第112話

『ピロン』トークアプリの通知音。

mayuyun♡:今帰ったよ

kei:お疲れ様。今日は嬉し楽しかったよ

mayuyun♡:あたしも楽しかった。

kei:でも少しはふたりきりになりたかったかなって。贅沢かな

mayuyun♡:あたしもふたりきりになりたかった。だから、後で少しでいいから時間ちょうだいね♡

kei:もちろん。外で会う?

mayuyun♡:うん、いつもの公園で7時半に。いい?

kei:了解。楽しみにしてる。


スマホをベッドに放り投げ、着替えを、何着ていくかな。あ、こないだ真由美にコーディネイトしてもらった秋用の服、夜だし、あれで行こう。インナーに黒のTシャツ、落ち着いたグリーンのニットのセーター、さすがに夏だからコートはいらないか。ボトムはダークグレーのストレッチスキニー。軽くワックスで髪を整えて、ワンポイントに映画イベントでもらった真由美とペアのネックレス

「ちょっと真由美と会ってくる」

ひとこと断って家を出る。時間まで30分近くあるけど待つのも良いかな。ブラブラ歩いて公園に。いつものベンチに座って待つ。5分も待たずに真由美も来た。立ち上がり公園入口できょろきょろしている真由美に近づきながら手を挙げ声を掛ける。

「真由美、こっち」

さっきまでと違ってオフショルダーの膝丈紺色ワンピースに、映画のイベントで貰ったペアネックレス。気が合うな、ちょっと嬉しい。

「おまたせ、今日はケイが先だったね」

軽く抱きつきながら笑顔を向けてくれる。この笑顔、何度見てもドキドキする。

「大して待ってないよ。今来たところ」

抱き寄せながらおでこをくっつけ答える。

「そのワンピース似合ってる。すごく可愛いよ。それにほら」

ネックレスを見せて、ふふっと笑いかける。

「ケイもそのネックレスつけてきてくれたのね。それに、あたしが選んだ服着てくれて嬉しい。思った以上に似合っててやばいかも、あたし心臓がすごいことになってる」

「ふふ、オレもだよ」

真由美の手をとり、オレの胸に当てる。

「すごい勢いでドキドキ言ってる。あたしだけじゃ無いんだ」

そう言うと、今度はオレの手を取って胸に持って行く。心臓がマジでどんどんやばいことになってくる。真由美の鼓動が手に伝わって、もの凄く早く激しいリズムを刻んでいるのが分かる。真由美が自分で当てたオレの手を少しずらすと、オレ達の年齢としては少し豊なやわらかなふくらみを手のひらに感じる。

「あ」

真由美の声が漏れる。それは少し驚いたでも拒絶を含まない声で、むしろ触れやすいように体勢を変え、オレと目を合わせてきた。

「真由美、好きだよ。春に真由美が告白してくれて、あの時は幼馴染としての好きと恋愛としての好きが混ざっててよくわからないって言ったけど、今ではその両方ともが凄く大事な好きだって思える。無理に分ける必要なんてない、どっちも真由美のことを好きだってことだからってそう思えるようになったんだ。真由美の全部が好きだよ」

真由美が目を大きく開けて、少しウルウルと涙がたまり

「うれしい、ケイはずっとあたしの事を好きだって言ってくれてたけど、どこかちょっと不安に思ってたの。でも、あたしの全部を好きって言ってくれて。あたしもケイの全部が好きよ。運動が出来るとこも、勉強を偏って努力しちゃって苦手分野をつい放置しちゃうとこも、料理があたしより上手なとこも、みんなについ優しくしてハーレムみたいにしちゃうとこも全部。だからあたしを離さないでね。ずっと一緒にいてね。ケイ大好きよ」

どちらからともなく抱きしめあい、キスを交わした。それは今までのどんなキスより甘く愛おしいキスだった。


「あの、おふたりさん、凄く盛り上がってるところごめんね、通りかかったら目に付いて目が離せなくなっちゃって」

そこにはものすごくばつが悪そうにした神崎さんが……

「「神崎さん、そこは知らない顔でスルーするところだと思うな」」

「ごめんなさーい」

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