第156話

「昨日のケイ君と真由美ちゃんは、あれはイエローカードでしたよ」

朝、ナチュラルにオレの家にいつものメンバーが集合したとたんに幸枝がダメ出しをしてきた。いつもの定位置にいる真由美と目を合わせて

「どこがイエローだったって?」

キョトンとした顔で問いかけるオレ達に幸枝はがっくりと肩を落として説明をしてくれた。

「あんなKKシーズンのメンバーや、私たちまでいたところでキ、キスをしようとするなんて。デリカシーに欠けると言っているんです」

「な、なるほど。普段からオレと真由美がキスしていることを知ってはいても目の前でというのは辛いと。そ、それはなんというかゴメン」

謝って、ご機嫌取りに頭を撫でる。

「も、もう、ケイ君、頭撫でたらごまかされると思ってるでしょ」

そう言いながらニマニマしている幸枝も中々可愛らしい。

「幸枝も可愛らしいよな。オレじゃなければ惚れてるんじゃないか」

途端に左わき腹に痛みが走った。

「痛。真由美、お前の肘うちはシャレにならないって」

見ると可愛い顔の頬を膨らませていて、それはそれで愛らしいオレの彼女がいた。思わず抱き寄せて頭を撫で、目を合わせて

「嫉妬する真由美も可愛いけど、オレが好きなのは真由美だけだよ」

とたんにオレの胸に顔を埋める真由美。顔は隠しているけど耳の先まで真っ赤で照れているのがまるわかり。相変わらず防御力が低い。可愛すぎるのでさらに頭をなでなで。

「かわいいな」

ポロっと漏らした本音に

「うぅぅ、下げて上げて、さらに不意打ちとか耐えられない」

オレの胸に顔をつけてプルプルと震えるその姿に温かいものを感じながら撫で続けた。

「ケイ、そろそろ目のやり場に困るんだが。みんな困惑してるから。ほら真由美もそのくらいで」

雄二の言葉にハッと周りを見回すと。なんとなく直視をさけつつ頬を赤くしているメンバーに

「「なんか、ごめん」」

オレと真由美の二人で頭を下げた。

 そんな一幕がありながらオレ達は揃って学校に向かった。今日は陸上部の音楽カフェでオレと真由美、それに幸枝が演奏をする以外は予定が入っていない。そこでみんなで学校に向かい、高国高校の生徒である4人は、一度教室で出席チェックだけ受けて再度校門に向かう。レイさん、葉子さん、奈月の3人はオレ達が戻ってくるまで校門脇で待っているそうだ。ただ、この3人は目立つ。何もなければ良いのだけれど。

 出席チェックを終えて校門に向かうと心配していた通りの状況だった。

私服のチャラ男2人が絡んでいる。

「ねぇねぇ、いいじゃん。オレ達と遊ぼうよ」

「友達と待ち合わせしてますので、他をあたってください」

お、なんか珍しく葉子さんが拒否ってる。

「あ、その待ち合わせの相手って女の子?ならその子たちも一緒にどう?奢っちゃうよ」

しかたない、こういうのはオレの役割だ

「レイさん、葉子さん、お待たせ。あれ、その人たち二人の知り合いか何か?」

何気ない風にして3人とチャラ男の間に体を滑り込ませる。

「ううん、全然知らない人です。無理やり連れていこうとされて迷惑しているんです」

「ということなら、もういいね。行こう」

「このチビなにしようとしてやがる」

チャラ男の一人が僕の肩を掴まえて乱暴に引き寄せた。チラリと見ると雄二がスマホで撮影しているのが見える。さすが親友、オレの考えをきちんと把握してくれている。

「いや、あなたたち、彼女たちの知り合いでもなんでもないでしょ。だったら元々待ち合わせしていたオレが連れていくのが当然……」

ここで拳が飛んできた。大振りでフラフラとしたテレフォンパンチ。避けるのもカウンターを合わせるのも簡単ではあるけれど、ここでは。

「いってぇ」

男のパンチに吹っ飛ばされ転がるオレ。そんなことになれば当然。

「警備員さーん、うちの生徒が部外者に殴られてます。こっちです。急いで」

さすがに校門付近での騒ぎには警備員の反応も速い。

「君たち何をしているんだ」

「何もしてませんよ」

「そいつが勝手に転んだだけです」

そこに親友が登場。

「警備員さん、これを見てください」

「なるほど、君たち2人、警備員室に来ていただきましょう。あ、そちらの君。その動画データを後で警備員室に届けてもらえますか」

「はい、もちろんです」

そしてまだ地面に座り込んでいるオレに

「大丈夫ですか。痛みがあるようなら保健室に……」

「ああ大丈夫です。それほどでは無いですから。助かりました。ありがとうございます」

立ち上がってパタパタと汚れを落として、ウィンクをしつつ

「さ、行こうか」

「「「ケイ君(にぃ)あれは流石に無いわぁ」」」

「え、何で?一番被害が少ない奴だろ。雄二とのコンビネーションも最高だっただろ。それに何も自力でとっちめる必要は無いってね。特に学校内でやると後が面倒だから」

「いえ、あの流れるような嵌めにはさすがに」

と言いつつ全員が吹き出してしまった。

「さ、文化祭最終日楽しもうぜ」

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タイトル未定 景空 @keicoo

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