第62話 スケルトンとケンタッキーフライドチキンとウィスキー水割りと
とてもジャンクな物が食べたい。給料日だし、ミカンちゃんの入れてくれるお金もあるし、お金はあるんや!
というエセ大阪人のような私は女優さんや俳優さんが、今日、ケンタッキーにしない?
とか言うCMを見て無性にケンタッキーが食べたい気分なの。しかもあの馬鹿でかいバケツに入っているやつで。
「勇者、自分で脱いだ物はちゃんと脱衣籠に入れぬか!」
「また後で着るー!」
「全く、年頃の娘がはしたないであるぞ! その点、金糸雀殿を見てみるといい! いつも三本線の入った服をきちんと着こなしているではないか!」
三本ラインのジャージね。
やめてデュラさん、それ以上言われると私泣いちゃう。ドンキで上下2980円だから3セット持ってるだけよ。これでも大学に行く時はギリギリそれなりのお洒落してるんだから!
というか大学も制服にしなさいよ! 私みたいにプアーピーポーが可哀想じゃない!
じゃなくて、今日のお昼ご飯はケンタにするの。
「ねぇ二人とも。今日、ケンタッキーにしない?」
うふふ、言っちゃったわ。
「……てれびの中の人の言ってるやつー」
「うむ、あの鳥の巨大な揚げ物であるな。して、金糸雀殿。何故、あのテレビなる箱の中の人間と同じような言い方を? そう言って食べる物であるか?」
……んんっ。ちょっと恥ずかしくなってきたわ。こう言う気分を変えてくれるお酒はもうジャンクなのいっておこうかしら、ストゼロよりも飲みやすいのがあったわね。とりあえずケンタをスマホで注文。オリジナルチキン20個。ポテト、ビスケット。
ガチャガチャ。
「いらっしゃー……ん?」
私の目の前に現れたのは、骨。人骨。でも盾と剣を持ってるわね。多分モンスターなので、「デュラさーん、お知り合いですかー?」って聞いてみると、首だけのデュラさんが飛んできて、
「おぉ! これはあれであるな! リッチー殿の軍の先兵のスケルトンであるな!」
コクン、コクンと頷くスケルトンさん。どうやら喋れないみたいね。まぁ、声帯もないもんね。私はスケルトンさんにお辞儀をして、
「私は犬神金糸雀です。この家の家主です。今からお昼飲みなんですけど……流石に飲食はできないですかね?」
口はあるけど、全身骨だしすっからかんだから……と思ったら、スケルトンさんはブルンブルンと首を振ってジェスチャー。
「酒は大好きであると言っておるな! まぁ、魔物で酒が嫌いな奴もおるまいよ! はっはっはー!」
うん、そこじゃないのよね。今まできた人は食べ物を食べれる構造をしてたのよ。例外もあったかもしれないけど……
そんな時、スケルトンさんが兄貴のリカーラックを指差したの。指差した先はウィスキーのホワイトホース。決してお値段は高くはないブレンデッドウィスキーだけど美味しいのよね。
当初予定していた某酎ハイじゃなくなったけどまぁいいか
「こちらですか? 飲み方どうしましょう?」
「勇者ハイボールがいいの!」
「うむ! 揚げ物であるからな! ハイボールで良いであろう」
スケルトンさん、人差し指を振るとチッチッチと振る。そしてデュラさんが翻訳してくれる。
「金糸雀殿、少しだけストレートで一口舐めたいと申しおるが?」
「あー、はい。構いませんよ!」
ショットグラスで差し出すとスケルトンさんはそれを口にする。なんと床に溢れる事なくシュン! って消えた!
そして何度かコクンコクンと頷くと、デュラさんにカチカチと何かを伝えて、
「この残りで薄めの水割りにしてほしいと言っているである!」
薄めの? いまいち私は理由が分からなかったんだけど、ミカンちゃんとデュラさんにはハイボールを、私とスケルトンさんは薄めの水割りで、
ぴーんぽーん!
「ケンタきたのー! 勇者が取りに行くー!」
とミカンちゃんが嬉しそうに大きなケンタッキーのバケツ(バレル)を抱えて戻ってくる。多分、これだけでも購買意欲を上げれると思うのはミカンちゃんがクソ可愛いからなのね。
「では、ケンタッキーを食べる日に! 乾杯!」
「「乾杯!」」
カクンカクンと体を鳴らすスケルトンさん。きっと乾杯! って言ってるのね。水割りってあんまり私飲まないんだけど……
「あっ! ヤバ! これ美味しい! ホワイトホースは心の何処かでハイボール専用みたいなイメージあったんだけど!」
カチカチカチカチとスケルトンさんが私に何かを言っているのでデュラさんをみると、
「香りと味からここは素直に加水して楽しむのがいいのではないか? と言っておるな! と言うかこのスケルトン、妙に話すであるな。しかしそこまで言われると我も水割りで頂きたいところである」
そう言ってぐっと飲み干したデュラさんが自ら超能力でホワイトホースとミネラルウォーターをステアし一口。
「……確かに! この酒はハイボールより水割りであるな!」
ミカンちゃんは炭酸が好きなのでそこには興味を示さずに「これ食べていい?」と上目遣いで私に聞くので、
「そうね! みんな食べましょう!」
スケルトンさんには食べやすいドラムをと思ったんだけど、腰の部分であるサイを所望したのでそこを、ミカンちゃんは持ちやすいドラム、デュラさんは手羽、私はキール。
別にタイミングを合わせたわけじゃないのに、いっせーのせ! でかぶりついた私たち。
「はぁああ、美味しいい!」
「ウマー! 謎の味がする鳥のでっかい唐揚げウマー!」
「うむ! 動画サイトでもこの味を再現しようとする挑戦者が多く、我も一度食してみたかったである!」
カキカキカキカキとスケルトンさんもチキンを食べては水割りを飲んで美味しいという表現を体一杯使って教えてくれる。
「好きに楽しんでくださいね!」
それにしても、ほんとケンタッキーのチキンとホワイトホースの水割り合いすぎでしょ! 時折ポテトを食べたり、キャベツを刻んで即席コールスローを食べてみたり、
「スケルトンさんおかわりですね! はい、どうぞ! 薄めでーす!」
私は濃いめで飲もー! なんか口の中の脂っぽさを綺麗に流してくれるような健やかなウィスキーね。ハイボール専用だと思っててごめんなさい! そういや兄貴がハイボール専用は角と陸とジョニ赤って言ってたような気がするわ。
ミカンちゃんが、ビスケットを見つけたわね。
ケンタッキーの謎のサイドメニュービスケット。メープルシロップをかけて食べるのは日本だけとか聞いたけど実際どうなのかしら?
「勇者、パン食べるー!」
「ミカンちゃんそれはパンじゃなくてビスケたんよ! それにメープルシロップをかけるのを忘れないで! ウィスキーのおつまみになるから!」
べったりと塗りたくってミカンちゃんは頬張る。もぐもぐと、もぐもぐと、あっ! 口の中がパッサパサになったみたいね! 慌ててハイボールで流し込んでる。
かーらーの!
「うみゃああああああああ! これスキー! 勇者スキー!」
はい、うみゃああいただきました。ミカンちゃんの絶叫を聞いてデュラさんとスケルトンさんも挑戦。二人はゆっくりと食べて、
「ほぉ! 甘くて美味いであるな! 口の中の水分が急速に奪われるが」
カチンカチンとスケルトンさんも同意してるみたい。なんだか酔いが回りにくい水割りを飲みながらお腹一杯にケンタッキーを堪能する私たち。
でも流石に二十個は頼みすぎたわね。一人3個程食べてから手が止まり出したわ。基本的にケンタッキーの食べ物って口の中の水分を持っていかれるのよね。美味しいけど、
カクンカクンとスケルトンさんは立ち上がると古びた剣の鞘の中から一枚の金貨、もう異世界の金貨だなんて……まさかの、
「え、エリザベス二世の金貨!!! なんでこんな物」
「それは野暮なので私は行きますとの事である! 知っている金貨であるか?」
知っているも何も、私の世界の金貨よこれ! しかも何十万かする奴じゃ……
スケルトンさんは雑魚モンスターとは思えない風格で親指を立てると私たちにご馳走様をして帰って行った。
そのわずか5分後。
「こんにちはー! あらいい匂い! ニケ来ちゃいました! この美味しそうな食べ物食べていんですかー?」
と地球の食べ物に興味津々な女神のニケ様がやってきて、もう私たちはお腹一杯な状態で乾杯をさせられて、ケンタッキー地獄に付き合わされました。
もちろん、その後に絡み酒のお説教タイムです。
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