第68話【4万PV感謝特別編】魔王様と築地銀だこ定番たこ焼きとハッピーアワーと

 ひょんな事から魔王様と暮らす事になった天童ひなです。最近凄い気になる子がいます。男性じゃなくて女の子なんですが、オレンジ色のセミロングの髪に学生服みたいな服を着てそれにマントをしている変な子なんです。私は夜の仕事を掛け持ちしているので朝は寝ていて昼から行動をするのですが、たまにスーパーやドン・キホーテとかでその子とすれ違います。少し古いスマホで漫画アプリを使って漫画を読んでいるようなんですが、それが“魁!!男塾”だったり“テルマエロマエ”だったり“昴とスーさん”だったりジャンルは問わないみたい。もしかすると魔王様の知り合いかもしれないなと私はこっそり彼女を撮影。

 本日は魔王様が築地銀だこでハッピーアワーを楽しみたいというので八重洲出口で待ち合わせ中。


「くーはっはっは! 余をスカウトしたい? 面白い冗談である! が、余がスカウトされると余の帰りを待つ可愛い家来共が露頭に迷う故、余が丁重にごめんなさいと!断ってやろう!」


 魔王様、今日もホストクラブやら芸能関係のスカウトを受けているみたいです。喋り方と態度はアレだけど、びっくりするくらい綺麗な男の人ですから、正直並んで歩くのが嫌になるくらいです。


「ひな! 余はここだ! くはははは! 余を待たせおって! 憂い奴め!」


 そして悪ガキみたいな笑顔で手を振り待っています。一応、ストーカーから私を守ってくれた恩人でもあるんですよね。本日は手に魔王様は何か封筒を持っています。


「この世界の金子であろう? ありがたく受け取るといい!」

「えっ! このお金なんですか?」

「くはははは! “もでる”とやらをした礼で貰ったものである! 出された“べんとう”なる食い物も実に美味であった!」

「えっ、これ魔王様がお仕事したんですか? じゃあもらえな……」

「皆迄言う出ない。余が出した物を引っ込めよと貴様は無粋を申すのか? ならばそれで“はっぴいあわあ”を楽しもうではないか! 余の奢りである。残った物はとっておくとよい! 余は先ほどその金子で“けんこーらんど”なるところを楽しんだ故な! くーはっはっは!」


 魔王様はいつでも笑っている。

 何故なら支配者は笑っていないと家来が心配になるからだそうです。きっと魔王様みたいなパリピだらけの人たちなんでしょうね。魔王軍。今日お仕事休みだし、たまにはハッピーアワー以外に魔王様に楽しんでもらうのもいいかもしれないですね。


「魔王様ってクラブとかって言って音楽のイベント興味ありますか?」

「渋谷と新宿のチャラ箱も音楽箱もどちらも行ったが悪くはなかったな! くはははは!」


 経験済みなんですね。さすがです。私でも付き合い以外でいかないのに、私が仕事をしている間、ネトゲをしているか東京の街を徘徊しているらしいんですが、私以上に東京人やってますね。


「がしかし、ひなと行くはっぴぃあわーの方が楽しみであるぞ!」


 ほら、しかもそんな事を言ってくるし……悪い意味で裏表ない魔王様は絶対に私の知らないところで色々勘違いさせてそうなんです。

 とはいえ、たこ焼きをご所望なので、


「つきましたね。魔王様、お酒どうしますか?」


 ハイボール酒場と銘打っている築地銀だこの八重洲地下街店ですが、魔王様は、プレミアムモルツ290円ではなく……


「角ハイボールを飲もうではないか! ひな、貴様の好む酒であったであろう?」

「1杯100円で安いからですよ」

「うむ、それもまたはっぴぃあわーのだいご味であるな!」


 という事で私達は定番の“ぜったいうまい!!たこ焼き”とウィンナー5本盛を頼みました。そう、この八重洲地下街店はたこ焼き屋というより半分居酒屋形態の銀だこなんです。


「角ハイおまたせしましたー!」


 店員さんが丁寧にトンと置いてくれるので、魔王様もご満悦。魔王様がジョッキを持ち上げたので私も、


「では乾杯である! くーはっはっはー!」

「魔王様、乾杯!」


 角ハイボールは裏切らないですね。本当に安定して美味しいです。魔王様もご満悦です。


「くはははは! 美味い! 角ハイ、褒めてつかわす!」


 はぁああ! 美味しい。たこ焼きよりも先にウィンナーが到着したので、5種類を半分に切ってあげると魔王様はギザギザの歯を見せて頷く。


「おぉ! 肉汁が滴ってうまい! ウィンナーは余が大好きである! くはははは! 角ハイがより際立つな!」

「そうですよねー! ウィンナーとハイボールやビールは鉄板ですよー!」


 魔王様、お酒凄い強いんですよね。ご本人曰く、各種状態異常の耐性があるとか訳の分からない事を言ってますけど、だからと言って無意味に飲み続けるわけでもなく食べ物とお酒をゆっくりと楽しんでいるので、こういう飲み方見習わないといけませんね。


「うまい! くははは! 角ハイお代わりである!」


 お店の人が畏まりましたと角ハイと共にたこ焼きを持ってきてくれるので魔王様の表情が明らかに緩む。

 そう、本日はたこ焼きを食べにきたんですもんね?


「そうだ! 魔王様、この子知り合いだったりしますか?」

「む? おぉ、それはミカンではないか! ねとげで知り合った者である。この前のおふ会なる会議でも意気投合してな。自らを勇者と名乗る面白い奴である! 来週の日曜日に再びこやつとパーティーの者共とおふ会である」


 ははーん、凄い可愛いけどオタク系の女の子ですか、最近のオタクは男子も女子も見栄えがいい人多いですもんね。という事はあれはコスプレですか、秋葉系や原宿系だと思うと確かに違和感ないですね。


「そうだったんですねー! 私も角ハイお代わりおねがいします!」


 もしかして魔王様、私の世界であおはるですか? ちょっとドキドキしますね。ふふふと笑いながら私はたこ焼きを一つ。


「あちち! はふはふ」

「くはははは! 口の中がゲヘナで焼かれたような熱さである! そしてこれは狂いなくうまい! 銀だこ、我が魔王城に欲しいぞ!」


 世の中には幸せの形ってあるんですけど、たこ焼きとハイボールの組み合わせはその一つだと私は思います。


 魔王様は3杯目の角ハイを頼み、私もそれに続いていると、


「ひなよ。飲みすぎるでないぞ? 酔って手が付けられなくなる者は魔物も人も醜いからな! 余の家来のデュラハンの奴が酔って身体だけで帰って来よってな! あれは余も大笑いであった! くはははは!」


 とまぁ、この前の失敗を間接的に叱られているようで少し反省です。たこ焼きを実に美味しそうに、それも上品に食べて角ハイを飲む魔王様。魔王様のバイト代、ここのお支払いをしても2万くらい残りそうなので返そうとするとアレなので、


「魔王様! 来週の日曜日のお小遣いです!」

「それには及ばぬ! 来週のおふ会の支払いは既に済んでおる! 余は出銭は好かん! くははははは! 余は賢いからな!」


 という事なのでありがたく生活費にさせてもらいます。魔王様は明太子の入ったたこ焼きを注文して、


「くはははははは! この熱さ、病みつきになるな!」

「あっ! これ超おいしーですね! おにーさーん、角ハイお代わりお願いします!」

「あーい、ちなみにハッピーアワー終わりですけどどうしますかー?」

「魔王様、お代わりは?」

「くはははは! 終いだからと言って慌てて頼むのは美しくない! これらを処理したら帰る! そして次回を楽しみにしようではないかひな!」


 お支払いを終え、帰りの電車の中で魔王様は子供みたいに外の景色を眺め、ニコニコしている。そして突然、私の肩をガバッと抱いて、


「えっ、なんですか? 魔王様」

「あそこに城がある! あれだ! ひな! あそこにいくぞ! 領主に挨拶を余がしに行ってやろう! くははははは!」

「あ……魔王様アレは!」


 周りの人たちの視線が死ぬほど痛いです。完全にラブホですよアレは……魔王様、凄い私たちが公衆の面前でそう言うの気にしない頭悪いカップルみたいじゃないですか……

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