第137話

結論だけ言えばチーム対抗リレーはオレ達白組Aチームが1位、Bチームは2位のワンツーフィニッシュだった。そして赤組Aチームの3年生女子に愚痴られた

「なんなのあなたたち。100mの3人に男子を1人振り分けてリードされたのは分るけど400mで森川さんが女子なのに男子より速いとか、伊藤君、なんなの800m走ってるうちにリレーで周回遅れにするって」

「あぁ、なんか、そのすみません」

実は裏で悪乗りしたのは秘密。モチベーション上がらないなりに、それぞれのタイムを並べていて、気付いたのが、他の3チームとのタイム差が多分30秒近くありそうだということで、どのくらい離せるかって話をしていた。そこに後ろに居た3年生。チームリーダーに

「よし、3チーム全部を周回遅れにしたら自販機のジュースを全員に奢ってやる」

などと言われたので、おもわないところで全力で走ってしまった。まぁ結果を見て

「マジか。本当に周回遅れにするとは思わなかった。小遣いが……」

とその先輩がぼやいていたのは言わないのがいいかな。そんなこんなで先輩にジュースをおごってもらいホクホク顔で席に戻ると。

「おい、伊藤。おまえ真由美ちゃんというものがありながら、加藤さんに言い寄られ、さらには、なんだ、あの美人ふたり」

あぁレイさんと葉子さん見られたのか。陸上部と軽音部のメンバーには知られているし今更だよなぁ。

「華桜女子大の2年生。陸上部の夏合宿で知り合っていつものメンバーで仲良くしてる友達だよ」

「え、合宿で知り合った。じゃぁあの人たちも陸上部なのか」

「違う。けど、これ以上は個人情報だから教えられない。ただ、オレの友達に変な事したら赦さんからな」

一応釘を刺しておく。

「変なことはしないけどさ、どうせならここに来てもらったらどうだ?これから終わりまで満席になることはないだろ」

ここなら女子もいるし無闇なことはないか

「でも先生が何か言わないかな」

「平気だろ。あっち見ろよ」

見ると他のクラスでは先生まで一緒になって外部の人を含めておしゃべりしている。こんなに緩くていいのか?という疑問は残るけれど一般席より近くで見られるし、なんならオレ達がいない時にはクラスメートとおしゃべりしていてもらってもいい。それでも一応保険を掛ける。ちょっと担任の佐々木菘先生に確認。

「佐々木せんせー、知り合いが見に来てるんですけど、クラス席に呼んじゃって良いですか」

「いいですよ、ただし羽目を外さないようにね」

緩いなぁ。でも、これでここに呼べる。


「レイさん、葉子さん、奈月も、良かったらうちのクラス席にくる?」

「え?クラス席って外部の人間が混ざって良いんですか?」

さすが常識人の葉子さん

「担任の先生の許可ももらったから大丈夫だよ」

「へぇー、じゃぁクラスでのケイ君達の様子も聞けちゃったり?」

あ、しまったそっちの警戒を忘れてた。ニヤニヤするレイさんに葉子さんが

「レイ、あんまりイジメルと大好きなケイ君に嫌われちゃうよ」

「そ、そんなのじゃないから。ケイ君は友達だし。年下だし」

あ、あれ?これオレが聞いてちゃいけないやつ?

「とりあえず、良かったらクラス席に……」


連れて行ったら囲まれた。

「わ、わ、綺麗なオネェサン。真由美ちゃん良いの?」

何故か真由美に問い詰める女子。

「伊藤、雄二ちょっとコッチに来い、聞きたい事があるんだけどいいか」

光の無い瞳でニコヤカに迫ってくる男子。

「え、雄二君の彼女?伊藤君の妹さんなの?かわいー」

奈月を愛玩動物扱いしようとする女子。

いきなりのカオス。みんな暇だったんだね。

「で、クラスでのケイ君とか雄二君ってどんななの?」

あ、レイさんが直球で聞いてる。

「わ、わ、二人の事名前呼びなんですね。ひょっとして……ですか」

なに言い出してんの

「くすくす、その様子だとクラスでも二人は人気者なんですね」

葉子さんが大人の余裕でかわしている。

「そうですね。いつも注目を浴びているのは間違い無い感じです。特に伊藤君の真由美ちゃんラブにクラスの女の子はみんな……おふたりも女の子ならわかりますよね」

「そうねあれ尊いわね」

おい、女子大生。とりあえず一瞬で馴染んだようなので良い事にして

「じゃ、オレ今から障害物競走だから。行ってくるね」

「いってら~」

「頑張ってねぇ」


競技が始まった。6クラス男女各1名の3学年の36人が一斉にスタート。ひでぇなこれ。とりあえずダッシュ。最初は平均台渡りか。思いきって飛びのり4歩で渡り切る。次も定番、網くぐりだな。うわ、微妙に目が大きくて引っかかる。うをっと抑えてる係りの生徒が悪戯に網を揺らしたな今絡む絡む。なんとか抜けたもののリードはわずか。次は、竹馬か高めの馬選んでカッポカッポと。げ、後ろの女子が妙に上手くて抜かれてしまった。

「伊藤~、女子に抜かれてんじゃねーぞー」

野次が飛んできた。うっせいわ。次の種目パン食い競争か。支えの棒を人が持っているから微妙に揺れて食いつきにくいな。てか、オレが来た途端に揺らしてんじゃねぇか。先頭の女子はもう次の蓑虫競争やってる。てか後続も追いついてきた。なんとかパンをくわえて。次へ通常の障害物はこれが最後。両足で飛び跳ねてなんとか2位通過。最後が借り物競争。お、先頭の女子が赤くなって固まってる。今の内にお題を『…………』オレが固まる番だった。く、やむを得ない。ある女子の前に行って

「来てくれるか」

とお題を見せる。嫌がったらさすがにこれは諦めるしかない。赤くなりながらも頷いてくれたので手を繋いでゴールへ向かってダッシュ。

「1位でゴールは1年B組の伊藤君のようです。女子と手をつないで仲良くゴールインだぁ」

スピーカーから声が響く

「さぁお題は?」

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