第113話
パタン、ゴソゴソ。『ちゅ』
「ふわぁ、うんぅ?なに」
朝、意識が半分ほど戻ったところに何か柔らかくていい匂いがして、何か気持ちいい
その柔らかいものをぼぉっとしながら抱き寄せる。これはもう習慣になってる。頭の片隅ではなんとなく真由美だと思いながら抱き寄せているので、なんとなくナデナデ
「ふぇ?そんな突然」
あれ?声が違う?まだ意識がはっきりしない中にも何か違和感のようなものはあるけれどぎゅぅっと抱き寄せてなんとなく目が開いてきたのでキスしようとして……
「ケーイ、おはよぉ」
真由美の声と一緒にボスンと乗ってきた。寝起きの頭で何か不吉な予感を感じて目が覚める。目の前、というかオレの腕の中にいるのは真由美ではなかった。
「な、奈月なんでおまえ」
俺の腕の中にいたのは何故か幸せそうに蕩けた顔をした奈月。そして布団の上からこちらを見ているのは物凄く良い笑顔の真由美。どうしてこうなった。
「ねぇケイ、一線は超えてないよね。あたしなっちゃんとなら色々しちゃっても良いって言ったけど最後まではしちゃったらやばいよ」
「してない、っていうか何故ここに奈月がいるのかもわからないんだけど」
そして、ふたりそろって凄く幸せそうな顔をした奈月に目を向け
「奈月(なっちゃん)、説明してくれるかな?」
揃った声に奈月が気がついて
「え?えと、朝起きてにぃの部屋覗いたら気持ち良さそうににぃが寝てたからつい」
てへっと悪戯を見つかった子供のように悪びれることなく言い切った奈月に
「先に進むってのはそういうことじゃないと思うよ」
真由美がまじめに
「オレも奈月を構うとは言ったけどそういう事じゃないからな」
一応オレも言ってジッと奈月を見る。
「だ、だって同じ家に住んでいるのにギュってしてもらうのも、キスしてもらうのもほとんど無いの。にぃがあたしのことは妹としてしか見てくれてないのは分かっていても……」
「はぁ、そういうことじゃなくて。こっそりしなくていいからおいで」
奈月がきょとんとしている。真由美も
「こっそりしなくても良いのよ。なっちゃんの気持ちはあたしもケイも分かっているから。だからね、そういうケイの気持ちを考えずにっていうのはやめてあげて」
「ほら、おいで」
おずおずと身体を寄せてくる奈月をそっと抱き寄せ、あたまから背中にかけて撫でる。奈月の後ろから真由美が抱き着き
「寂しいのは分かっているから。正面からケイにちゃんと抱き着きなさい。あなたのお兄さんはそんなことで、あなたを嫌いになんかならないから。キスしたいならちゃんと正面からキスしに行きなさい。触って欲しいなら触ってもらいなさい。そうしてちゃんと自分の気持ちとケイに向きあうの。ね、ケイもちゃんと受け止めてくれるから」
「う、うん。ありがとう真由美ねぇ。にぃ、あたしはにぃに抱き着きたい、抱き締めて欲しい、キスして欲しい。それにその触って欲しいの。こんなことをにぃに言いにくくて、にぃが寝てるところについガマンができなくて。その、ごめんなさい」
「いい、大丈夫だから。ちゃんと受け止めるから」
そう言いながら、奈月を更に強く抱き締める。
「あっ、うぅん」
奈月が少し艶っぽい声をあげた。顔をあげてオレを見、そしてそっと目を閉じる。真由美の目の前だが、今は、奈月に向き会う。奈月の頬に唇をよせキスを落とす。少しずつ動きながら唇どうしキスをする。ついばむように、愛おしむように。手のひらで奈月の胸の女性らしさをマシた膨らみをなで少し揉む。お互いを感じ、いつしか自然に身体を離し見つめ合う。
「奈月、へんなガマンはいらない。ちゃんと受け止めるからね」
そこでふと気づいた
「おい、今日って始業式」
「あ、そうだった。それであたしもケイを起こしに来てなっちゃんを見つけたんだった」
3人して時計を見る。
「まだ、大丈夫だな。着替えてから行くから先に下行ってて」
奈月が先に部屋を出たので
「真由美」
そっと囁き、真由美をきつく抱き締めキスをして
「ありがとう。でも真由美も無理しちゃだめだよ」
そう言って、部屋から送り出した。
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