第361話 スコーピオンキングと築地銀だことバリキングと
「金糸雀は日本が一番古い文明という事に関して感想は? どうでもいいけど」
「あー、あれねぇ。世界を紐解いていくと、パンゲアとか色々あるけど、もしかすると日本がというより、日本のあった場所から文明が分かれたのかも知れないわね」
日本人が何処から来たのか歴史学者も生物学者もちゃんとした答えが出ていないという事実があって、そもそもそこにいたからという答えにできないのは色々理由があるのよね。実は昭和時代まで、日本人には山間民族が存在してたんだけど、これも政府による理由で消されてしまったんだけどね※興味ある方は調べてみてください。
その山間民族を調べる事で古代の日本の系譜をもっと深く突き詰められたんだろうけど、今となっては戸籍もない住所もない彼らがどこに行ったのか分からないのよね。
※恐らく奉公や養子に出され現在の日本人の中に溶け込み今に至ると思われます。
「金糸雀殿が最古の人間の種であるか、故にその舌があるのかもしれぬな」
「あぁ〜、そうですね。確かに旨みを感じる気管が発達いているのは私たち日本人だけですもんね。というか、ケートスさん、そういうオカルトとか都市伝説系好きですね! 日本が最古の文明にはなりえないんですよ」
「何故?」
「それはですねぇ、大人の事情ですね。学者の殆どはもう日本が最古の文明だってわかってるんですけど、色々面倒な事になるので今のままでいいじゃんって事になってるんですよ。さて、じゃあ今日は何食べましょうか?」
と考えていると、ミカンちゃんがリュックにデュラさんを入れて買い物から戻ってきたわね。
「ただいまにゃり!」
「ただいまであるぞ!」
何やらいい匂いが……これは粉物かしら? そしてこのソースの香りからして……
「たこ焼きね」
「正解なりにけり! スーパーの近くで銀だこ売ってり、買い占めたりっ!」
「へぇ……それにしても買ってきたわねぇ」
たこ焼きは美味しいけど、ミカンちゃん、どんだけ購入してきたのよ。山みたいに積んである銀だこ。銀だこは居酒屋で食べる事が多いから買ってきて食べるのってあんまりないわね。
「じゃあ、たこ焼きに合うお酒といえば、炭酸系よね」
「麦酒が一番だけど?」
そうね。何も考えずにアサヒスーパードライをぶち開けて本能に身を任せて喉に流し込むのもやぶさかではないわ。でも何か違うわね。
ガチャリ。
こんな時にやってきてくれる異世界の住人、私はとりあえずお出迎えに行くと……あら? なんか普通の人来たわね。一体、この人は……
「私は犬神金糸雀。この家の家主です。貴方は?」
「俺はスコーピオンキング。由緒あるエジプトの王! そなたもこの城の王か」
「城というかマンションですが、今から一杯やりますので、ご一緒にどうですか?」
「はっはっは! あやかろう」
という事で、上半身裸で、やたら金のアクセサリーで装飾されたスコーピオンキングさんをリビングに連れていくと、ケートスさんが……
「えっ! スコーピオンキングだけど」
「ケートスさんお知り合いですか?」
「俺はこのような可憐な娘は知らんが」
「紀元前3000年前に実在したとされるエジプトの王様だけど……サソリの紋章が見つかったらからスコーピオンキングって呼ばれてるけど……本名だったんだ。セルケトとかじゃないんだ……」
という事は普通の人なのね。といかケートスさん滅茶苦茶世界史詳しいんだけど! ってケートスさんの言葉がうつっちゃったわ。
じゃあ……
「とりあえず、みんな飲みましょう。たこ焼きが冷めちゃうわ。スコーピオンキングさんもどうぞ!」
「これはすまない。金糸雀王」
「かなりあが王になり?」
「うむ、確かに殿下にもこの部屋を守るように命じられていた金糸雀殿は王と言えば王であるな!」
「金糸雀、滅茶苦茶尊いけど」
私、王様になっちゃったわ。まぁいいか! 今回は王の飲み物よ!
「不思議な苦味と味わい、不思議すぎる味がとてつもなくクセになる! バリキングよ!」
ドン! と私が置いた一升瓶。カタカナでバリキングと書かれたやっつけ感のあるパッケージ。作り方はくっそ簡単。グラスを用意、キューブアイスを入れて、バリキングを1、炭酸水を2。
「えっ、かなりあ?」
「うむ……いつもの金糸雀殿と違って……」
「雑だけど」
全く、確かにいつもの私はメジャーカップを使って完璧なカクテルやお酒を作っていたかもしれないわ。でも、このバリキングは漢字の漢と書いてオトコ! ちなみに漢使から漢字の漢はオトコって読むのよ。
「このお酒は雑に作った方がいいのよ! 元気バリバリ、その王様なんでバリキングよ! はい、みんなこれで乾杯よ! 太陽神に乾杯!」
「おぉおお! 金糸雀王、我らが信仰神に! ありがたい! 乾杯!」
「乾杯なり!」
「乾杯であるぞ!」
「日本も太陽信仰だけど……あれ? エジプトのスフィンクスって確か、シーサー、もしかして原点同じだけど?? 乾杯」
グビグビグビ!
かーっ! お腹が温かくなってキマって来たわ! このなんとも言えない味わい、クセになるわ!
「……うまい!」
「う……うん? みゃ? うみゃあああああああ!」
「うぉおお! うまいである!」
「あ、美味しいけど」
サッポロが誇る。国産リキュール・スピリッツ。謎すぎる美味しいお酒なのよね。そシーて! このスパイシーなお酒と、
「築地銀だこも食べましょう! さ、スコーピオンキングさん、火傷にきをつけてどうぞ」
スコーピオンキングさんはふーふーと冷ましてからゆっくりと咀嚼、そして飲み込む。無言でジョッキのバリキングを飲んで、スコーピオンキングさんは涙を流したわ。
「なりっ?」
「辛かったであるか? 水を」
俯いてスコーピオンキングさんは手のひらを私たちに見せると首を横に振ったわ。
「完全に……完全にエジプトの食文化を超えている! こんな酒も、こんな食べ物もない! いつか、俺の国は金糸雀王の国に滅ぼされるかもしれんな」
「そんな事ないけど、5000年以上後もエジプトはある! それは全て、スコーピオンキング達、ファラオのおかげだけど!」
ケートスさん、神様なのに滅茶苦茶世界史押しね。でもエジプトは確かに私たち地球の誇るべき文化と歴史を持ってるわよね。
ミカンちゃんが目を輝かせて叫ぶわ。
「うおー! スコーピオンキングかっけぇ! バリキングうまうま! 銀だこもつよつよぉ!」
「うむ! 我も魔王様に仕える者として言おう。スコーピオンキング殿は真の王である! 臣下や民衆たちも幸せであろう!」
「ふふふ、さぁ食べよ食べよ! バリキング飲む人ぉ!」
「「「「「はーい!」」」」」
ん? 一人多いわ。うん、知ってるけど、ニケ様にはデカビタCでも出した方がいいのかしら、ニコニコと微笑みながらたこ焼きを頬張ってるけど、
「ケートス、デスソースいりますか?」
「えっ、普通にいらないけど……ニケ、いつの間に?」
ミカンちゃんはスコーピオンキングさんの横に行くとグラスをコツンとつけてから「勇者これにてドロンなり!」「おぉ、勇ましきミカン。楽しかったぞ!」と一声かけて出ていくのは成長したわね。
「聞いてくださいよ金糸雀ちゃん! 先ほどアポピスの大群がエジプトとかいう場所に攻め込んで行きましたよ! 面白そうですね! まぁ? 私なら、アポピス程度、ちぎってはなげ、ちぎってはなげですね! 金糸雀ちゃん! 聞いてますか? 後お酒が遅いですよ!」
ミカンちゃんじゃないけど、げっ! ニケ様、すでに飲んできてる。そして何やら不安になることを言ってくれてるけど……
「そこな、人ならざる娘、それは真か? 我が王国が! 金糸雀王、デュラハン殿、ケートス女史。実に楽しいひとときであった。いつか、我が魂が回帰する時、また飲もう。友たちよ!」
「スコーピオン王、行かない方がいいけど」
「俺は王、逃げ出すわけにはいかぬ。例え、国が滅ぼうとも」
古代エジプト第一王朝がなぜ衰退したのか今のところはっきりわかっている事はないけど、おそらくは災害や疫病。要するに日本でいう百鬼夜行、エジプトでいうアポピスによってもたらされたと考えられるわね。
私たちはスコーピオンキングさんを見送った後にニケ様に無言の圧力をかけたけど、意味なかったわ。
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