第29話
土曜日、
「店長さん、うちの新人で伊藤景くん。初心者だけどギター希望なのでよろしくね」
神無月先輩付き添いのもと楽器屋にギターを選びにきている。にしても、本当に女先輩が新人男の面倒見るのな……
誤解を避けるために真由美にも一緒に来てもらっている。だってこれ真由美がいないと第3者的に見たらデートになっちゃうからね。
「ほう、KKシーズンの新人かい。それにしては初心者?」
「いえ、軽音部の新人です」
オレの返事に神無月先輩の表情が少し翳った。
「ふーん、ミニライブでKKシーズンの新人のケイが歌ったという話を聞いたんだけどね」
「センパイ?」
ジトリと睨むと。
「いやぁ、ちょっとした茶目っ気っていうか、軽音部メンバーへの顔見せっていうか……」
「センパイ?」
さらに1歩踏み込んだ
「ごめん、ここまで騒ぎになるとは思わなかったのよ」
「どういうことですか?」
「本当に、軽音部メンバーへの顔見せ程度の気持ちだったのよ。それが……」
どうやら初心者としてはオレの歌が受けすぎたらしい、陸上部での1年でありながら入賞という結果も人気を底上げしてしまったらしい、学校での人気投票も学外にまで広がってしまったらしい。
結局神無月先輩が思っているよりオレが有名になってしまい、こういうことになったと……
「それにしたって、ライブでデートに来てるのを一方的にって事自体が酷いじゃないですか」
真由美は、かなり根にもっているようだ。まぁデート中に相手を連れ去られたらそりゃ怒るよね。
「と、とりあえずギター見ようか」
しばらくは、おとなしくしておく事にして、ギターを選んだ
「ストラトキャスタータイプか。まぁ初心者なら無難なとこね。あとはミニアンプと小物類をそろえれば、取りあえずはオーケーかな」
総額32640円也。バイトもしてない高校1年生には中々痛い出費だけど、まぁこれは仕方ないな。
「これ初心者セットだから。そのうちもっと良いの欲しくなるよ」
店長さんの笑顔が黒く見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます