第134話

「「おはよおございまーす」」

「おはよう、いらっしゃい、レイさん、葉子さん」

「今日は車を置かせてもらっちゃって。ありがとうね」

「いえいえ、どうせ駐車スペース空いてるんで、気にしないで。それより、とりあえず上がって」

体育祭当日、駐車場をどうしようという相談を受け、学校は家族の車優先の駐車スペースになっているため、家の空いている駐車スペースを使ってもらおうということになった。ちなみに母さんは、仕事が抜けられず見に来られないと嘆いていた。

ふたりを玄関から招き入れると

「わーい、レイねぇ、葉子ねぇ。いらっしゃーい」

早速奈月がまとわりついて来るのをかわしつつ、リビングに案内する。そこには当然のように、幼馴染にしてオレの彼女、真由美がお茶の準備をしている。

「レイさん、葉子さんおはようございます」

それを見たふたりはクスクスと笑いながら

「もう、真由美ちゃんは、ほとんどケイ君の奥さんね」

それに奈月が乗って

「そうなんですよ、もう朝からいちゃいちゃと、あたしがいつおばさんになるのかとヒヤヒヤしてるんですから」

「してねぇから。オレ達はまだ清い交際だから」

「あれは清いって言うのかなぁ。がんばってグレーじゃない?」

「なんだその、法の隙間を狙っているような表現は」

「だって、風船のいるようなことまではしてなくても、あgl:;k」

真由美がとっさに奈月の口を塞ぐ。

「なっちゃん、恋人同士の行為をぺらぺらしゃべるのはどうかなって思うの」

真由美の威嚇に、コクコクと無言で頷く奈月。レイさん葉子さんのふたりはその様子を見て何かを察したように生暖かい笑顔で見守っていた。しかしオレ達としては、ここは逃げの一手。

「じゃぁオレ達は先に行くので、レイさんと葉子さんは奈月と一緒に来て。8時50分から開会式。競技開始は9時15分予定ね。真由美行こう」

そそくさと、オレ達は逃げ出し徒歩で学校に向かう。

教室に入ると雄二と正樹がなにやら話しこんでいた。

「雄二、正樹おはよぉ」

「村上君、おはよう」

「おぉ、おはよぉ」

「何かあったのか?」

「いやな、野末が風邪で休みなんだと」

正樹の答えに

「あぁあいつの種目なんだっけ」

「100」

「だけ?」

「だけ」

「いいよ、オレにまわせ。適当に走ってやる」

「おぉさすがケイ。でも、大丈夫か」

なにやら心配そうにする正樹に聞き返す

「何が」

「いや、おまえら結構出場する種目多いだろ。スタミナとかさ」

それには雄二が

「あぁ、そういうのケイには遠慮いらないよ。その辺はスタミナお化けだから」

「おい雄二。言いかた。」

「あぁまぁいいや。とりあえず助かった。ケイよろしく」

「あぁただし、100だと野球部かサッカー部あたりにオレより速いやついるかもだから1位は期待すんなよ」

そんな話をしていると時間になる。体育祭実行委員の正樹と神埼さんが呼びかけ始めた。

「時間なのでグランドに出てください」

グランドに出て整列し入退場門から順次入場。開会式が始まる。校長先生や来賓の何やら偉い人が長々としゃべっているのをボーっと聞き流す。最後にラジオ体操を行い。3年生から順次退場した。そしていきなり出番だ。クラス対抗リレー。学年別に順位を競ったあと上位チームで更に校内順位を競うという中々に熱い競技になっている。男女混合なのも盛り上がるところか

「よし、行こうぜ」

真由美、雄二、松山楓さんに声を掛ける。トラック半周づつのリレーなので200mトラックの2箇所に別れる。1走は松山さん、2走真由美、3走雄二、アンカーがオレだ。松山さんもテニス部という事で、そこそこ走れる。このチームならよほどの相手が出てこなければ1位かなぁなんて考えていた。スターターピストルが響きスタートした。あれ?1走、ひとりエラク早い人が。見ると幸枝だった。ぶっちぎりの1位でバトンを渡す幸枝を呆然とみていると、約1秒遅れの2位で松山さんから真由美にバトンが渡る。短距離で1秒は大きいけれど、悪いな、真由美が相手だとほら、あっという間に差が縮まっている。安心しながら幸枝に声を掛ける

「幸枝、速いな」

今回ばかりは、胸を張ってドヤ顔で言ってきた。

「ふふん、1年生女子で足が速いのは真由美ちゃんだけじゃないんですよ」

「あぁびっくりしたよ。っとコースに出ないとだ。また後でな」

「はーい、今回は敵チームなので頑張らなくていいですよ」

と悪戯っぽい笑顔で見送ってくれた。コースに出る前に松山さんに一言声を掛けておく

「松山さん、お疲れ。1位の幸枝が速すぎたね。でも2位なら十分逆転するよ。じゃ、コースに出るね」

「はーい、伊藤君頑張ってね」

見ると、雄二に1位で真由美がバトンを渡すところだった。やっぱり真由美速いなぁ。

「よし」

アンカーで速そうなのは、野球部の次期エース候補がいるな。でも、雄二が十分なアドバンテージを稼いでくれている、これなら普通にバトンを受け取れば十分1位だろう。

「ケイ頼むぞ」

「おう」

一言とともにバトンを受け取り走る。チラチラと後ろを確認すると、やはり野球部のエース候補、名前なんて言ったかな、あいつが速い。多分100m単独ならオレより速いな。でも悪いがこれはリレー、前走者の稼いでくれたマージンで余裕の

「1位B組」

「2位E組」

1位と2位のチームを除き退場して行く1年生チーム。待機場所に座り2,3年生の結果を待つ間、雑談に花を咲かす。

「B組ちょっとずるくない~」

E組の女子から笑いながら声が掛かる

「何がだよ」

軽く返す雄二

「え~、だって陸上部3人揃えるってちょっとガチすぎじゃーん」

「ふふん、そこは組み分けの不幸を恨むんだね」

珍しく雄二が冗談で返している。ん?幸枝がちょいちょいと手招きしてるな。真由美と一緒にそばに行くと。

「あの子、田辺智子って言うんだけど。多分雄二君狙ってるから気を付けて」

「あぁそういうのか。了解」


------------------------------------------------------------------------

次話に続きます

体育祭編は多分4話くらい

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る