第72話

「と言うわけで、今日の夜、ミニライブやります。よければ見に来てください」

一瞬の間があり

「えぇぇ、まじまじ?」

「いつの間に、仲良くなったの?」

「あのSJだよな。SJと合同ってマジか」

ふむ?SJとはなんぞ?真由美と顔を見合わせてふたりで???な顔でいると

「あぁもう。あんたたち無自覚にもほどがあるわよ」

桐原先輩が興奮状態で叫んでいるが、知らないものは知らないのだ。

「SJってのはね、うちのKKシーズンと並んで有名なグループよ。うちの学校にもファンがいっぱいいるんだからね」

あぁそういう

「なるほどKKシーズンの先輩達と似た匂いがしたわけだ・・・」

オレも真由美も苦笑いだ。そもそもがオレ達はKKシーズンの先輩達のそばで練習しているのである意味一般の高校生グループの演奏なんか知らないんだよな。

「そもそも、あのSJとどうして仲良くなれたのよ」

先輩女子の・・・あぁ名前忘れた。あとでコッソリ真由美に聞いておこう、が詰め寄ってきた

「いえ、その、ここのホテルってカラオケルームってあるじゃないですか。初日と二日目は屋外で練習してたんですが、できれば屋内で練習したいなって借りようとしたら先にむこうが借りてて、一緒に使わせてもらえるようにお願いしたらって感じですねぇ」

「あぁでも、そっか、こっちもケイだもんね」

ん?なんでオレ?

「あの、先輩、そのオレだからってのはなんですか?」

「あぁ知らぬは本人ばかりなりってヤツかぁ。ケイ君ね幻のボーカルって言われてるのよ」

「はぁ?なんで?」

「KKシーズンのミニライブで1曲だけ歌った。ボーカル。しかもかなーり受けたそうじゃない。そんなボーカルが、それ以降一回もKKシーズンと行動を共にしていない。それどころか歌ったって情報もない。それで幻のボーカル『ケイ』ってなってるの。たぶんSJ側も知ってるんじゃないかな。何か言われなかった?」

「あ、そういえば初日に練習している時にオレの事を『ケイ』かって聞いてきたな。あの時は単準に名前を確認にきただけかと思ったんだけど」

「あはは、それ完全にロックオンされてたやつじゃん」

「で合同ライブってどんなのやるのさ?」

桐原先輩が近い。真由美が即間に入って、オレに抱きつきつつ威嚇する

「先輩、近すぎです。ケイはあたしの彼なんですからね」

桐原先輩が距離が近いのは珍しいな・・・

「えーと、最初にオレと真由美で4曲演奏して、そのあと向こうにわたしてタブン4曲くらい、最後に彼らの未公開オリジナルをオレと真由美がボーカルでって感じの予定ですね」

バッと近づいてくる先輩女子たち

「未公開オリジナル?」

「え、えぇなんでも向こうのメンバーだとイメージ通りのキーで歌えないとかで。一度だけでもイメージ通りに演奏したいと言われて」

「ね、ね。練習の時ので良いので録音とかないの?」

ギクッ。

「え~と・・・」

真由美と顔を見合わせる

「その、無い事はないんですが」

「「「「みせて」」」」

「ダメです」

「どうして、別にいいじゃないの」

「練習途中のなんて恥ずかしいからダメです」

うん、恥ずかしいなあれは

「良いじゃん、良いじゃん見せてよ」

「ケイのバッグからディスク発見~」

「誰だ、人のバッグ勝手に漁ってるのは~」

取り返しに行くにも、敵が多すぎる

「ダメ~、やめてぇ」

真由美の懇願もむなしく再生されるディスク

最初は

「おーぉ、すげぇ」

とか

「きれぃな音~」

「盛り上がりすげぇな」

だったが、再生が終わると。みんな気まずい顔で

「「「「「「ごめん」」」」」」

さすがに土下座せんばかりの勢いの謝罪だ。

泣きそうな顔で真由美が

「だから恥しいって嫌だって言ったのにぃ」

真由美を抱き寄せながら。

「ごめんよ、オレがバッグを開けたら簡単に見つかるようなところにしまっておいたから」

「うぅん、ケイは悪くない」

真由美を抱きしめ頭をなでながら、周りに目配せをして退室してくれるように訴える。皆がそっと部屋を出て行ってくれる。幸枝がちょっと拗ねて、でもちょっと羨ましげな表情で出て行き、最後に京先輩がウィンクひとつしながらそっとドアを閉めてくれた。

「真由美、オレも恥しかったけどさ、でもなんていうかな、真由美はオレのものだって見せ付けているような気持ちもあってさ。そのなんて言ったらいいかな」

耳まで真っ赤なままで真由美も

「そ、それはそのあたしも、ケイを独占している感じがあって。優越感?みたいのもあって・・・」

二人見つめあい、そのまま唇を重ねた。いつも以上に自分の彼女だと感じて幸せだった。

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