第95話 墓守とタルタルチキン南蛮バーガーとブルックリンラガーと
皆さんは“ライフ“と言うスーパーをご存知かしら? 気がつくと存在している都市伝説のような存在と言うのがいいのか? アレ? こんなところにもライフが! と言う最近東京で増殖気味のスーパーなのよね。大阪発祥で東京進出後店舗数を二大都市集中経営。生活必需品のワンストップ戦略で難しい時期も生き残ったの。経営学を大学で学んでいる私としてはお手本のような経営戦略をしている為ちょくちょく使うのよね?
で、当然お惣菜コーナーがあるの。まぁ、私は半額とかしか買わないんだけど味は至ってスーパーだからこんなもんかなという可もなく不可もない感じなんだけどお水とか買いに行った時にたまに出来合いを買おうかなと思って覗いた時……
「“具沢山タルタルチキン南蛮“と……」
くっそ、うまそー! 鶏肉なのでヘルシーで大喜び、デュラさんはこの至宝の味付けに感動するだろうし、ミカンちゃんはうみゃああだろうし……しかし、一人前四百円は痛いわね。
よーし、作るか!
こんな金持ち(私の主観ね)がいくスーパーから都内に何店舗かあるクソ安いスーパーの“ロピア“へ。
鶏もも肉、100g80円の破壊力よ。これと卵インフレが起きている今でもタイムサービスで売ってる卵を一パック100円で買えば。なんとご来店する異世界の人と、自称勝利の女神様が来ても全員分作れちゃうわ!
その差額お惣菜で買うと1400円くらいの節約ね!
「うん、我ながら素晴らしいチョイスね! お酒は兄貴の部屋に売る程あるし、ここはビールかしら? それも結構お値段が張るのを……」
「二人ともー! ご飯できたわよー! 飲みましょう!」
ミカンちゃんはIKEAのサメのぬいぐるみを引っ張りながら目を擦ってやってくる。昨日、徹夜でネトゲしてたわね。デュラさんの方は……
「うむ、空活けであるが最初はこんなものであるな!」
生花を最近通信講座で学んでるのよね。多分、私以上に花嫁修行は完成しつつあるわね。
「二人とも、本日はタルタルチキン南蛮を手作りバンズで挟んだタルタルチキン南蛮バーガーよ! それにお酒はこちらです!」
ガチャリ。
来たわね異世界からの来訪者さん。私は自らそこに向かうと……
「あら、冒険者さんかしら?」
「ここは? ファフニール様の魂を諌める為に聖地の掃除をしていると見知らぬ扉があったので開けるとここに……僕は竜の墓守。アルカンと申します」
若い男性。まだ男の子って面影がある……まぁ有り寄りの有りね。
墓守さん、墓守さん。誰かの遺族とかではなくて土地管理者みたいな人ね。ほんとなんか久しぶりに普通の人来たなぁ。
「アルカンさん、ここはそうですね。なんか色んな種族や人々がやってくる私、犬神金糸雀の家です。それも決まって一杯やろうとした時に来られるのでビール……麦酒でしたっけ? 飲んでいきませんか?」
「えぇ? 何言っているんですか……ちょっと意味わかりません」
うん、私も随分毒されたのかもしれないわね。そりゃそうよね。普通に考えたら私ヤベェ奴みたいじゃん。
「えっと、まぁ上がってください。居候の二人を見れば分かります」
「は、はぁ……お邪魔します」
アルカンさんがリビングに入ると、ミカンちゃんが勇者の剣で鮭とば削って食べている姿だったり、デュラハンの首だけのデュラさんが花瓶にお花を活けている姿を見てフリーズした。
そう、普通はこういう反応するのよ! 今までの人たちがちょっと異世界慣れしすぎてたのよ。
しばらくして現状を理解したアルカンさんは凄い畏まった表情で……
「あの……勇者とか魔物とかって……本当にいるんですね」
えっ! そこ! と思った私に対してデュラさんが説明してくれたの。
「あー、貴殿墓守であろう? それも相当名の知れた者の聖地と見受ける。そこから動く事のない世捨て人に近く、そして聖域故魔物も近寄らぬ故、初めて見たのであるな!」
そういう事! そんな事あるんだ。するとアルカンさんはとんでもない事を口にした。
「えっ、という事は僕が守っている聖地のファフニール様って本当にいるんですか!」
あははは! 信じてないのにその仕事してたんだぁ! 心の中でひとしき笑ったところで飲みますか!
「なんか新鮮なアルカンさんに! 本日はかなり苦味が強いブルックリンラガーよ! まぁまぁ市販品では高級ビールね。じゃあかんぱーい!」
異世界も共通のかんぱーい! と缶のままグビりと飲み干し。
「くぅううう! うまぁ! これだぁ!」
「おぉおおお! これは攻めてくる麦酒である!」
「うきゅうううう! つよつよなのぉ!」
と私が小さなガッツポーズでブルックリンラガーを飲み干しミカンちゃんとデュラさんも吠える中、アルカンさんはくぴりと飲んで、
「ふぅ、美味しい。そして皆さん大袈裟ですね」
なんかアルカンさん面白いわね。世捨て人すぎて麦酒がどれだけ美味しいかもあんまり分からないのかしら。
「はい! おつまみはタルタルチキン南蛮バーガー。そのまま摘んで食べれますからアメリカンにどうぞ!」
「うおー! うおー! 勇者、ハンバガー好きー! かなりあーハンバガーも作れるのすげぇ!」
まぁバンズくらいは丸いパン作るだけなので薄力粉と強力粉にイースト菌あれば誰でも作れるわよ。まぁ、私が作るのは美味しいと自負してるけどね。
さぁ食べなさい。アルカンさんは反応薄めかな?
「うんみゃあああああああああ! これつよつよ!」
はい、ミカンちゃんありがとう。
「ジャンクさの中に手作りながらの繊細さを味わえる金糸雀殿、脱帽である」
はい、デュラさんありがとう。
もふもふとアルカンさんは食べて、何度か頷く。いやでも本来反応ってこんな感じよね。
「金糸雀さん」
「はい?」
「美味し過ぎて腰が抜けました……さっきの麦酒といい。行商人の方がたまに売りに来る物と比べても遥かに物が良すぎ……もしかして金糸雀さん、ファフニール様?」
「違います。でも良かったです。アルカンさんは静かに感動される方なんですね。さぁ、タルタルチキン南蛮バーガーを齧って口の中にいる間にブルックリンラガーを」
私達はモスもマックもロッテリアもセットとビールを合わせるので一番体に悪そうかつ美味しい食べ方はやはり豪快にいきたいわね。
私たちは同時に満足に至るの。
甘辛いタレにタルタルソース、ビールが加わった時の相乗効果はもう無言になるわね。ミカンちゃんは三つ目のタルタルチキン南蛮バーガーを食べ、私たちはブルックリンラガーを次々に空の缶を積み上げていく。
「お腹一杯!」
「食った食ったなのぉ!」
「我、腹はないが満足である」
「美味しすぎる……」
行儀悪くリビングにひっくり返る私たちは笑い合う。美味しい物と美味しいお酒をお腹一杯食べて牛になるくらいすぐに横になる。最高に気持ちいのよね。
ガチャリ、あぁ……ニケ様ですかぁ。
「適当に入ってくださいどうぞ」
「えぇ……は、入っていいんですかぁ……じゃ、じゃあ! えい!」
ん? 知らない声ね。なんかよわよわな感じの声の主、私がやや呆れている中、ミカンちゃんが立ち上がり、腰のナイフ、もとい勇者の剣を握り、デュラさんが冷や汗をかいている。
これってレヴィアタンさんが来た時と同じ……
「こ、こーん・にーち・わー! 人間と勇者と悪魔と、私の可愛い墓守。破滅のドラゴンファフニールです! 初めまして」
どこかいいところの英国お嬢さん風なガーリーな格好をした破滅のドラゴン来ちゃったわ……
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