第110話

幸枝と茶番劇を演じていると

「「「くくくく、ぷぅふふふ」」」

後ろから、我慢が出来ないかのような笑い声。

「なんですか?後ろでいきなり」

「だ、だって……」

「にぃ、だんだんとさっちゃんねぇを振るイベントでの距離が近くなってる。振ってるのか受け入れてるのか分からないよ」

「はぁ?受け入れつつ振ってるに決まってるだろうが」

「何それ?」

奈月は完全に混乱しているけど、あぁやっぱり大人な二人はなんとなく理解してくれたみたいだ。

「奈月ちゃん。結局ケイ君は優しいって事ですよ」

いや葉子さん、そのセリフ照れるからいらないです。

「さ、パーティ始めますよ。リビングに行きましょう」

レイさんが、区切りをつけるように誘ってくれるので皆でリビングに移動した。リビングには既に準備がされていて

「すごいな。めっちゃ豪華じゃん」

テーブルの中央に蝋燭の立てられたデコレーションケーキ、それぞれの席には煮込み系の肉料理とオムライスかな?あ、オレの席のオムライスにはケチャップでなにか書いてある。

『HappyBirthday Kei ♡』

って、最後のハートで照れるってばさ。他にも大皿にパプリカボート?綺麗に出来てる。あれは鳥唐揚げと、カルパッチョサラダかな?何かパイみたいなのもあるな、食事用ってことは多分ミートパイかな。あ、コロッケぽいのもある。けどちょっと違う?

「あの、コロッケ、普通のとちょっと違って見えるんだけど?」

「あぁそれはね真由美ちゃんがちょっと変わったのを作りたいって言って……」

「言っちゃダメ。ケイ、ちゃんと美味しく出来たから、食べてからのお楽しみにしてね」

「あぁ分かったよ。楽しみにしてる。それにしても随分と凝った料理が多いね。大変だったでしょ」

「そりゃケイ君に食べてもらうって思ったら、気合入っちゃいますよ。私たちの胃袋掴まれてるので、お返しにケイ君の胃袋掴みに来てるんですからね。でも人数いるのでケイ君が言うほど大変じゃなかったですよ」

幸枝も中々に気合が入っているらしい。

「さぁさぁ、ケイ君座って。今日の主役なんですから」

皆が座ると、ケーキの蝋燭に火が灯され。あ、真由美がギター持ち出した

「ハッピーバースデーツゥユゥ♪……ハッピーバースデー ディア ケイ(君)(おにぃ)」

「さぁ、一気に吹き消してね」

真由美の言葉に続いて、蝋燭の火を吹き消す。パチパチと拍手の中

「ありがとう、すごく嬉しい。これからもよろしく。かんぱい」

感謝の気持ちを短い言葉にして伝える。それぞれの手元の飲み物に口をつけ

「じゃぁ料理が冷める前に食べましょう」

葉子さんの言葉でみんなが

「いただきまーす」

みんなの力作をひとつひとつ味わう。最初はやはり手元にあるオムライス。

「オムライスは、あれ?オレが作るのに味が良く似てるな。ひょっとしてこれ作ったの奈月か?」

右隣の席から声があがった

「はーい、はーい。あたしが頑張って作ったのよ。おにぃみたいにフワフワはあたしには無理なので、固焼きのオムレツになったけど」

「いや、十分美味しいよ。奈月も料理上手になったな」

褒めつつ、頭を撫でると、奈月も嬉しそうにすり寄ってくる。

次はオムライスの隣の肉の煮込み料理。箸で取ろうとするとホロっと崩れそうになるのをなんとか口に運ぶ

「お、これは牛肉の赤ワイン煮かな?ワインを買わないといけないからレイさんか葉子さんだと思うけど。上手に煮込んであって美味しいね」

「それは、私が作りました。時間足りるか不安だったんですけど、圧力釜があったのでしっかり煮込めてよかったです」

レイさんの返事に

「さすが大人の女性て感じの料理で素敵です」

あ、レイさんが照れて赤くなった。可愛いとこあるんだよねレイさん。

さて次はさっきから気になっている真由美作のコロッケぽいもの

「あ、コロッケじゃなくて白身魚にエスニック風の香辛料なんだ。すごく美味しい。結構難しかったんじゃないかこれ?」

驚いて真由美を見ると。あ、ドヤ顔してる

「へへーん。あたしだって料理上手になってるんですからね」

「ありがとう、オレのために。嬉しいよ」

そういって抱き寄せて頬にキスする。本当は口にしたかったけど少し自重。

そうしていると

「ケイ君これも食べてよ。これ私が作ったパプリカボートなの」

取り皿に取り分けたパプリカボートを幸枝が渡してきた。

「お、アンチョビのパプリカボートなんだな。結構いけるじゃん。でもアンチョビにちょっと手が入ってるな。塩味が少し薄まって……これ昆布出汁?」

ちょっと驚いた顔の幸枝

「分かるの?そんなにはっきり表に出てないと思うんだけど」

「そりゃ、こんだけ美味しくできてれば……でも幸枝も料理できるんだな。勉強も運動も出来る有能な陸上部マネージャーで料理も出来るって完璧超人じゃん」

「うわ、ケイ君に褒められちゃった。すごい嬉しい。そんな私なら彼女にしてくれるよね。今日こそね」

甘い声で後ろから抱きついて来る。どんな顔してるかは想像できるのでチョップをと思ったけど、今回は褒めるのを優先して肩越しに頭を撫でる。

「そこでしれっと告白に繋げんな。彼女枠は真由美でいっぱいだって言ってるだろうが」

「えへ、でも今日はチョップじゃなくて頭ナデナデなのね。ちょっとはデレた?」

「デレじゃないっての。美味しい料理作ってくれたのにチョップは出来ないからな。でも彼女には出来ないからな」

「ちぇぇ。一回くらいオーケーしてよぉ」

「ダメ」

「あはは、あなた達相変わらずねぇ」

葉子さんが楽しそうに声を掛けてくれた。



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長くなりそうなので、このあたりで分割します

後半は夜には上げられるといいな……

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