第97話
今日は真由美とデートの約束をしてあるので少し頑張って起きた。うむ朝8時。約束は9時に駅前だから余裕だ。迎えに来ると言ったけれど偶には待ち合わせでデートってのもしてみたいと言ったら、『あ、それ憧れるかも』と一言で決まった。
とりあえず服を揃える。トップスはライトブラウンの7部袖サマーニットにした。
ボトムスはダメージジーンズと黒のスキニーで迷った結果黒スキニーに、アウターはグレーのジャケットにした。あとは夜のうちに焼いておいた紅茶クッキーを小箱に入れ、黒の小ぶりなボディバッグに忍ばせる。さっと朝食をすませ、歯を磨いて時計を見ると8時半になるところ。そろそろいい時間と思い。
「真由美とデートに行って来る。昼と夜は多分外で食べるから」
と言って家を出る。
待ち合わせの噴水前に美少女がいた。久しぶりにばっちりメイクをした真由美だ。
白地にピンクの花びらを散らしたシャツにピンクのフレアスカート首もとのピンクのリボンがキュートだ。
「お待たせ、早いな。9時待ち合わせだったろ」
「デートが楽しみでつい早めに来ちゃった。でもそんなに待ってないよ」
にっこり笑うその笑顔の破壊力が心臓を打ち抜いてくる。
「すごく可愛いよ、いつも可愛いけど今日は心臓が止まるかと思った」
と、感想を伝える。真っ赤になって照れながら定位置の左腕にぶら下がるように抱きついてくる真由美。
「もう、不意打ちはダメ。心臓が止っちゃうから。でも嬉しい。ケイもかっこいいよ。いつも思うんだけど、ケイって私服そんなにもって無いけどどれもシンプルでセンスがいいよね。誰のコーデ?」
「ん?これはオレが自分で適当に買ってるやつだよ。高校に入ったら少しは出歩くだろうからっておふくろが買えって少し金出してくれたから」
「へぇそれで今日は秋ものがターゲット?」
「うん、どうせなら真由美に見てもらおうかなって思ってさ」
「オーケーばっちり選んであげる」
「頼む。とりあえずモールに行こう」
電車で3駅の大型商業施設に向かう。映画館からゲームセンター、日用品からお洒落雑貨、レディスメンズの服まで何でも揃う。1日遊んでいても飽きない場所だ。
「まずは映画かな。真由美は何か見たいのある?」
「ん~、ケイが誘ってくれたんだからケイが選んでよ」
「はいはい、オレのお姫様」
一応一覧で確認して、事前にあたりをつけておいたアクションラブコメを選んで、
「これで良いか?」
「うん、おもしろそう」
入場券を買って、入場の列に並んでいると前のほうが少し騒がしい。ちょっと横にずれてみてみると。『サマーカップルイベント』と書かれたゲート。その前で抱きついたり、キスしたりしているカップルが……
「なんだあれ?サマーカップルイベントって」
真由美が目ざとく説明を見つけた
「カップル限定でペアアクセサリープレゼントだって。もらうにはカップルであることを証明できるアクションをするんだって」
「それで、あの状態かぁ」
「あ、あれ?しかもカップル度が高いと判断されるほどいいアクセサリーだって」
「あぁそれであそこまで凄いことしてるカップルがいるのか……」
何かを見つけた真由美が
「あ、あれアクセサリーのサンプルだって」
「へぇLv1がシルバーのオープンハートペアネックレスこれでも結構いいやつじゃね?Lv2は同じオープンハートのシルバーだけど何か石が入ってるな。Lv3はホワイトゴールドのペアでくっつけるとハートになるペンダントネックレス。Lv4はこれもLv3のネックレスのペンダントトップに石が入ってるな。最高のLv5だとおぉ?ピンクゴールドのハートのネックレスに小粒だけど女性側のペンダントトップにはルビーが入ってるって。すげぇな」
「Lv5なんて何したらもらえるのかしらね。恥死ぬ気がするんだけど」
カップルアクションをしている向こうになにかアイテムが置いてある。
「あれって何だと思う?」
「あれって?」
「ほらカップルアクションしてる向こうになにか色々おいてあるやつ」
「かざりじゃないの?」
「飾りにしてはちょっと……、順番が来たら聞いてみるか」
「はーい、次は高校生?の素敵なカップルさんね。挑戦しますか?」
先にちょっと聞いてみることにした
「その前に質問なんですが、そちらに置いてある色々はなんです?」
「おぉ目の付け所がいいね。これはカップルアクションで使っていいことになっている小道具よ」
「真由美、ギターがあるぞ」
「え、でもあれやると頭ぶっ飛んじゃうんだけど」
「ん~、実は回りに見せ付けたい気持ちがあって。ダメか?」
「うぅ、わかった」
「ギターとボーカルマイク、ヘッドセットマイク貸してください」
「曲は何やる?」
周りを見渡して、カメラがこっちを写しているのが見えたので
「ん~ファンタジーレインボウやろうかと思ったけど、いつものあれにしようカメラあるから」
「え?ケイファンタジーレインボウ弾けるようになったの?」
「おぅあれから頑張ってリードギター部だけ弾けるようになった」
ちょっと悩んだ風の真由美が
「いい、カメラ気にしてもしかたない。ファンタジーレインボウやろう。どうせなら最高のカップル見せ付けちゃおう」
どうやら真由美は雰囲気に酔ってる感じ。これはやらないといつまでも言う奴だ。
「はぁ、分かった。でもSJの演奏と比べものにはならんからな」
「大丈夫、ケイと一緒なら」
ここで不意打ちに破壊力抜群の笑顔はずるい。
司会のおねぇさんが
「おぉ、このカップルさんは今回初、小道具としてギターを使ってのカップルアクションを行うようです」
ちょっと音を出してみる、うん合ってるな。
「真由美良いか?」
「うん」
思いを込めてギターを鳴らした。イントロを艶やかにに歌うように、そして涼やかに想いを込めて歌い上げるハーモニー、真由美と目があう、抱きしめあうように歌え上げギターパートを終える。感情のままに真由美を抱き寄せ唇を重ねる。蕩けるような真由美の表情に心を打ちぬかれ周りがみえない。
いきなり拍手の嵐が起こった。その拍手の音がオレ達をゆっくりと現実に引き戻した。真由美と見つめあい照れながらゆっくりと心を日常に戻す。拍手に答えお辞儀をした。ストラップを外しギターとマイクを係りの人に返す。司会のおねぇさんの言葉を待つ……
どうも言葉が見つからないようだ。それでもかなりの時間を待たされたものの評を聞くことが出来た
「すごかったですね。なんというかもの凄いラブストーリーを見せ付けられた気分です。会場のみなさんはいかがでしたか?」
「引き続いてLv発表です。もう文句なしのLv5です。これでLv5じゃなかったら何がLv5に成れるのかって凄さでした。Lv5達成のおふたりには少々インタビューに答えていただきたいと思います。おふたりは音楽をされているんですか?」
「あぁ、どう言ったら良いんでしょう?オレと彼女は陸上部です。でも掛け持ちで軽音部にも所属していてこの春からギターの練習はじめたんです。で、知り合いのバンドとコラボすることがあって、そのときに歌ったのが今の曲なんです。彼らのオリジナルソングです。少しは気に入ってもらえたら嬉しいです」
その後、しっかりとLv5賞品を受け取り、その場でお互いに掛けるという羞恥プレーもあったりしながら映画館に入った
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます