第9話

 「ふぅ、つっかれたぁ」

「まぁ受験明けまだ1ヶ月経ってないからなぁ。調子戻りきってないからなぁ。でも真由美はまだ短距離の大会前調整だからマシじゃね」

「あぁそういうこと言うんだ。中距離だってきつい練習はしないでしょ。てか中長距離は大会直前は疲れを抜くために思いっきり減らすじゃん」

「それでもきついのはきついんだぞ」

真由美に突っ込まれたケイは頭をポリポリとかいてごまかそうとし、雄二はフォローに入った。

「まぁそうなんだけどさ、そう言っても高校の練習量だからなぁ」

体の出来上がっていない中学生と高校生では基本の練習の質量共に違うため、中学で実績のある3人とはいえ、きついものはきつい。

「まぁ家帰ってさっさと休もうぜ、あ、それとも久し振りに街道屋でラーメンでも食って行くか」

「あぁ雄二ごめん、オレちょっと軽音部覗いていきたい」

「じゃぁあたしも一緒に覗いていっていい?」

少しでも一緒に居たいのだろう真由美が乗る

「んじゃ、オレは先に帰るな。ケイ、遅くなるだろうから真由美を家まで送ってきてくれよ」

時計を見ると、もう6時を回っていたし、付き合い始めたばかりのふたりをふたりきりにしてやろうとの気遣いもあるのだろう、雄二はそういって帰っていった。




「こんにちわ。今日まだやってますか」

「おぉケイ君。見学以来だね。おつれさんは彼女かな。今日は、まだあと30分くらいはやるよ。普段ならもう少し早いんだけどね。ゴールデンウィークにミニライブをやるんでね、その準備にね」

「あ、内木戸先輩。こんにちわ。はい、こいつはオレの彼女で森川真由美って言います。ミニライブですか。どこでやるんですか」

ちょっと照れながら真由美を紹介し話を続ける。真由美はいきなり彼女として紹介されて照れたのか真っ赤になってうつむいてしまった。

「駅前にツインエンジェルって小さいホールがあってね。そこで5月3日の3時から4時までの1時間だね。良かったら聴きにきてくれよ」

「はい、ぜひ。それとオレ陸上部に正式に入ったんですよね。で、こないだ掛け持ちでも良いとは言ってもらいましたけど、出席もそんなに出来ないかもなんですがそれでもよければ入部お願いしたいんですが」

「お、うれしいね。大丈夫、陸上部の空いてるときだけで良いよ。ふたりとも入ってくれるのかな」

「あ、オレは入りますけど。真由美はどうする」

「どうしよう。部員以外は入室禁止とかあります?」

「ナイナイ。とくに森川さんみたいな可愛い女の子は大歓迎だよ」

「そんな可愛いなんて。じゃぁすみませんけど、しばらくは入部保留で、でも空いてる時間は出来るだけくるようにするというのは許してもらえますか」

「OK、それでいいよ。じゃぁケイ君は入部届け書いてね。書けたら部員にふたりを紹介するね」



「練習途中だけど、ちょっと注目~」

入部届けを書くと内木戸部長が声をかけた

「新入部員を紹介するよ。伊藤景君、陸上部と掛け持ち部員ね」

「伊藤景です。クラスは1年B組です。ギター弾いてみたいと思って入部を決めました。まだギターを触ったこともないど初心者ですが、よろしくお願いします」

「もうひとり体験入部で森川真由美さん。彼女も陸上部と掛け持ちね。伊藤君の彼女だそうだから可愛いからって手をだすなよぉ」

「紹介いただきました森川真由美です。ケイと同じ1年B組です。陸上部メインになりますけど、できるだけこちらにも出るようにします。よろしくお願いします」

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