第30話
楽器屋からの帰り道
「しばらくはボーカルとしてもステージには立たないようにするしかないかな」
「KKシーズンはともかく軽音部でなら……」
「先輩。オレはKKシーズンの先輩方をリスペクトしてます。でも目指すものは違う。俺は音楽は楽しむだけ。プロを目指すとかは無理です。そういう人間が混ざって良いグループじゃ無いでしょKKシーズンは」
「なら、なおさら軽音部でならいいでしょ」
「今のオレはKKシーズンの新人って認識されてるんでしょ。それが薄まるまでは……」
「軽音部としての活動ならそこまでのことはないでしょ」
「先輩。軽い気持ちでケイをステージに上げて今の状態にしたのはダレ?」
「う、真由美ちゃんの言うのも分かるけど、だからって伊藤くんの活動自体を自粛するのは違うと……」
「先輩、忘れてるかもですが、俺はギター初心者で、しばらくは練習ですよ」
少し残念そうな顔をしてうつむき、それでもまた顔を上げた神無月先輩は
「そうね、まずはギターの練習しましょう」
「神無月先輩の暴走にはまいったね」
「あそこまでオレをステージに上げたいってのが分からないけどねぇ」
「そう?あたしには少しだけ分かるけどね」
「え?どういうこと」
「な・い・しょ」
小悪魔の顔で真由美がわらいながら答えた。
「まぁいいか。とりあえず軽音部ではギターの練習しとこ」
「にしてもギター一式だと結構重いのな」
現在絶賛かついで輸送中なのは今日購入したギター一式。普段持ち歩くのはギター本体と小物を少しらしいが、今日はミニアンプやらお手入れセットやら込みで重い。そのうえかさばる。ということで
「ちょっと公園で休んでいこうぜ」
「いこうぜ?」
おぉ、今日の真由美はミカエルでなくルシフェルであらせられる
「やすませてください。最愛の真由美様」
「よろしい」
これで真由美がにっこりわらって抱きついてきた。やさしく抱き返し公園のベンチに腰をおろした。ベンチに座った俺のひざの上に真由美を横抱きにしてる感じ。
他愛も無い雑談をしているのだが、健全な高校男子としては少々……いや凄く気になるものが。うん今までも我慢してきたけどこの体勢だとやわらかいものがオレの胸に押し付けられるんだよ。しかもちょっと手を動かせばそこに……
さ、触ったら怒るかな。でも、怒っても多分許してくれるよね……GO
そっと手を動かして手のひらでやわらかいものを包み込んでみる。
真由美がびくりとした、けれど特に拒否するしぐさはない。拒否はしないけれど顔を胸にうずめてきた。これ凄く照れてる奴だ。
「やわらかい。ドキドキする」
耳元で囁くと
背中に回されている腕がぎゅっと締め付ける
「えっち」
反応の声は抱き合う間でさえやっと聞き取れるくらいだった
「だめ?」
ふるふると頭がゆれる
「ずっと、触れたかった」
「あたしも、ずっと触れてほしかった」
真由美が顔を上げ目があった。お互いの距離が更に近づき優しく触れ合った
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