第79話
『ピロロン』
スマホの通知音がなる。
Ray♪:校門近くの駐車場にいます
kei:すぐ行きます
「ケイ君おはよう」
先にオレを見つけたらしいレイさんから挨拶で呼びかけてくれた
「おはようございます。ひょっとしてこのクルマですか?」
「ケイ君おはようございます」
クルマの影から葉子さんも出てきた。
「葉子が家のクルマを借りて来てくれたの。どうせ一緒に移動するなら車の方が便利だろうからって」
「葉子さん、ありがとう。どうもオレ達高校生って車で移動って意識がないので、こういう時って凄く助かります」
「いえいえ、いつも年下のケイ君たちに頼ってるとこあるので、こういうときに役にたてて嬉しいです」
「ありがとうございます。とりあえず移動しましょう。練習時間はまだですが、もうみんないますので。グランドはこっちです」
「幸枝が京先輩、あぁ部のキャプテンなんですけどね、に話を通してくれてるので堂々と見学してください」
「本当にさっちゃんて気が回りますよね」
レイさんのこういう言いかたはドキっとする
「えぇマネージャーしてくれてますけど、凄く助かってますよ。ただ、すごい割りきり方するので、今じゃほとんどオレ達3人の専属みたいな感じですけどね」
「あ、レイさーん、葉子さーん」
真っ先にこちらに気づいて駆けて来るのは真由美だ。
「おはようございます。真由美ちゃん」
レイさんもニコやかに対応している。
「真由美ちゃんおはよう、やっぱり元気だね」
真由美は胸を張って
「あたしはいつだって元気ですよ」
言うとすぐにオレの横に来て左腕にぶら下がるように抱きついて来る。もはや定位置。オレも嬉しいので受け入れて頭を撫でる。
「「あはは、安定のラブラブっぷりだね」」
レイさんも葉子さんも苦笑いしながら歩いている。
「おはようございます。レイさん、葉子さん」
次に近づいてきたのは幸枝。ニッコリと笑顔で真由美とは方向性の違う可愛さを振りまいてくる。
「「さっちゃんもおはようございます」」
相変らず周りの男共の視線は射殺さんばかりだが、もう慣れた
慣れたはずだったんだが・・・そうか、今日は年上美人が2人追加だったな。いつもに数倍する怨嗟の視線に流石に『少し』怯んだ。が、まぁ今更だ。
雄二は最後にゆっくり歩いて来た。これもある意味平常運転か
「おはようございます。葉子さんレイさん」
「「おはようございます。雄二君」」
メンバーが揃ったので声を掛ける
「とりあえずこちらへ。うちの部のキャプテンに紹介します」
京先輩のもとへ
「京先輩、こちらが連絡してある今日の見学者で華桜女子大2年菅原レイさんと芳川葉子さんです。合宿時は空手部として同宿でしたので顔を合わせた事があるかもしれませんね」
京先輩は一瞬ちょっと微妙な顔をして、それでも笑顔で迎えてくれた
「ようこそ、高国高校陸上部へ。私がキャプテンの内藤京です。大学生の見学というのは珍しいので部員が色々寄ってくるかもしれませんが適当に吹っ飛ばしてやってください」
「京先輩、このおふたりは本気でやると、その実戦派空手のかたなので・・・部員に怪我したくなかったら手を出すなと注意しておいてください」
途中で京先輩の笑顔に気づいて、さすがに冗談かと途中で冗談に切り替えた。
そこまで話したところでレイさんから自己紹介をする
「はじめまして、華桜女子大学2年の菅原レイです。先日まで空手部に所属していました」
「はじめまして、よろしく」
京先輩の簡単な返事に続き
「はじめまして、レイと同じく華桜女子大学2年、芳川葉子です。私も先日まで空手部に所属していました。先日の合宿で機会がありこちらの部員の伊藤景さん、森川雄二さん、森川真由美さん、加藤幸枝さんとお知り会いになりまして今回のお話とさせていただきました。よろしくお願いします」
「はじめまして、よろしく」
お互いの自己紹介が終わると
「では、部員に紹介しますのでこちらへどうぞ」
部員が集まっている場所に誘導して行く
「時間にはまだ早いが、陸上部全員集合」
紹介が終わると野郎共が群がってくる、あいつら京先輩の『怪我したくなかったら手をだすな』って分かってるだろうな。あ、一部女子もぽーっとした顔で近寄ってきてる。ふたりとも大人の美人って感じだからな。とりあえず交流してもらおう。
「ふたりとも人気ですね」
幸枝が囁いた
「美人だからなぁ。野郎共が下手に手を出さないといいけど。痛い目をみるのは本人だけど」
「ケイ君、真由美ちゃん助けて」
あぁあ、レイさんが矢面に立って涙目だ
「レイさん、そいつらに遠慮いりませんぶっとばしてください。バラテで適当にやってれば散らせますよ」
「でも・・」
まぁほんの1週間前まで空手現役だった人に一般人をぶっ飛ばせはきついか。しかたない、嫌われ役するか。するっと間に入って
「おらぁ、てめぇら、良い加減にしろや」
軽く押し出す
「ケイおまえは真由美ちゃんがいるだろうが」
「そうだそうだ、しかも加藤さんまで独占しておいてさらに美人女子大生まで」
「うっせい、二人ともオレの友達だ。友達に嫌がらせするなら容赦しねぇぞ」
やり取りの間に雄二と真由美がふたりのガードに入ってくれた。
真由美がニッコリと冷たい笑みで
「みなさんマナーって知ってますか?」
はは、野郎共のおびえた顔が面白い。真由美の本気モードの殺気だからなぁ。この状態だと真由美が手をだすとえらいことになるから、どうしてもここで止めないとやばいが。あぁとまったな。胸をなでおろし、真由美を呼ぶ
「真由美、ちょっと来い。雄二ちょっとの間、二人のガード頼む」
手を上げる雄二にまかせて、誰にも声が聞こえない場所まで真由美を引っ張って行く
「真由美、オレがなんで引っ張ってきたか分かるよな」
「あ、あたしは手は出してないよ」
「一歩手前だっただろうが、しかも鬼を覗かせて。おまえ最近ちょっと緩んでないか。おまえは鬼が顔を出すと手加減できないんだから頼むよ。俺や雄二が前衛張る理由も分かってるんだろ」
「う~、ごめんなさい」
「わかればよろしい」
と頭を撫でる。鞭のあとには飴がいるよね。
「さ、ふたりのガードに入るぞ」
そこからは、野郎共の突撃もなく和気藹々の交流をしてもらった。
一部女子の質問に疑問のある部分があったが・・・
なんだよ、オレの愛人疑惑とかハーレムだとか、あ、レイさん悪乗りでキスしたとかウソ言わないで。逆に真由美の百合疑惑には苦笑いしかなかったが。彼氏持ちの女の子を百合とかなに考えてって言ったら、オレの女装写真をみせてきやがった。これで男相手でも百合だとかふざけんな、そしてその黒歴史写真消せや。え?これ以上言うとSNSで拡散する?勘弁してくださいお願いします。ん?その隣にある写真は駅で奈月が雄二にキスした瞬間じゃないか?ください。あ、くれるありがとう。即奈月に送る。返事が秒で返ってきた。何何?『すぐ消せ、今消せ、この世に残すな、すぐ消せ、今消せ、この世に残すな、すぐ消せ、今消せ、この世に残すな、すぐ消せ、今消せ、この世に残すな、すぐ消せ、今消せ、この世に残すな、すぐ消せ、今消せ、この世に残すな、すぐ消せ、今消せ、この世に残すな、すぐ消せ、今消せ、この世に残すな、すぐ消せ、今消せ、この世に残すな、』こえぇよ。『でも自分で保存しただろ』送信っと。あ、黙った。これは真由美と幸枝にも見せないとだな。ふたりを手招きする。すぐに来たふたりに写真を見せると
「おぉぉ、あたしにも頂戴」
「決定的瞬間ですね。良くとれましたねぇ。当然私にもくれますよね」
黒い笑顔の二人に送信っと。
そんな普段と違う交流におなかを抱えて笑っていると
「はーい、交流は楽しいけど、そろそろ練習に入るよ~。あ、お二人は今後は自由に遊びにきてくださいね。特に連絡なしで来てくれてもかまいませんので。部活やってるかどうかは、そちらの4人に聞いてもらえばいいですから」
そこから予定から30分遅れで通常通りの練習。なぜか他の部員の気合がいつもと違ったのは秘密にしておいてやろうと思う
「陸上の練習はこんな感じですね。これから昼ご飯食べて俺と真由美は軽音部で練習、雄二と幸枝は帰る感じです。ふたりはどうします?軽音部見に来るかもって先輩には言ってあるので見学もOKですよ」
「「是非見学させてください」」
おぉ、食い気味に来たな。
「昼ご飯はどうします。俺と真由美は弁当なんですけど」
「あ、じゃぁコンビニでお弁当買って・・・」
言いかけたレイさんに、葉子さんが肘打ち入れて、あ、あれは痛そうだ。レイさん涙目になってるじゃん
「近くで何か食べてきますね。何時頃始まるんですか?」
レイさんの様子は見えないフリして
「一応1時開始予定ですけど、多少遅れても平気です。戻られたら連絡ください。朝の場所に迎えに行きます」
「あはは、葉子さんに気をつかわれちゃったね」
真由美も気づいたようだ。
「このあたりはさすが大人の余裕かね?」
等と話しながラブラブお弁当タイムにいつもの中庭に移動した。
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