第151話

「こちらの席にどうぞ」

こちらもゴスロリ風のメイド服に身を包んだ店員役の女生徒が席に案内してくれた。

「ありがとう」

一言礼を言って席に着くと、さっそくメニューを持ってきてくれた。

「って3人体制かよ」

オレにはメイド服の女生徒、真由美と神崎さんには執事服の男子生徒がメニューを手にもって見せてくれる。

「ケーキが7種類もラインナップされてるわね」

神崎さんの目がキラキラしている。

「あ、ほんとうだ。文化祭でこれって凄いんじゃない」

「ラインナップも甘そうなのから、甘み抑え目ぽいのまで揃ってていろんな人が楽しめそうだな」

「あ、ケイ飲み物も種類があるよ」

「マジか。校内公開日含めてもたった3日の文化祭でこんなに手を広げて大丈夫なのか。まあ客側としてはうれしいけど」

そんな話をしながらメニューを見て注文を決める。

「オレは、ベイクドチーズケーキとコーヒーを頼みます」

「あたしは抹茶ムースとココアお願い」

「私は、ショートケーキとマンゴープリンとモンブランのミニセットにミルクティーをお願いします」

「真由美は抹茶好きだよな」

「いいでしょ、美味しいんだから」

「神崎さん、欲張りセットだね」

「ええ、でもケーキがミニサイズってなってるので良いかなって」

「このメニューってよく考えてあるな。大変そうではあるけど」

ここで神崎さんが改まって

「ごめんなさいね、デートの邪魔しちゃったよね」

「ああ、まあ神崎さんだと今更」

「だよねぇ」

オレと真由美の声に神崎さんは、天井を見上げて

「え、ええ、そんな」

「いや、だってさあ、こないだまで、オレ達が良い雰囲気になると邪魔しに来てたじゃん」

神崎さんは、とたんにアタフタと慌てだし

「あ、あれは、ケイ君に近づきたくて。見てたら羨ましくてつい……」

オレと真由美は顔を見合わせて

「「ぷっ、あはははは」」

吹き出してしまった。

「ごめんごめん、神崎さんの反応が可愛くて、ついからかっちゃった」

「か、かわいいって……」

耳まで真っ赤になる神崎さんを見て真由美までが

「神崎さん可愛い」

と抱きついていく。

「え、えと。私としては真由美ちゃんに抱きつかれるのは嫌じゃないんですけど、それよりもむしろ、その、できればケイ君に抱きついて欲しいかなって」

「ああ、さすがにそれは無理だからね。いくら可愛いって思っても意味が違うから。オレの中に真由美以外の女の子に抱きつくって行動がないから」

一瞬黒いオーラを出しかけた真由美が、逆にニコニコと嬉しそうに今度はオレに抱きついてくる。

「ケイって、あたしのこと好きすぎじゃない」

上目使いで言ってくるので、ドギマギしてしまい、思わず抱き返してやさしく頭をなでながら、そっと耳元で囁く。

「そりゃ好きだよ。真由美の事は、これ以上ないくらい好きだよ。こんなとこで言わせんな恥ずかしい」

あぁ顔が熱い。これ多分顔が真っ赤になっているよな。そして真由美を見れば、当然のように真っ赤な顔で悶えていて。これは文句を言いたくても言えない、でも恥ずかし照れるってやつ。

「真由美可愛い」

つい、言葉が漏れる。そしてさらに悶えるようにしてオレの胸に顔を押し付けてくる。そうして真由美を可愛がっていると、神崎さんが申し訳なさそうに声をかけてきた。

「えと、すごくいい感じにイチャイチャしてるとこ言いにくいんだけど。周りが凄いことになってるよ」

言われて周囲を見回すと、テーブル代わりにテーブルクロスを掛けられた机に突っ伏す者、コーヒーをがぶ飲みする者、胸を押さえ苦しそうにする者など死屍累々といった感じだ。かと思えば、ポーっとして夢見心地な顔で幸せそうな女子も一定数。更にメイド役の女生徒を見ると、良い笑顔でサムズアップしてきた。そして夢見心地で幸せそうな人を除き入れ替わっていく。

 オレ達が入店した時には1割程度の入りだったのが今ではほぼ満員になってしまっているので

「混んできたかし、そろそろ出るか」

と声を真由美と神崎さんに言うと、メイド役の女生徒が声を掛けてきた。

「え、もう少しゆっくりしていってくれませんか」

「いや、混雑してきたから席を空けた方がいいでしょ」

「いえいえ、大丈夫です。お二人がいてくれてるからこその満席ですから」

結局そこで1時間ほどのんびりと時間を使った。混雑しているなかよかったのかなぁ。

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