第13話 サンタクロースとパーティーとモエ・エ・シャンドン ロゼ アンペリアルと
「引越し前祝いか? 金糸雀殿」
「デュラさん、今日はね? クリスマスよ!」
「苦理済ます、とな? 何やら騎士道に通じる良い言葉だな」
そう、本来クリスマスといえば、みんなケンタッキーのフライドチキン食べるんでしょ? ケンタッキーのフライドチキンなんてね! 超金持ちが食べる食べ物なの。実家住まいの時パパとママがクリスマスパーティーをしてくれたのがどれだけお金かかっていたか一人暮らしをして知ったわ。
「クリスマスは、この国、いいえ。この世界の玩具メーカーとチキン専門店と、ケーキ屋さんとコカコーラ社が仕組んで民草にお金を落とさせようと企んでいるお祭りですね」
「ほぉ! 魔王様に是非、紹介したい奇祭!」
「はい、その奇祭では鶏肉のフライとケーキと美味しいお酒を飲んでプレゼントをサンタさんという方に貰えるお祭りなんですよ。私にはケンタッキーのバケツを買う財力がないので、自家製の唐揚げですが、カーネルサンダースのおじいさんに匹敵する味だと自負しています!」
「サタンさん、なんとも素晴らしい響き……」
なんか聞き間違えたような気がするけど、
気にせず。
はい! 犬神家の簡単に超美味しい唐揚げの作り方。鳥の胸肉を適当に切り分けます。醤油、味醂、お酒、そしてチートアイテム味の素、ニンニクチューブ適量、ナツメグ、七味を入れて適当に30分程漬け込んでおくの。
「油をそんなに、貴重な物ではないのか?」
「フライヤーよりフライパンで揚げた方が沢山揚げられるので今回はクリスマス仕様という事で、貴重なサラダ油をフライパンの半分くらいまで入れて片栗粉で揚げます!」
その間にですね……今日、呑むお酒は……兄貴のアイリスオオヤマのワインセラー……の後ろに隠されていたもう一つのワインセラー、コンプレッサー式のお高い何か、その中に入っていた……
シャンパン達。
兄貴は言った。リカーラックの一番上と一番下以外はなんでも飲んでいいと。明らかに隠してあったこのワインセラーだけどこれは飲んではいけない範囲に入っていない……
ということで、兄貴、いいえ! お兄様、いただきます!
「モエ・エ・シャンドン ロゼ アンペリアル! デュラさん、今日くらいちょっといいお酒飲みましょう!」
ガチャリ!
来たな! 異世界の誰か……、さぁ今日は
「メリー・クリスマス!」
真っ赤な衣を着た、白い髭のおじいさん来ちゃったよ。
まさかの……
「サンタさん! デュラさん、サンタさん来ましたよ!」
「おぉ! この奇祭の……首だけで申し訳ない。悪魔の侯爵、デュラハンと申す」
「パーティー前かな? デュフフ! おぅ! それに美味しそうな……」
モエ・エ・シャンドン ロゼ アンペリアルをじっと見つめてコホンと咳払い、あー、はいはい!
そうみんなで飲もうと発掘したのよ。
「サンタさん、お酒飲みますか? とか言いましたけど、今から子供達にプレゼント配るんですよね」
「ダイジョウブ! ダイジョウブ! サンタさんくらいになるとね? ちょっとお酒入ってる方がイインダヨ!」
本当かよ……まぁ空飛ぶソリに飲酒運転が適用はされないんだろうけど……まぁいいか……
ワインクーラーで思いっきり冷やしたモエ・エ・シャンドン、それを三人分シャンパングラスに入れて、デュラさんは魔法の力なのかシャンパングラスを宙に浮かせて、
とりあえず、この日ならではの!
「「「メリー! クリスマス!」」」
うん、5000円くらいのシャンパンだけど、葡萄をここまで感じられるスパークリングワイン中々ないよね。
「んみゃー!」
「うまいぞ金糸雀殿!」
「おぉ、こりゃうまい酒だ!」
そうでしょうね。私もシャンパンなんて中々飲めませんもの。兄貴が趣味で集めてなければ呑むこともなかったでしょうし……今回は食前酒ではなく、このお酒がメインです。
先ほど私が揚げた唐揚げを、ドンキホーテで売ってた海外製のクリスプスを添えて、
「はい! 金糸雀特性唐揚げです! ちなみに、ちゃんとブロイラーです! カナリアの唐揚げじゃないですからね!」
とかいうジョークは通じない。ポカンとしている二人に私はやや閉口しながら……
「はは……食べてください」
私の作った最高、最強の唐揚げ! それにモエ・エ・シャンドン様が相手でも十分に引き立つことでしょう! さぁ、お食べなさい、お飲みなさい!
「フォッフォッフォ! この鳥のフライ! なんと美味しい。そしてこの微炭酸のワイン……たまりませんな! そうは思いませんか? 首だけの騎士様」
「いやぁ! サタンさん。金糸雀殿の料理の腕は随一! 魔王城でもこれほどの味を出せる者はいますまいな」
「いやいや、言い過ぎですよぅ! まぁ、でも唐揚げの味は自慢ですかねぇ」
二人がもっちゃもっちゃと、100g100円のホワイトチキン、まぁ要するに卵を産まなくなったブロイラーでも私の手にかかれば、行列唐揚げ店の味! ママ、犬神家の唐揚げは異世界で大盛況ですよ!
モエ・エ・シャンドンを水みたいにガブガブ飲みながら唐揚げを胃のなかに溶かし込んでいく。
そう、どう考えても居酒屋の飲み会みたいな風景だけど、今日はクリスマスなのよね。子供の頃のクリスマスって本当に楽しみだったな。パパとママから……まぁ一応サンタさんからのプレゼント、この呑んだくれのおじいさんが最新式のゲームとか持ってこれそうにはないけど……
デュラさんとサンタさん、もう打ち解けちゃって、
「サタンさん、トナカイがいないとな? 我が、コシュター・バーでよければ貸してしんぜようか?」
「おぉ! デュラさん、この際トナカイでなくとも馬でも構わんぞい!」
あー、確か首のない馬だっけ?
いや、そんなのでサンタさんやってきたら子供泣くわよ。さて、そんなヤバいのでいくよりは……私の……ガスパール(座席の破れた原付)を、
「サンタさん、も……もしよければ私のZぺけ使ってください」
「おぉ! お酒に、鳥のフライに、それに乗り物の提供まで! かたじけない! これはワシから二人へのほんの気持ちだ。メリークリスマス」
サンタさん、私たちを見て、白い袋から……まさか! まさか、まさか!
プレゼントを手渡してくれるとサンタさんは私のクマのキーホルダーがついた原付の鍵を持って外に出て行った。私とデュラさんにプレゼントを残して、
というか、サンタさんもろ飲酒運転じゃん! と思って追いかけたら、私のガスパール(というの名の中古原付)の鍵は玄関に置いてあった。そして……外には雪……空には……
「あっ! デュラさん、デュラさん!」
私は慌てて、デュラさんの頭を運ぶと空を掲げて、
「おぉ! サタンさん、トナカイとやらと落ち合えたのだな! これにて一件落着か!」
「だね! サンタさんからのプレゼント見てみようか?」
ピーナッツ、カツオキャラメル、酢イカ、チータラ、そして下町のナポレオン。いや、嬉しいけど……嬉しいけどさ。
まぁ、メリクリ。子供達にはまともなプレゼント配ってあげてくださいね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます