第50話

軽音部に向かいながら考えた。京先輩にバレたかぁ。てか加藤さんよく気づいたな。そこまで考えて、ふと

『しかも帰宅後にもかなりのハードトレーニングをしてるみたいじゃない』

ん??んんんん???『しかも帰宅後にもかなりの』『帰宅後にも』

なぜ帰ってからのトレーニング状態までバレてる??

はっと気づく。あの時加藤さん何て言った?

『マネージャーとしては有力選手2人のトレーニング後の生活パターンを把握したいと思っただけですよ』

『トレーニング後の生活パターンを把握したい』

あの時は、単にオレのそばに居たいから言い訳をしたのだと思っていた。もし、あの時、京先輩がオーバーワークと言うトレーニング量に加藤さんが気づいていたら。そう、京先輩は何と言った?

『加藤さんが注意してくれたの』

そうだ、気づいたのは加藤さんだ。なぜ気づいたのか。なぜいきなりトレーニング後の生活パターンの把握なんてトンデモな事を言い出したのか、オレのためにテーピングを覚えたってのも普通なら順番が違う。

「あはははは。まいった。加藤さん、君の本気度。おもいやり。やさしさ。分かったよ」

俺はいつしか涙を流していた。悲しさでも苦しみでもなく。全てを受け入れられた嬉しさ歓びの涙だった。これは真由美にも見せられない伝えられないことだと思っていた。まさか加藤さんが・・・

「ほんと、まいったよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る