第111話 【7万PV感謝特別編】魔王様と焼肉の食べ放題と飲み放題と+α
天童ひなです。本日、近所の商店街のふくびきを引くと焼肉食べ放題招待券を貰ったので、魔王様と駅で待ち合わせです。焼肉なんていつ以来でしょうか……この前、吉牛で魔王様には引かれてしまったので、今回は引かないようにしないといけませんね。
魔王様が誰かと話をしてますね。凄いすらりとしたスタイルの良い女性? 妙に肌が白い……そして耳ながっ。知り合いかな?
「ま、魔王さまー」
「くはははは! ひなよ! 余はここである!」
魔王様のいるところまで向かうと、あぁ……この人は魔王様関係の人だと私は確信しました。何故なら……
「ダークエルフよ。こちら、ひなである。余のこの世界の住処である」
「このような人間の娘にのところに魔王様が? 人間の娘よ。私は魔王軍において雑用係のダークエルフだ! ゆくゆくは人間共を支配し、雑用を押し付ける者! 私の言う事は素直に聞いておいた方がいいと思うぞ? ふふん」
魔王様に話は聞いていたけど、魔王軍ってところは魔王様の信者みたいな人が多いっぽいですね。とにかく私にわかる事があります。このダークエルフさんは、多分……下っ端ですね。
「あの、今から焼肉の食べ放題に行くんですけど、よければダークエルフさんもどうですか?」
「焼肉ぅ? 肉を焼いて食べるのか? 野蛮極まりない食べ物だな? 魔王様、このダークエルフが作りしコカトリスのスープ等いかがでしょう?」
「くはははは! あれか、ダークエルフよ! やきにくは、貴様の想像を絶する美味さ故、共に来るとよい!」
「魔王様が仰るのであればさぞかし素晴らしい食べ物なのですね? 言い直すと素晴らしい響きでございます! 焼肉!」
ダークエルフさんの小言を聞きながら店舗に向かう私達、多分ダークエルフさん、雑用押し付けられて苦労してるんだろうな。そうこう言っている間に私達は焼肉屋さんに到着。
いつ以来かなぁ、楽しみだなぁ。
「三名様ですね! コースの方はどうなさいますか?」
私は上級国民の顔をして店員さんにこう言いました。
「す、スペシャルコースで、あとアルコールの呑み放題をつけてください」
言っちゃいましたよ。いつもケチって中間のコースしか頼んだ事がなかったんですが、この前ガールズバーの仕事中に金糸雀さんが、中間コースは店舗側が一番食べて欲しいコースだから実は一番消費者が損をしているとかいないとか……
「最初のお飲み物をお伺いします! あとはそちらのタブレットで注文してください!」
「生中を3つ」
「かしこまりました」
「どうしたひなよ? 本日は妙によそよそしいではないか? それに“はいぼぉる”ではないのだな! くははは!」
お待たせしましたと生中。ここはプレミアムモルツですね。焼肉には申し分ないビールです。その間に注文していた牛タンも届きました。ペラペラのではなく、スペシャルコースですので、厚切り牛タンです。
「では魔王様、ダークエルフさん乾杯しましょう! 商店街の福引にかんぱーい!」
「くははは! 乾杯である!」
「魔王様、人間の娘、乾杯!」
んぐんぐ、きゃあああああ! ビールおいすぃいい! これが何杯でも飲めるなんて夢みたいですねぇ。
「な……なんだコレは! 麦酒なのか……いいや、そんな、魔王様……いけない! 毒かもしれません」
なんか凄いテンションでプレモルの美味しさにやられているダークエルフさん、そんなダークエルフさんに魔王様はレモン汁をつけた厚切り牛タンを、
「くはははは! 余が食べさせてやろう! あーんをするといい!」
「ま、魔王しゃまぁ、こんなダークエルフめに……頂きま……あっ、あぁ、完全に魔王城の食事を……凌駕していますぅ」
私はさりげなく三人分ビールをお代わり注文。私も牛タンをいただきつつ。んまっ! ここで壺カルビを焼きながらソーセージと焼き野菜を一緒に焼きます。サラダを取り分けつつ、キムチで箸休めです。
「くはははは! ひなよ! かゆいところに手が届く、見事である! キムチうまし! くはははは! ダークエルフよ貴様も食べてみるといい」
さて、焼肉の食べ放題での最終定理と言われている。白ご飯を食べるか、食べないか問題。数々の識者達が議論を重ねてもその答え未だでずと言われています。私は……焼肉を白ご飯にワンバウンドさせて食べるのが、超好きなんです。
ちょきちょきと壺カルビを切りながら、私はお二人に。
「あの白いご飯を頼もうと思うのですが、お二人は?」
「くはははは! 喰う! ダークエルフよ。貴様も食すといい! 麦酒も良いが焼肉といえば白いご飯である! と一人で食事をする中年の人間の男が言っておった」
焼き野菜、そしてソーセージで一旦二杯目のビールを処理してしまうと、到着した白いご飯。それにいい感じで火が通った壺カルビをおかずに。
「んんっ! んまっ」
「うまい! 褒めて遣わす」
「あぁ、まおーさまぁー、おいしゅうございますぅ~」
もうダークエルフさん美味しすぎて泣いちゃってますね。分かります。それが日本食において最強のご馳走焼肉です。分かりますよ。ホットプレート、鉄板、網、BBQあらゆる場所で焼肉は食べられますがその全てにおいて私達を裏切りません。
「麦酒も良いが違う物は何かないかひなよ」
「そうですね。結構色々ありますけど、まっこりなんていかがでしょうか? 甘くておいしいですよ」
「うむ、ではそれを頼む」
「畏まりましたー!」
私がタブレットで注文をしているとまだ半泣きのダークエルフさんが「わ、わたしも、わた」と嗚咽まじりなので、私は「畏まりました。まっこりですね」とマッコリを三人分注文する。
さて、二周目です。まっこりと合わせるならやはりここはホルモン群ですね。ミノとレバー、それに海鮮物としてホタテとエビを注文です。
「まっこりは韓国版どぶろくってところですね! 違いはお米だけのどぶろくに対して、お芋やトウモロコシ等の穀物を使います。と、お酒博士の金糸雀さんが言ってました」
「くはははは! このまっこりなる酒、うまい! してよく話に出てくる金糸雀なる者。一度余の前に呼ぶといい! “はっぴぃあわぁ”をご馳走してやろう」
「ま、また伝えておきます」
何故だかわかりませんが、金糸雀さんと魔王様を引き合わせてはいけないような気がしてなりません。それに最近、金糸雀さん仕事終わりにお酒飲みに行ってないんですよね。もしかして、彼氏が? キャー! お邪魔したらダメですよね。魔王様、見てくれはかなりのイケメンだし、彼氏さんを怒らせてもダメですしね。
「さぁ、ホルモン系は焼き具合が難しいです! 魔王様、ダークエルフさん、もうそのミノ食べれますよ! レバーもいけますのでまっこりと合わせちゃってください」
子供の頃はおとーさんが焼く係だったなぁ。このミノがガムみたいでいつ飲み込んだらいいのか……
「くっ、こやつ! 焼かれても尚余に抵抗してきよる! くははは! 気に入った!」
「確かに全然なくならない無限のお肉ですね! 魔王様!」
「うむ! そのまま飲み込んでやったわ! そしてこっちの肉は逆に柔らかく、うまい!」
「なんだか、血の塊のような味ですね」
魔王様達も私達と同じ感性なんですね。ほんらいなら、わかめスープを頼んで焼いたミノをご飯に乗せてわかめスープをかけて即席クッパで食べたいところですが、魔王様にまた引かれそうなので、ここは我慢です。
「お酒、空きましたら頼みますよー! 私はビールです」
「私も麦酒でお願いできるかしら?」
「余はハイボールである!」
海鮮焼きもいい感じで焼けているのでここで追加のお酒を、エンドレスですね。休む暇がありません。
「これ、お肉でしょうか?」
「くはは! それはイカである! この世界における謎の生物である! そして余が食べているのがエビである。この世界の海にいる虫である!」
魔王様ぁあああ! そういう言い方されると食べにくいんですよぅ……まぁ食べますけど。あぁ、エビおいしぃ。そろそろお時間もいい感じになってきたので、シメから、デザートのフルコンボです。焼肉の食べ放題というものは、時間いっぱいまで好きな物を楽しんだ人が勝ちなんです。
「そろそろ食べ放題終了15分前です。シメに冷麺や石焼ビビンバ等はいかがですか?」
「くははは! 余は石焼ビビンバを食す! ダークエルフは辛いのはにが手であったな? 貴様は冷麺を食すとよし」
「私めの事をお気づかいいただくなんて……はい! 命をかけて冷麺なる物を食させていただきます」
「では私も冷麺で」
この間にもラストの1杯を頂きます。ここはベタに三人ともビールですね。しかし、魔王様もダークエルフさんも強いですねぇ。私、結構回ってるんですけど……石焼ビビンバはお店の人が目の前で作ってくれる嬉しい仕様ですね。
「辛さはどのくらいがよろしいでしょうか?」
「激辛でよし!」
「かしこまりました!」
魔王様は笑顔のまま汗をかきながら激辛石焼ビビンバを食べてます。辛い物も好きなんですよね。魔王様、時折ビールを飲みながら美味い美味いと作った人も本望でしょうね。かたや私達冷麺組は冷麺をオツマミとして付け合わせのチャーシューもキムチも麺にスープも楽しませてもらい。
「ふぅ、食べた食べた。かなりお腹いっぱいですね」
「くはははは! 余はまだ入るがな」
「わ、私も魔王様。もう入りません……」
そう、この状況でもう一品行くのが食べ放題のだいご味ですよ。私はタッチパネルを操作してコーヒーを3つ。そして、お二人にタブレット端末を見せる。デザートを食べなくて焼肉食べ放題を終えるだなんて誠、愚かの極みです。
食べ放題残り時間5分。滞在時間残り35分。食休みタイムを楽しむには……
「デザートどうしますか? ダークエルフさん、はじめてですと杏仁豆腐等おススメですよ」
「うむ、杏仁豆腐は美味いからな! 無理はするなよダークエルフよ」
「いえ、喜んでお受けいたします!」
「余はチョコレートケーキにチョコレートアイスである!」
「食べますねぇ、じゃあ私はシャーベットにしよー」
注文と同時に食べ放題の時間終了を知らせる表示がされる。私とダークエルフさんは、科学的に証明されている別腹にコーヒーとデザートを押し込んだ。そうです。私達は32.195キロのマラソンを完走するように食べ放題を完走しました。
その結果……
「も、もう動けない」
「うぷ、出そうですぅ」
ありがちな状況で30分動けないでいる私達に魔王様は笑顔のままだけど、こう一言を残しました。
「貴様ら、見苦しぃい!」
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