第350話 ケートスとマグロの酢豚風と氷結無糖梅7%と
「さざんくろーすさえーこえーていける。ペーるせーうす!」
ミカンちゃんがどこから買ってきたのか、昭和時代の花見とかで使われていた一人用カラオケで島谷ひとみさんのペルセウスを突然歌い出したわ。
確かにペルセウスって勇者の事で、おそらくそれを元にした歌詞だもんね。
いい歌だと思うわ。
でも、マンションでカラオケすると超、迷惑なのよね。
ガチャリ!
えっ? このタイミングで? ニケ様とかセラさんかしら? 私が玄関を見に行くと、激おこっぽい。サメっぽい子がいるわ。サメっぽいってのは言葉の通りでサメっぽい歯をしてて三白眼で雨ガッパみたいな服を着てる子ね。
「ここからペルセウスって聞こえたんだけど!」
「おこなの?」
私は死語で聞いてみたわ。
すると、サメっぽい子は。
「おこじゃないけど!」
「そうですか、私は犬神金糸雀。この家の家主です」
「あーしはケートス。ペルセウスのカスをぶち殺す為に探し回ってるけど」
ペルセウスさん、何したのかしら? というか、ケートスさんがハイパー地雷かもしれないけど……
「のろい、のろわれたーみらいはー!」
次はYOASOBIさんの祝福歌ってるわ。
デュラさんは超能力でタンバリンで煽って、ほんと異世界の人ってお祭り好きよね。というか、ミカンちゃん、歌が上手いというよりあざとい女子の歌い方ね。
「みんな、ケートスさんいらしたわよー」
私がそう呼ぶと、ミカンちゃんは歌を止めて、「勇者なりっ! 好きなガンダムは水星の魔女のキャリバーンなり!」と、デュラさんは「魔王軍のデュラハンである! 好きな戦艦はVガンダムのバイク戦艦であるな!」
「ケートス。好きなモビルタンクは機動戦士ガンダム MS IGLOO - 1年戦争秘録 -のヒルドルブだけど」
「うおー! 渋いなりっ!」
「うむ、ケートス殿とは仲良くなれそうであるな!」
なんでケートスさんがガンダムを知っているのか分からないし、この世界の私の方が話についていけないとか意味不明ね。
「金糸雀は?」
「えっ? わからないんだけど、あれかしら? 小栗旬さんがゴジラとキングコングと戦ってたやつ?」
「あれはメカゴジラなりっ! 釈由美子のメカゴジラならエヴァの使徒を倒せり!」
「知らないわよ。ケートスさん、今から私たち晩酌なんだけどよかったらご一緒にどうですか?」
「別にいいけど」
じゃあ、作りますか! 西日本の給食で大人気だったマグロの揚げ煮を使った酢豚風を作ろうと思っているのよね。私はマグロを取り出すと、それをサイコロ状に切っていく、「デュラさーん、お野菜切ってもらえる?」「おけまるであるぞ!」とミカンちゃん用語が返ってきたわ。
そんな私たちの調理をじっと見ているケートスさん。
「つな?」
「はい、ケートスさん。マグロ好きなんですか?」
「つな嫌いな生き物いないけど」
まぁ、マグロ嫌いな人に確かに会った事は今のところないけど、多分いるでしょ。ケートスさんがそのくらいマグロ好きって事みたいね。よかったわ。
「つなを沢山食べて、プルセウスすり潰さないと」
「そんな嫌いなんですか?」
「恋人を取られたけど」
えっ、結構重い話になってきたわね。私は、ケートスさんがじっとマグロを見つめている横でサイコロ状になったマグロを牛肉みたいにする給食のおばさんの秘技!
おろし生姜、こいくち醤油、料理酒の代わりに私の自家製梅酒、これらを混ぜたつけ液にしばらくつけて味を染み込ませるわ。この間に、煮付け液も作るの、砂糖、こいくち醤油、これまた私の自家製梅酒、みりん。
片栗粉をつけてジュワっとサイコロマグロを揚げていく。そして煮付け液の中に次々投入して煮付け液を絡めた後は白胡麻を振って完成! 給食だとポテトとニンジンの素揚げもついてめちゃくちゃ美味しいのよね。
でも! 私はここからもう1段階進化させるわ!
「デュラさん、準備はいい?」
「いつでも構わんであるぞ!」
中華鍋をスタンバッテるデュラさん、私はサイコロマグロの揚げ煮を半分、デュラさんに渡すと、デュラさんは玉ねぎ、ニンジン、ピーマン、筍と一緒にサイコロマグロを使って酢豚風を作ってくれるわ。
二品完成。
「今日のお酒は、料理に梅酒を使っているので、合わせて氷結無糖の梅7%よ」
全員に氷の入ったグラスと氷結の缶を渡すと、トクトクトクと氷結無糖梅7%を注いで、
「それじゃあ! ケートスさんが恋敵に勝てますように! 乾杯!」
「乾杯なりぃ!」
「乾杯であるぞ!」
「プルセウス許しまじ、乾杯!」
グラスをコンと合わせてグイッと氷結を飲む、あぁ! この最近の無糖って無糖じゃないのよりドライで美味しいの絶対メーカー側気づいてないわよね。
「ぷひゃああああ! うみゃあああ! 勇者歌う!」
“君と私は、仲良くなれるかな?
この世界が終わる前に“
次はAIさんのアルデバラン歌い出したわ。
「勇者は歌上手であるなー!」
「勇者、歌上手いけど」
うん、なんだろう。カラオケレベルだけどね。まぁ、私はひと前で歌を歌うことなんて恥ずかしいからしないけど、さすがミカンちゃん勇者よね。
ミカンちゃんのオンライブが終わる頃には私たちは二缶目に突入、そしておつまみタイムね。
「マグロの揚げ煮とマグロの酢豚風食べましょ!」
みんなまずはマグロの揚げ煮から、それにしても異世界組、お箸の使い方上手くなったわね。ケートスさんはフォークね。
三人がマグロの揚げ煮をパクりと口に入れて咀嚼。すぐにミカンちゃんの表情が変わり、デュラさんも感嘆。
そしてケートスさんは、
「金糸雀、つなに何をした?」
ふふん、もうお肉でしかないでしょ? それも獣の、その癖臭みもなく、脂なんて全然胃にもたれない。
「日本の学校って馬鹿だから、獣のお肉よりお魚の方が健康にいいと思ってるところがあってお魚至上主義なのよ。まぁ、それぞれいいところがあるけど、実際魚の方が体には悪いのよね。プリン体多いから。そんな事を一切考えない学校が魚料理を色々と開発した結果、生み出された子供達を笑顔にする究極のマグロ料理、それがこのマグロの揚げ煮! 私も子供の頃、給食でこれが出る日はテンションが上がったわ」
※バランスよく肉も魚も野菜も取るのが一番ですが、肉、魚、野菜の順番で体にいいです。意外にも野菜の栄養価は殆ど体は吸収できないのが現在分かっている事実です。
「うんみゃあああああああ! これ、魚? 肉? 勇者、混乱せし!」
「おぉおお! 日本は擬態系料理が多いであるが、これは完成系であるな!」
精進料理の事かしら? そりゃ調理方法も、料理の種類も味も、日本の料理レベルは他の世界より10年は先に進んでいるもの。私が高校の頃、ホームステイ先で飾り切りを披露したら近所の人全員が見にきたくらい、一般人の包丁レベルも日本は進んでるわね。
「デュラさんが味付けしてくれた酢豚風も死ぬほど美味しいわよ! さぁ食べましょう。氷結ない人言ってね! 冷蔵庫にいくらでも入ってるから」
という私も4本目。これ、美味しすぎでしょ!
そして4本目は無糖の氷結に私の自家製梅酒を入れて糖質有り+度数をブーストしちゃう。
「かなりあだけブーストずるし! 勇者も!」
「我も我も!」
「あーしもだけど」
という事でみんなにショットグラスで私の梅酒を提供よ。ブースト後は梅感大幅アップに度数は3度プラスくらいかな? 10度のストロング氷結に早変わりね。
酢豚風をいざ実食! 歯ごたえのある野菜とマグロ揚げ煮がめちゃくちゃいい味出してるわ。そこにすかさず氷結梅を……
「くぅ、こたえられん!」
もしゃもしゃと三人は酢豚風と氷結を楽しんでいる中、ミカンちゃんがカラオケセットを私に差し出してくる。
「えっ、いやよ。私は歌は歌うんじゃなくて聞く側なんだから」
「かーなりあ! かーなりあ!」
「金糸雀殿! 金糸雀殿!」
「歌うしかないと思うけど」
再生を始めたカラオケセット。
yamaさんの偽顔。歌えるかな。
「Eyes eyes on me」
ちょっと私の方が声高いかもなぁとか、氷結梅7%を飲みながら一曲披露したわよ。カラオケなんて何年ぶりかしら。
「「「!!!!!」」」
えっ? 音は外してないと思ったけど、変だったかしら?
「かなりあうめー! すげー」
「うむ! Yamaがそこにいるかと思ったであるぞ!」
いやいや、言い過ぎ。
「金糸雀」
「ケートスさんどうしました?」
「しばらくここに住もうと思うけど、次の歌歌えばいいと思うけど?」
えっ? 久しぶりに同居人が増えました。上手いと言われたら少し照れるけど悪い気はしないわね。
じゃあ。
「Mrs. GREEN APPLEのmagic 歌おうかな」
ワイワイと楽しそうにしている私たちを遠くから悲しそうに眺めているニケ様を私はどうしたらいいのか、次の曲を選びながら考える事にしたわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます