第60話

「あ、そこの4人どこ行ってたのかな?」

京先輩に見つかってしまった

「あぁ、その。昨日なんですけど華桜女子大空手部の人と知り合いまして。練習を見に来ないかと誘われたんです。で、今見学の帰りで・・・」

こっそり出かけたのはまずかったな。京先輩にくらいは一言必要だったと反省。

「自由時間に他校との交流は良いけど、ホテルから離れるなら連絡してね。心配するから」

「「「「はい。ごめんなさい。次からは気をつけます」」」」

4人揃って頭を下げる。悪いことをしたら謝罪する、これ大事。

「あと30分くらいで朝食だから遅れないようにね」

「「「「はーい」」」」

「んじゃ飯前に軽くシャワー浴びてくるか」

部屋に戻ると何していたのかだの聞かれたので、華桜女子大空手部の練習の見学に誘われていつもの4人で行ってきたとだけ答えておいた。羨ましいだの、彼女持ちの癖にだの言われたがスルー。シャワーを浴びて時間通りに朝食会場へ。当然、そこには当事者がいるわけで・・・

「あ、伊藤君、真由美ちゃん、雄二君も一緒だね。あれ?加藤さんは?」

「ん?あぁレイさん、さっきはお世話様。幸枝は後から来るよ。幸枝に何か用かな?」

「いえいえ、私が会うときはいつも4人おそろいでしたので、いつも4人一緒に行動されているのかと思いまして」

「あぁ、そうだねぇ。最近は、わりと4人セットな感じで居ること多いかな」

「そうなんですね、仲の良いお友達関係、羨ましいです」

朝の練習を思い出し、まぁあれだとレイさん浮くかぁと思い。

「良かったら自由時間とか一緒に遊びます?」

「え、良いんですか。葉子も一緒にいいですか?」

「いいですよ、な、良いよな」

と、ここまで勝手に話を進めていたのに気付き我が幼馴染ズに声を掛ける。

ふと気付くとまわりが静かだ。何かあったか?周囲を見回すとなんか注目浴びてる。いつも通りのポジションで左腕にぶら下がってる真由美に

「なぁ真由美。オレ何かしでかした?急に注目されてるみたいなんだけど」

「特に変なことはしてないと思うよ。理由は想像つくけど、どうにもならないから放置でいいんじゃない。あとレイさんと葉子さんなら一緒に遊ぶのは良いよ。でも他の連中は無理だからね」

最後の言葉には殺気すら伴っていた。

「オーケーオーケー、オレも他の人はちょっと無理ゲーな感じだからそれで良いよ。雄二もいいかな?」

「僕も良いよ」

「あとは・・・」

そんな話をしているところへ幸枝がやってきたので声を掛ける

「幸枝こっちだ」

「おまたせ。あれ?レイさん、どうしたんですか」

「レイさんや葉子さんと自由時間に一緒に遊ぼうって話をしてたとこ。幸枝もかまわないだろ」

「え、えぇ、私はかまわないけど、良いんですか。多分私たちってそちらの部の方々に良い印象ないですよね」

これは一応念のためってとこだろう。幸枝なら多分レイさんや葉子さんが向こうに馴染めていない事に気付いているだろう。

「それは気にしないでください。どのみち・・・」

「どのみち、部の方々とは折り合いが悪い。ですか?」

幸枝はレイさんの言葉を苦笑しながら途中でさえぎった。

「えぇ、彼女達は競技スポーツとしての空手を楽しんでいます。それが悪いとは言いませんが、私の求める実戦派空手とは方向性が違いすぎるので」

「まぁこんなところで立ち話もなんです。注目されているし食事を受け取ってすわりませんか」

これだけ注目されている中で話す内容ではないのでとりあえず話を中断させるために割り込む。

「じゃぁレイさんは、手による頭部への攻撃禁止だけのフルコン大会で高校時代に全国4位なんですね」

雄二の言葉に

「えぇ、それで大学入ってからも空手部にと思ったのですけど、うちの大学だと空手部は1つしかなくて・・・」

「スポーツ空手だったと。まぁ最近の武道全般の流れ的に華桜女子じゃぁ仕方ないっちゃ仕方ないでしょうねぇ」

「えぇ、そこは諦めてます。それより、あなたがた3人。空手は・・」

レイさんが言いかけたところに

「「「あ、ごめん、その話は無しで」」」

3人の声が重なる。レイさんは少し不満そうな顔をするけれども、申し訳ないがこの話だけはしたくない。

「あ、そうそう、自由時間の話なんですが、たしか今日、うちは午後2時半くらいから自由時間なはずなので、予定が合えば、そのあと遊びませんか」

話題を変えて

「良いですね。何か予定されているんですか?」

「ここから歩いて15分くらいのところにオルゴールの森ってのがあるので、今日はそこに行ってみようかって言ってるんです。3時半出発で現地で1時間ちょっと遊べるので良いかなって」

「あ、行ってみたいです」

あとは何気ないおしゃべりをして連絡先の交換をして解散した。

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