第28話

「加藤さん、今日はマネージャーの仕事を簡単に説明するね。まず機材の準備ね」

「はい、桐原先輩お願いします」

「うん、とは言っても、重い機材は選手のみんながそれぞれで準備してくれるから、記録ボードとか、ドリンク、それに救急箱くらいを練習場所に持って行けばいいからね」


どうやら桐原先輩が加藤さんにマネージャーの仕事を教えはじめたみたいだ。

まぁそれでも

「さぁアップ始めるよ」

京先輩の掛け声で練習が始まった。



「57、58、59、2分、1、2、3、4、5、……」

加藤さんがタイムを読み上げる。

「もう少し大きな声で読み上げてあげてね。走ってる選手にしっかり聞こえるようにね」



「加藤さんそこはダメ。危ない」

桐原先輩に手を引っ張られて砲丸エリアから連れ出される加藤さん。


さすがに初心者だけあっていろいろやらかしてるな。






「これで今日の練習をおわります。1年生は機材の片付けを忘れないように。では解散」




「ケイお疲れ様。帰ろうか」

後片付けのあと、さっそく抱きついてくる真由美を抱き寄せながら

「この時間ならちょっと軽音部寄って行かないか」

「あ、そうだね少しは顔出さないとね」

手をつないで軽音部の部室に移動した。



「「こんにちわぁ」」

「お、ケイ君、真由美ちゃん来たね」

「あ、内木戸先輩。あまり出席できなくてすみません」

「いいよいいよ、こうやって忘れずに来てくれるだけでも嬉しいよ」

「また練習用にギターお借りしますね」

「おぉ別にそのあたりのギター使うのは断る必要ないぞ。あとケイ君に手紙来てるよ」

「手紙ですか?」

「1通だけだけどな」

「だけって??」

「他のメンバーには、ほら」

テーブルには封筒が山になっていた。

「なんですかこれ?」

オレ宛のかわいらしい猫のイラストの描かれた封筒を渡しながら

「まぁファンレター的な?」

と、言われて気付いた。この先輩達は固定ファンのついた人気グループなんだった。

「でも、なんで『的な?』って疑問系なんです」

「ほとんどはファンレターで間違いないんだけど。まぁ中には、やばいのとかあるものだからね」

やばいの?と疑問を感じながら渡された封筒を開けた。

「何々、ケイにファンレター?どんなの?」

真由美が興味津々で覗き込んできた




「うわぁ……」

ポエミィすぎる。

「これって……」

真由美が何か感じたらしい

「どうした?」

聞いてみると

「ファンレターってよりラブレター?」

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