「ククク、クハハハハ! クーハッハッハ!」
「ふふふ、ふはははは! ふーはっはっは!」
お互い、何かをわかり合ったように笑ってますね。ホットチョコレートにつけたチュロス。うま! 全部アレンジしてるから倍の値段とってるんでしょうか? 次のメニューかお酒をと思った時、
「孔雀ちゃん、七番テーブルのお客様が……」
「あのヤベェ、女か。いつかやると思ったんだよな。オッケー、いく」
うん、私も思っていました。自称女神のニケさん。何故か飲み食いしてて、こっちをチラチラ見てたんですよね。多分、お金ないのに……
「孔雀ちゃん! 私はですねー」
「うるせー、毎日毎日。私の寮にたかりにきやがって、金があるって言ったから入れてやったんだろーが、警察突き出すぞサイコ女! デビルマンの世界に帰れ!」
「私と孔雀ちゃんの仲じゃないですか、女神と親友じゃないんですか?」
「おま……マジか、おま……」
凄いなニケさん、孔雀さんを引かせてますね。口元を拭く魔王様。食事はこれで終わりという事でしょうか?
「見苦しい限りですね魔王様、見てください。あの物乞い女神がここでも迷惑をかけておりますよ」
「ふむ」
と魔王様はニケさんと孔雀さんのテーブルに行くと、
「孔雀よ。余の連れが迷惑をかけた。いくらだ? 余が払うとしよう」
「魔王様、こいつ甘やかしたらダメですよ。調子乗りますからね」
「クハハハハ! 女神ニケが調子に乗るのはもう数百年も前からだ。余の顔を立ててはくれぬか?」
魔王様は、膝をついて、孔雀さんより目線を落としてますね。そもそもが超という言葉を凌駕した美形の魔王様ですから、店内の女子大生のキャストの皆さんはこの光景にうっとりしてますね。
「むぅ、まぁ金払ってくれるならいいけど、というかサイコ女。二度と私の前に顔見せんなよ。あと一年生に私の従姉妹がいるけど、それに絡んだらぶっ殺すからなお前?」
「クハハハハ! すまぬな孔雀よ。手間賃も込みでこれで許せ」
十万握らせてますが、孔雀さんは、
「セット料金がそれぞれ2000円でこの馬鹿も魔王様達もドリンクは全部で10杯。私は五杯で6000円、フードメニューは全部で3000円。1万3000円だよ。多すぎる。この馬鹿の手間賃込みでも8万は返すよ。このバカの引き取り代ってことで」
「世話になったな。また貴様とは飲みたいぞ孔雀よ」
「私もだよ魔王サマ」
そうして、魔王様がおぶる形で泥酔したニケさんを回収したんですが、これまた私の部屋に連れて行くつもりなんでしょうか? 学生の作った映画を見たり、お化け屋敷に入ったり、私たちは学園祭を堪能した後に電車の中で気づきました。
「あっ! 孔雀さんって金糸雀ちゃんの関係者かな? 同じ、犬神ですし」
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