第10話

 紹介が終わると内木戸先輩は

「さて、せっかく入部してくれたんだから少し楽器を触ってみようか」

「「え、良いんですか」」

「とは言っても、触ってもらうのは先輩達が置いていった古いギターくらいだけどね」

「それでもドキドキします」

「椅子にすわって弾くのが安定するんで最初はすわって練習するのがいいよ。ステージでは演出の都合でみんな立って弾くけど初心者はすわって練習するのが良いかな。椅子に浅くすわって……」

オレと真由美は部活時間の終わりまでギターを練習させてもらった




「うぅ指先が痛いよぉ」

「あはは、初めてギターを弾くとみんなそうなるよ。慣れれば痛くならないくなるから。それに真由美ちゃんは初めての割りにうまく弾けてたよ」

泣き言を言う真由美に内木戸先輩が笑いかけた。

「え?えへへへ」

それに真由美がちょっと照れ笑いを返していた。

あれ?なんかモヤっとした。

そこにショートボブに細身で女性としては背の高い神無月美穂先輩が声を掛けてきた。

「真由美ちゃんは仮入部だからしばらくは部室にある先輩方の置いていった楽器で練習するとして、ケイ君はギター志望で良いのかな?」

「はい、そのつもりです」

「じゃぁ自分の楽器を早めに手に入れないとね。今度見にいこうか」

「ありがとうございます」

ふっと真由美をみると、複雑な顔をしていた。

それにしても軽音部は新入部員の男子生徒を女先輩が、女生徒を男先輩が声を掛けて面倒を見る習慣でもあるのだろうか?普通は最初は男子に男子、女子に女子じゃないのかな……

「早速だけど、今度の土曜日とかあいてる?楽器屋さん案内するよ」

「あぁ神無月先輩すみません。今週末は陸上のほうが大会なんです」

「そっか、1年生は先輩の応援にいかないといけないもんね」

「あぁその、オレも真由美も出場するんで。その……」

「え?1年生なのに?」

「あぁそのまぁ、はい」

「へぇすごいね。どこでやるの?応援にいくよ」

いつの間にかオレの腕を抱きつくように抱え込んでいる神無月先輩に

「ちょ、ちょっと先輩近いです」

おもわず離れようとする俺と

「先輩、ケイはあたしの彼なんですけど」

じっとりとにらみ付ける真由美





帰り道

「えらい目にあったぁ……」

「ふん、ケイは鼻の下のばしちゃってたくせに」

「おいおい、それはないだろ」

「ふーんだ」

「真由美」

「だってさ、あんな大人っぽい先輩に……」

完全に拗ねてしまっていた。

しかたないな

先を言わせること無く、強引に抱き寄せ抱きしめた

「10年以上のつきあいのオレを信じられない?俺の彼女は真由美だけだよ」

ちょっとびっくりしたような顔を見せた真由美だけれど、そのままオレの胸に顔をうずめてうなずいた。



「あぁぁ、また公衆の面前で抱き合ってるぅ」

「神埼さん……」

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