第352話 ヤクシニーと崎陽軒の冷凍シウマイとチャイナブルーと

「ズバババババ! ギュイーン! 勇者、フラッグファイターなり!」

 

 ミカンちゃんがガンプラで遊んでるわ。私の兄貴もガンプラ作ってたけど、スプレーみたいなので色つけて飾ってるだけだったから分からないけど、こうやって遊ぶものだったのかしら?

 

「金糸雀、今日はシウマイが食べたいけど」

「あぁ、ケートスさん、崎陽軒のシウマイ好きですねぇ。じゃあ、今日もチンしましょうか?」

 

 兄貴の友達のダンタリアンさんから大量に買いすぎたからお裾分けという事で崎陽軒の冷凍シウマイが送られてきたのよね。この前ちょっと食べた時にケートスさんのハートを鷲掴みにしたのよね。

 

「辛子と酢ラー油も欲しいけど」

「そもそも味がついているシュウマイなのに、味変するとまた美味しいのよね」

「金糸雀違うけど」

「えっ?」

「シュウマイじゃなくてシウマイ」

「あぁ、なるほど。ケートスさんは拘る人ね」

 

 崎陽軒のシウマイをシュウマイというと死刑にしてくる人がいるので要注意よ。シウマイだからビールでもワンカップ大関でもいいんだけど……。

 

「今日はカクテルにしましょうか? チャイナ・ブルーなんてどう?」

「何か分からないけど、別にいいけど」

 

 ミカンちゃんがデュラさんを追いかけ回してるわ。「デュラさん、最終ジオングっぽい」「まぁ、首だけであるからな」と話ながら私の元へやってきたミカンちゃんは、

 

「シュワシュワなり?」

「トニックウォーターが入るから炭酸よ」

「ちゃいな・ぶるーあり!」

 

 ガチャリ。

 

 さぁ、きたわね。風邪も治って私も万全よ。もう二度と風邪の神様が来ないようにあたりめを玄関に祀っているから、さぁ安心して会いにきましょうか。

 

「はーい! いらっしゃーい」

「ふむ、ふむふむ。えらく上質な衣を着た娘だ」

 

 あー、久しぶりに私のドンキジャージ、2980円が褒められたわね。まぁ、前回までの1980円の方から衣替えしたけど、いつも通りのお出迎えね。

 

「私はこの家の家主の犬神金糸雀です。貴女は?」

「頭が高い! と言いたいところだが、この狭い城の城主か、ならば対等に扱ってやろう。良きにはからえ。妾はヤクシニー」

 

 エッロ! いチャイナドレスを着た鬼の角が生えた美女。うん、ありよりのありね。私の場合は美人、イケメン、エロければまぁ大体問題ないわ。

 美人なのに、ウザ絡みする人はもう増えないで欲しいけどね。

 

「ふむ、人間共にどんな苦行を与えてやろうかと思っていたが、気がつくとここにいた。さて、妾に何を望む? 娘よ」

「いえ別に、今からお酒飲むんですが、ご一緒にどうですか?」

「酒か! それは良い、この前ニケの奴と飲み明かしてな。ニケというのは悪鬼羅刹も逃げ出す程の女神なのだが、まぁその話はいい」

 

 あっ! ニケ様の友達は基本まともな人という統計があるのよね。私は安心してお酒を提供できるわ。

 

「ヤクシニーさん、こちらへどうぞ」

「ふむ」

 

 リビングにヤクシニーさんを迎えると、ミカンちゃんとケートスさんが手を挙げる。デュラさんは、崎陽軒の冷凍シウマイを電子レンジでチンではなく蒸籠で蒸し上げてくれてるわ。

 

「魔物に……魔精に……魔力を帯びた人間……ふむ、興味深い」

「あぁ、デュラハンのデュラさんに、ケートスさんに勇者のミカンちゃんです。まぁ、そんな事よりお酒飲みましょ! まぁまぁ座ってください」

 

 私はライチリキュール、ブルーキュラソー、グレープフルーツジュースを氷を入れたグラスに注いで、最後にトニックウォーターを氷に当たらないように注いで完成よ。

 

「うおー! うおー! ブルハワイみてー! すげー!」

 

 ミカンちゃんお喜びね。ブルーハワイは海をイメージしててチャイナブルーは、中国のチャイナじゃなくて陶磁器という意味のチャイナの青さをイメージしたカクテル。ジュースみたいな味でお酒初心者にもみて楽しい、飲んで美味しいお酒。ちなみに私見解だけど、カクテル作る人って小洒落てるから、中国のチャイナという意味もかけてると思うのよね。

 シルクロードの行き着く先で、多くの人種の血が混血している中国人は基本美しいからそれも含めて陶磁器みたいなとかかなと。

 度数は優しい五度くらいね。

 

「では、ヤクシニーさんと崎陽軒のシウマイに! 乾杯」

「乾杯なりぃ!」

「乾杯であるぞ!」

「乾杯だけど」

「ふむ! 妾に乾杯、そなたらに乾杯!」

 

 うーん、普通に美味しいわ。酸味と甘味が我ながら絶妙ね。まぁ、この味のお酒なら今日も安定的に聞けるかしら?

 

「うんみゃあああああああ! うみゃい! かなりあ、お代わりになりっ!」

 

 うんみゃあからのお代わりに繋げてきたわね。すぐに作りますとも。ケートスさんも思わずニッコリ。デュラさんも美しさを堪能しながら飲んでくれてるわ。

 

「なるほど、いくつかの酒をかけわせてこうも優れた酒を作るか、犬神金糸雀。褒めて遣わす。うまい」

 

 おぉ! ヤクシニーさんも大喜びね。じゃあ、蒸籠から出したシウマイをみんなで楽しみましょうか。

 

「はーい! シウマイ食べましょ! ヤクシニーさん、できれば最初はそのまま食べてみてください」

「ほぉ、ではいただくとしよう」

 

 中華系の方だけあって、お箸の使い方が綺麗ね。咀嚼した瞬間にヤクシニーさんの表情が驚きに変わるわ。間違いなく美味しい方の驚きね。

 

「これは、うますぎる」

「中国という大きな大陸の国の食べ物を完全魔改造した私の国の料理、シウマイです。本来スープを飲みながら食べる物を勘違いしたのか日本は完全にそのまんま美味しく食べる事に特化してます! 是非、次は古来より愛されてきた、カラシでどうぞ。その後は酢醤油も、ラー油でも美味しいですよ」

「ふむ、犬神金糸雀、慌てるな」

 

 ヤクシニーさんちょっと美人がすぎるので私も興奮して前のめりになっちゃったわ。「うんみゃあ! 勇者、崎陽軒超スキー!」「弁当が実に美味いであるからな」みんな大好き崎陽軒、この美味しさが関西の方では中々食べられないのは辛いけど、関東ならいつでも食べられるはほんと最高。

 関西の551みたいなものね。

 

 ※関西でも永続的にこの冷凍版だけは取り扱ってるとこもあります。当方関東(東京)、関西(大阪)を行き来していますが、他地域については不明です。

 

 ヤクシニーさんがカラシをつけて、崎陽軒の冷凍シウマイをお箸で丁寧に半分に切って口に運ぶ、そして静かに咀嚼。エロいわ! 食べ方が上品すぎると卑猥に見えてくるのはヤクシニーさんがエロいからだわ。

 

 だって! 同じ美少女のミカンちゃんの場合。

 

「あーん! んみゃああ!」

 

 大きく口を開けて、一口で元気いっぱい咀嚼する腹ペコキャラは普通に可愛い! ポイント高いわ! でケートスさんは崎陽軒のシウマイを見ると嬉そうに見つめてフゥフゥと冷ましてから半分パクり。「美味しいけど」と私と目があったら恥ずかしそうにしてる。可愛い! ポイント高いわ!

 

 そして再びヤクシニーさん。組んでいる足がチャイナドレスのスカートからチラチラ見える太もも。次は先ほど半分に切ったシウマイを酢醤油にちょんとつけて艶々の唇に向けてお箸を伸ばして静かに咀嚼、少し血管が見えそうな細くて綺麗な首が上下しているのは飲み込んでいるんでしょうね。

 

 エロい!

 

「犬神金糸雀、何か?」

「いやー、ありがとうございます」

「??? 変わった奴よのう。本来、夜叉をみて家に招くやつなど聞いたこともない」

「あぁ、日本は独特ですからね。鬼に対してそこまで悪いイメージないんですよ。泣いた赤鬼的なね。それよりグラス空ですね。作りますね?」

 

 追加のシウマイも蒸しあがったみたいで「追加の三十個であるぞー! どんどんヤクシニー殿も食べてくだされな! ダンタリアン殿が五百個も持ってきた故」とデュラさんもチャイナ・ブルーを飲みながらシウマイを堪能。

 

 ワイワイガヤガヤと楽しんでいるけど、そろそろニケ様がやってくる頃なのよね。

 あー、もう既にいたわ。ニケ様って呼んでもないのに待ち合わせ場所に来る子に通じるところがあるのよね。言ってくれれば仲間に入れてあげるのに、何故かそうしないのに無理やり輪に入ろうとしちゃう距離感がバグってて、謎の行動力を出すのよね。

 

「おぉ、ニケか」

「おお、ニケか! ではありません。金糸雀ちゃん、これはどういう事ですか?」

「いつも通りウチにやってきたからですよ」

「ニケよ。飲むといい、犬神金糸雀のやつは中々良い酒を出す。犬神金糸雀、ニケにチャイナブルーを」

「あぁ、はい。わかりました」

 

 私はニケ様の為にカクテルを作ってあげていると、ミカンちゃんが口の中に入るだけのシウマイをポイポイとお箸でつまんで食べると部屋から逃げ出したわ。ケートスさんはニケ様が面倒だけど崎陽軒のシウマイは食べたいという苦悶の表情を浮かべている。デュラさんは私と一緒でもうニケ様の相手をする心持ちね。

 私がチャイナブルーを作ると、それをヤクシニーさんが掴んでニケ様に渡したわ。

 

「妾からだ! 飲むといい」

 

 ニケ様がそう言われて、憤怒しちゃった。

 

「それは私がしたいんですー! 金糸雀ちゃんは私を信仰しているんです! 私からヤクシニーにそれをしたいのにー! 金糸雀ちゃん、お酒を作ってください! 私からって私がします!」

 

 めんどくせーなー。

 まぁ、いいか。それでニケ様が満足するならと私はもう一杯カクテルを作ってニケ様に渡すと。

 

「ヤクシニー、私から、私の金糸雀ちゃんが作ったお酒です!」

「先ほど犬神金糸雀に作らせた酒をまだ飲んでいる。結構だ」


 ニケ様、断れた。ニケ様は断られたチャイナブルーを一気飲みすると私をみてブワッと泣いたわ。

 

「金糸雀ちゃん!」

 

 私にどうしろと……ヤクシニーさんはまともというか、我がめちゃくちゃ強いからニケ様とお友達でいられるんでしょうね。ある意味突き放したり、受け入れたりするより酷い仕打ちかも。

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