第92話
「おはようございます」
オレは眠い目を擦りながらダイニングに入っていった。
「にぃ、遅いよ。やっぱり真由美おねぇちゃんが起こしてくれないとダメだね」
「そんなこと言ったってな。眠いものは眠いんだよ。むしろ今日は自分で起きてきた分エライとまで言える」
「はぁ、まったくにぃは、さりげなく女の子落とすポイント。高スペックの男の子がちょっとだけダメなとこを見せるをするんだから」
「ふわぁ、なんだそれ。朝起きるのが苦手な男なんていくらでもいるからな」
「にぃ分かってない。ふつうの男の子が朝が苦手ってだけじゃマイナスポイントなの。あくまでも基本スペックが高い男の子がちょっとだけ致命的じゃない事でダメだからキュンてくるんだからね」
「もういいよ、それより朝飯は?ひょっとしてみんなもう食べちゃった?」
そこにおばあちゃんが来て。
「ほれ、そこにすわんな。朝ご飯出してやるから」
「あ、ばあちゃん。ありがとう。教えてくれれば自分でやるよ」
「いいから、いいから。すわってな」
出してくれたのは、ご飯、アジの塩焼き、卵焼き、味噌汁。
「さすがばあちゃん、朝からしっかりご飯だね」
「いつもは、どうしてるんだい」
「あぁ、オレが朝弱いからさぁ。トーストに目玉焼きとかをコーヒーで流し込む感じ。食卓にはサラダとかスープとか並んでるけど口に入れてる時間なくてさ。それでも最近は真由美が、あ、真由美ってのは幼馴染で付きあってる彼女ね、が朝起こしに来てくれるから大分マシになったかなぁ」
「へぇ、景、彼女が出来たのかい。こりゃ知佳ちゃんあたりはガッカリするかもしれないね」
「え、なんで知佳がガッカリするの?」
「そりゃ、ねぇ。景に彼女が出来てガッカリするっていえば分かるだろう?」
「いやいや、そういう気持ちがあればガッカリするかもしれないけどさ、最後に会ったのオレが小5で知佳が小4の冬だよ。普通無いでしょ」
「女の子ってのは早熟だからね、小4なら男の子のそうだね中1か中2くらいの恋愛感覚持ってるものさ。」
中1ってオレが初めて真由美を女の子として意識して初恋をした頃じゃないか。
「でもその気持ちを4年も5年も持っているもの?」
「にぃ、それは人によるし、その場合にもよるよ」
横から奈月が口を出してきた。
「あぁもうまたか。そうだった時はそうだった時。告白されても断るしかないんだし。最近オレの周り恋愛事多すぎ」
「ふふふ、青春だねぇ。まぁ悩んで悩んで大人になればいいよ」
朝食を済ませて、着替え、みんなが墓参りの準備が出来たので出かけた。
お墓は祖父母の家から歩いて15分くらいの山裾にあるお寺の墓地にある。
お墓では皆でちょっと手を合わせてから周りの掃除をして墓石を綺麗に洗った。ゴミを纏めて袋に入れてから親父が好きだったカスミソウを供えた。蝋燭を灯し線香を上げて墓石の前で手のひらを合わせ目を瞑る。
『父さん、遅くなってゴメン。やっと父さんに会いに来れたよ。これまで色々あったよ。父さんが死んでからしばらくは復讐することばかり考えて、それも偶然できてしまったけど、そのときオレもあいつらと同じになったんじゃないかって怖くなったんだ。でも、そのあと小谷野先生の強引な誘いで陸上を始めて、中学では県大会の上位常連になったんだぜ。勉強も頑張って高国高校に入って、高校でも陸上を続けているよ。しかも地区大会で1年で4位入賞したんだよ。それに真由美と付き合うようになったんだ、父さんも知ってる幼馴染の真由美だよ。幸枝はオレが真由美と付きあっているの知っているのに春に告白されたんだ。でもそれは断って、でも幸枝は全然諦めないんだよ。その後も何度も何度も告白してくるんだ。そんな関係なのにいつの間にか大切な友達になっちゃってね。そのほかにも女子大生のレイさんや葉子さんと友達になったよ。それでね、オレやっと前を向けたよ。今が幸せだって言えるようになったんだ。だから安心してね。これからはちゃんと前向きに生きて行くからさ』
目を開けて、立ち上がると、母さんと目があった
「随分長い事拝んでいたけど、ちゃんと報告できたかい?」
「うん、来るのが遅くなってゴメンって、今幸せだから安心してくれって報告したよ」
母さんも安心したように微笑んでくれた。
他のみんなもお参りをすませ。後片付けをし、帰ろうとしていると
「あぁ景ちゃんだぁ。奈月ちゃんもいる。今年は来たんだね」
大きな声で呼びかけてきたのを見やると。少し高めの身長に幼い外見の中に女性特有な部分がほのかに主張する可愛らしい女の子だった。一瞬だれだか分からなかったけれど、オレを『景ちゃん』、奈月を『奈月ちゃん』と呼ぶのは一人だけ『なはず』
「知佳か?」
それは可愛らしく成長した知佳の姿だった
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