第82話

「ねぇねぇ、にぃの周りがいつの間にか美人だらけなんだけど、どうしたの急に。ラノベのハーレム主人公になったの?」

奈月がキラキラした目で聞いてくる

「ラノベとかハーレムとか何言ってる。オレの彼女は真由美だけだ。他の3人は友達だぞ」

「え?あたしのラブラブセンサーがビンビン反応してるよ。レイさんも葉子さんも幸枝さんもにぃにラブだよ」

「おいおい、そんなでたらめ・・・」

あ、一人は当りだ。こら奈月確認に行くんじゃ無い。気まずくなるだろうが。

「ねぇねぇ、さっちゃんねぇはにぃにラブでしょ」

よりによって一番に幸枝に行きやがった。やめろぉ

「え、なんでなっちゃんがいきなり?」

「いいじゃん、教えてよ」

「実は春にケイ君に告白したよ」

「おぉぉ、やっぱり。でも今一緒にいるってことは諦めたの?真由美ねぇがいるから」

「諦めるわけないじゃん。だからこそ近くにいるのよ。真由美ちゃん公認でアタックしてるんだから」

あ、奈月のキラキラがすごい

「ふぉぉ、なっちゃんねぇ凄い。一途。でもあたしは真由美ねぇの味方なの。真由美ねぇが一緒でいいよって言ったら応援するけど、今はごめんね」

あ、こんどはレイさんに行った

「ねぇねぇ、レイねぇはどうなの?にぃのことラブなの?」

あ、レイさん困ってる。いや困らないでライクって言って

「そうねぇ、今のところラブでは無いかなぁ。あえて言えばアドレイション崇拝ね」

あ、奈月が固まった。そりゃ兄が年上の女子大生の崇拝対象だって言われたら困るわな。あ、再起動した。

「それって、ある意味ラブより上じゃ?」

「どうなのかな?ケイ君には憧れているし崇拝していると言ってもいいけど。女としてどうにかなろうって気持ちは今のところはないかなぁ」

「よ、葉子ねぇは?葉子ねぇはにぃの事どう思ってるの?」

「私の場合は多分友情的なライクかしら。憧れもあるけど崇拝まで言い切れないし」

「や、やっと普通の反応が返ってきたよ。にぃの周りは90%異常空間になってるよぉ」

そんなことをしているとそろそろ良い時間になったので

「そろそろ出ようか。花火会場の近くは混雑するだろうから車でどこまでいけるかわからないし」

それに対して葉子さんが

「そうですね、ある程度近くまで行ったら車を駐車場に置いて歩いて行くほうが便利かもしれませんね」

ワンボックスは8人乗りだったので比較的余裕をもって全員が乗ることが出来た。

「忘れ物は無いかな。じゃぁ葉子さんお願いします」

「はーい、みんなシートベルト締めてね」

花火会場近くの駐車場に車を止め、のんびり歩く。会場に近づくにつれ人が増え混雑してくる。

「もう少し先の橋の横あたりが穴場なんだよ。花火は良く見える割に人が少ないの」

葉子さんは良く知っている。家の車が借りられるという事は地元だという事だし、昔からよく来たのだろう。

「はぐれたら、そこに集合ね」

「まだ花火には時間あるから屋台でも見て回りましょう」

レイさんの提案で屋台の出ている通りをブラブラ歩く。

「にぃ、綿あめ買って」

「にぃフランクフルト食べたい」

「にぃ焼そば欲しい」

食べ物は奈月が先導してみんなで食べた。

「なぁ真由美」

「ん、ケイなぁに」

「屋台の食べ物ってさ、安い材料しか使ってないと思うんだ」

「だろうね」

「なのに、なんでこんなに美味しいんだろうなぁ」

「たぶんだけど、それは食べ物の味じゃないんだと思う」

「うん?」

「きっと、この楽しい時間の思い出の味なんじゃないかな」

「そっか、そうだな。ずっと美味しい時間だといいな」

真由美を抱き寄せた。ずっとこんな時間が続くといいな。あんな思いはもうたくさん

「ケイ?どうしたの」

「うん、ちょっと今が幸せすぎてさ。真由美が恋人で、雄二がいて、奈月がその彼女で、幸枝が笑ってて、レイさんや葉子さんが仲間になっててさ。オレ達だけがこんな幸せで良いのかなって。もう大丈夫だと思っていたんだけど。いかんな。夜に繁華街に出るとまだ・・・」

「ケイ。大丈夫。みんなケイの幸せを喜んでくれるから」

「そう、かな」

「ケイは、自分のお父さんが信じられない?」

「いや」

「じゃぁ、あたし達のおかぁさんが信じられない?」

「いや」

「なら、だいじょうぶ」

「そう、だよな」

「うん」

「ふぅ、わかっていてもな。そうとなれば、まずはこの今を楽しもうか」

少しみんなから遅れかかっていたオレ達は手をつないで、みんなを追いかけた

「おーい、こんどはこのカルメ焼き食べようぜ」

みんなと楽しむように声を掛ける。

「ケイ君、今度は射的やってみようよ」

たまには幸枝のおねだりもきいてやらないとな。

「おっけ、何を狙う?」

「あのにゃんこ先生人形取れる?」

「あれかぁ、難しそうだけど。やってみるか」

「あ、おしぃ」

「あと1発だよ」

真由美も楽しんでる

「やったぁ」

「最後の1発でなんとか取れたな」

「よし、これは幸枝にあげるよ」

「え、良いの?」

「だって幸枝が欲しかったんでしょ。たまにはね、このくらいはね。付き合うことは出来ないけど友達としてね」

「くす、わかってるわよ」

そんな事を言っていたら横からつねられた。

「痛ってぇ。真由美カンベンしてよ。こんくらい」

「フーンだ。鼻の下伸ばしてた罰ですぅ」


そんなふうに楽しんでいたのに


「ねぇ、いいじゃん。絶対楽しいって」

「そうそう、俺らと良いとこ行こうよ」

「お断りします」

「まぁまぁ、そんなつれないこと言わずにさぁ」

ちょっとオレ達と距離があいた隙にレイさんと葉子さんがチャラ男3人組にナンパされている。実際のところあのふたりが、あんな連中に危害を加えられることは無いだろうけど・・・。あ、朝の光景が浮かんだ、そうだ、あのふたりは強いけど、その強さであぁいった連中を振り払うのに慣れてないんだった。

すっと男達とレイさん葉子さんの間に割り込む

「悪いけど、この人たちはオレの連れなんだ。他をあたってくれ」

「あん?ガキは引っ込んでろよ。てめえには関係ないだろうが」

「オレの連れだって言ってんだろうが、見た目通りに頭も悪いのか」

オレの後ろの真由美と幸枝に気がつくと

「お、そっちの子も可愛いじゃん。こんなチビなんかほっといて、オレ達と遊ぼうよ」

その頃には雄二もガードに入ってくれていたので安心して言い放つ

「てめぇらにオレの仲間の誰一人触らせない」

「あーん、女の前だからっていい気になってんじゃねぇぞ痛い目見る前に消えろや」

と言いながら拳を振りかぶる。が、そんなテレフォンパンチは、

『パーン』

左拳で相手の肩の上で払い落とす

「な、なにしやがる」

今度は反対の男が掴みかかってくる

『パパン』

その両手を左だけで払い落とす

「いい加減にしないと怪我するよ。次は容赦しない」

オレの後ろに回った一人が

「死ねぇ」

殴りかかってきた。その腕を逆間接に極め。そのまま背負い投げる。頭から落としたそいつに流れのままに体を浴びせ肘を落とす。相手の肘と肋骨の2~3本は折れただろう。頭から落としたが下は土なので死にはしないだろうが、脳震盪でしばらくは動けないはずだ。反動のままに飛び起き。その間ほんの2~3秒。

「まだやるか?」

ピクリとも動かない仲間を見て怖気づいた残りのふたりは

「・・・」

声もなく逃げ出した

「ほら、仲間を置いていくな」

恐々近づいてくると伸びてる一人を担いで逃げていった



「はぁせっかく楽しんでいたのになぁ。気分壊れた」

呟くと。横から

「ケイやりすぎじゃ無い?あれやばいやつ」

真由美が心配してきた

「ん~、下がやわい土だから大丈夫だろ。肘と肋骨の2~3本は逝ったとは思うけど」

ふと見ると、レイさんが青い顔をしている。やっちゃったか、と思っていると

「ケイ君、今のが、あたしと最初の時の?」

あぁそういう意味か

「ん、最後までやると、ああなる」

「ケイが止めてくれなかったらああなってたのよねぇ。レイさん運がよかったね。あれって実は一連の流れに入っちゃうとケイって無意識なので簡単にはとまらないんだから」

さらっと暴露しないでくれないですかね真由美さん。あぁあ、レイさん更に強張っちゃってる。仕方ないなぁ。

「真由美、もうレイさんを脅す必要はないだろうが」

「あはは、ごめんつい」

まったく、真由美をひとにらみして

「ごめんじゃないよ。ほらレイさん。もう今はレイさんも大事な仲間だから。あれを向けることはないから。大丈夫ですよ」

レイさんの肩を軽く抱いて、頭を撫でる。少しして再起動したレイさんは、少し顔を赤くしながら

「ありがとうございます」

「ふぅ、今のは、あたしが脅しちゃったのが原因だから、特別だからね」

真由美が苦虫を噛み潰したような顔でレイさんに呟いた

「くくく、真由美可愛いな」

真由美をしっかり抱き寄せて背中を撫でてなだめる。

そんな流れを見ていた奈月が

「そんな、真由美ねぇがにぃが他の女の子を撫でるのを許すなんて」

と愕然としつつ

「おにぃのハーレムが出来上がりつつある」

と不穏な言葉を呟いた。

そんな微妙な空気を雄二が

「ほら、そろそろ花火の時間じゃないかな、移動しよう」

ほっと空気が弛緩した

目的の場所に着くと、確かに思いのほか人は少ない。

「そろそろですね」

葉子さんが言うと

『ドーン』

光の花が夜空に咲き腹に響く音がした。

『ドーン、ドーン』

次々に打ち上げられる。大輪の光の花。

真由美の肩を抱き寄せ

「綺麗だな」

真由美も身体を寄せて

「うん、綺麗だね」

見ると、奈月も雄二に抱きついいて赤い顔で何か話している

レイさんも葉子さんも上空の花火に見とれている

幸枝は・・・ちょっと寂しげな表情で、それでも笑顔で花火を楽しんでくれているようだ。

しばらく打ち上げ花火を楽しんでいると、葉子さんが

「そろそろ湖の上の仕掛け花火が始まりますよ」

見ると、湖上の一角に火が付いていた。

『バラバラバラ』

そいうとしか表現の出来ない音と共に様々な仕掛け花火に火が付く。

最後の花火が終わると。少しの寂寥感を感じながら

「「「「「「「綺麗だった(ですねぇ)なぁ」」」」」」」



帰りも葉子さんが車で送ってくれた。みんな荷物をうちにおいてあるので一旦うちに上がった。

「レイさん、葉子さん、今日は誘ってくれてありがとう。とても楽しかった」

お礼を言うと

「いえ、いつもお世話になってますし。今日もあんなご迷惑を」

「あぁあんなのは慣れればレイさんや葉子さんなら自分でも追い払えますから気にしないで」

「いえ、ありがとうございます。あと、真由美ちゃん、10秒だけ目を瞑ってね」

と言うと。レイさんの顔がオレに近づいてきて、唇に柔らかい感触が・・・

「これはお礼です。変な意味は無いですからね。真由美ちゃんもごめんね」

「ななななな、何するんですかぁ」

真由美の叫びが響いた

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