第102話

「完成。相変わらず真由美ちゃん素材が良いから映えるわぁ」

幸枝がニコニコとやり切った感を出している。実際メイクした真由美は普段の活動的健康的な魅力に加えて清楚というかお嬢様感が出るというか自分の彼女ながら見惚れてしまう。

「益々キレカワで見惚れちゃったよ。真由美可愛いよ」

「もう、みんなの前で。恥ずかしいじゃない」

と悶える真由美に

「「「今更何を言ってる」」」

雄二、奈月、幸枝の声がハモる。

レイさんと葉子さんはちょっと苦笑いしながら

「ねぇあのふたりっていつもあんな感じなの?」

ちょっと拗ねた感じで答えるのは幸枝

「あぁまぁ、あのくらいは平常運転ですね。私の前であれはかなりデリカシーが無いと思うんですけどねぇ。でもそんなふたりも大好きなんですよね」

今度はレイさんと葉子さんの声がハモる

「「「さっちゃんも大概難儀な性格してますよね」」

いつの間にか空になっているクッキーがいれてあった皿や飲み終えて空になったカップを引き取って流しに置き、サッと洗ってかごに並べる。

「さぁ、みんな準備できたようだし、出かけよう」


葉子さんの運転するワンボックスに乗り込み。

「「「「「今日もお世話に成ります」」」」」

「くすくす、前にも言ったけど、気にしないで。みんなと一緒にいるのとても楽しいし、ケイ君達にはお世話になっているしね」

綺麗なウィンクで答えてくれる葉子さん。このあたりはやっぱり年上の大学生だなぁ。そんなことを考えていると。レイさんが

「あ、そうそう。道場決めましたよ」

「お、どこにされたんですか」

「すぐ近くですよ。こちらに近いので通いながら、時々遊びに来られるかなって葉子とも話しているんです」

オレ、真由美、雄二が顔を見合わせる。このあたりで実戦派空手道場ってあそこだよなぁ

「で、どこの道場にしたんですか?」

おそるおそる聞いてみた

「えぇ真桜光て道場です」

レイさんがあっさりと、さらに葉子さんが

「かなり厳しいところですけど、いつでも見学OKみたいなので、みなさんも是非いらしてください」

オレ達3人は微妙な雰囲気になってしまった。そこに奈月が

「真桜光っておにぃ達が昔通ってたとこじゃん。二人も実戦派なんですね」

あっさりとバラした。

「へぇ、じゃぁ3人は道場の人たちと顔見知りなんですね」

葉子さんの言葉にちょっと微妙な顔になるオレ達3人

「まぁ、はい。それなりには」

「じゃぁ一度一緒に来てくださいよ」

それは気が重いので

「ちょっと訳ありなんで、その覚悟が決まるまで待ってください」

オレの言葉に雄二と真由美が同意するように頷く。

「何か悪さしちゃった系ですか?」

「いや、そういう訳じゃないんですけど……」

そこに何かを察したレイさんが助け舟を出してくれた

「葉子、人には触られたくない事ってあるものよ。覚悟が決まったら一緒に行ってくれるって言っているんだから、それ以上は」

ちょっと微妙な空気になったので話題の転換を

「そういえば、今日行く遊園地って一昨年くらいに出来た人気の遊園地ですよね」

レイさんが乗ってくれた

「そう、人気の小説なんかをモチーフにしたアトラクションが人気ですよね」

「魔法の乗り物に変わった自動車で空飛ぶ設定のアトラクションとか人気だよね」

そのあとは遊園地の話などの雑談をしながら移動できた。


駐車場にクルマを止め、それぞれに小さな荷物を持って入門ゲート方向にむかった。その間も和やかに今日の遊園地を楽しみにしている話をしてもりあがりなかなか雰囲気もいい。

チケットを買ってゲートをくぐると

「ねぇねぇ最初はどれ行く?」

オレの左腕にぶら下がりながら興奮気味に話す真由美に

「まず、人気があって並ぶ時間の長いアトラクションのファストパスとって、そのあいだに次のを決めるのが良いと思います」

落ち着いた感じで案を出す葉子さん。

「じゃぁ、一番人気のクラウドマウンテンにゴーだね」

クラウドマウンテンはこの遊園地の1番人気のアトラクション。積乱雲を模したコースを雲の山の中をコースターが走り回りその間に襲ってくる敵を各座席に着いているレーザー砲で撃退するという設定でその撃退スコアによってプライズがもらえる。子供から大人まで人気がある。スコア設定も単独、シート単位、グループ単位と選べるのも人気の秘密のようだ。当然オレ達が到着したときには長蛇の列になっていたのでファストパスをもらって別のアトラクションに移動する。ファストパスは入場時に専用のパスポートを購入しておくことが必要だけれど、それがあれば一度に一つだけ確保できる順番待ちの番号取りみたいなもの。こういった待ち時間の長いアトラクションで長々と待つのを回避しながら他で遊べるのがメリット。ファストパスの待ち時間は約2時間。そのあいだに2つ3つ、いやひょっとすると4つくらいアトラクション遊べそうだ。そうこうしている間に女性陣の間でなにやら計画が出来上がったようで

レイさんがまとめて

「じゃぁ、クラウドマウンテンまでに人気はそこそこだけど楽しそうなアトラクションを3~4つ遊んで、クラウドマウンテン乗ったら。2番人気のキューチューコースターのファストパス確保しておいて、お昼ご飯。時間見て2つくらいアトラクション乗って。キューチューコースター。次に4番人気のM&Sスペースクライシスのファストパス確保、ここあたりからは時間みて適当にって感じで」

「最初は何にします?」

幸枝が問いかけたので、

「とりあえず、みんな乗りたいもの言って多数決しようか」

オレが提案すると、まっさきに真由美が

「このクラッシュフィールドっての乗りたい」

一人乗りのちょっと本格的なカートみたいだ。

「他は?何かある?」

奈月が

「このファンタジークルーズってのにちょっと興味ある」

ふむ、10人乗りのボートでのんびりストーリーの世界を回るらしい

次は葉子さん

「私はこのカルティックパビリオンを見てみたいです」

小説の中の妖怪やアンデッド等を倒しながら、時には隠れて進むホラーハウス???ホラーハウス。ビクッ思わず身体が反応してしまう。それを見て幼馴染2人と奈月が

「「「ケイ(にぃ)はホラー系苦手だからねぇ」」」

それを聞いた他の3人が

「「「うそぉ、ケイ君って怖いもの無しの無双主人公だと思ってた」」」

「悪いか。科学で証明できないものは苦手なんだよ。いやもう単純に生理的に無理なの。そっちだけはカンベンして」

あ、逆効果だった??にやぁっと悪い笑顔を浮かべた6人。ウソだろ全員敵にまわったの?そして左腕を真由美に右腕を幸枝につかまれ、後ろからレイさん葉子さんに押され雄二と奈月に先導されてカルティックパビリオンなるホラーハウスに連れ込まれた。足が震える。目が霞む。そのくせ見たくないもの聞きたくない音だけは、はっきり聞こえるはっきり見える。

最初の部屋はゾンビ部屋だ。ぐちゃぐちゃと嫌な音をさせながら迫る人ならざる人型

『ぎゅわぁぁぎゅぅ』

理解できない声を上げながら迫る異形

「うわぁぁぁ。くるなぁ」

一部屋目で涙目だ。帰りたい。腕を掴んでいる人に抱きついてしまう。怖いダメダメ。

「助けて。お願い」

「ケイ君可愛い」

なんか幸枝の声が聞こえて気がする……

「むぅ抱きつくならあたしでしょぉ」

左腕が引っ張られる。わからないこわい。

「くるなぁ。いやぁ」

真由美が声をかけてきた

「ほらケイ、ひと部屋目終わりよ。出口からでましょ」

コクコクうなずくことしか出来ない。

2部屋目はゴースト部屋。

半透明のゴーストがヒュンヒュン飛び回っている。出口は向こう側でしかもデュラハンが剣を構えている。

「ムリムリムリ帰るぅ」

歯がカチカチと鳴り膝が砕ける。目の前の何かにしがみ付き抱きつく

「ケイ君、大丈夫よ」

これはレイさんの声?

だめわからない

「いやぁ、だめぇ」

抱きつき顔を埋める。

「ダメ、怖いぃ」

「ケイ君大丈夫、一緒に行ってあげるから」

涙目でうなずくことしか出来ない。

次の部屋は病室のようだ、中央のベッドに何かが寝ている。

『ひゃぁはははは』

突然甲高い笑い声が響いた。パニックになったオレは、目の前の誰かにしがみ付くしか出来ず

「うわぁぁやめぇやめ」






カルティックパビリオンから脱出した時には既に魂が抜けたようになってしまった。

誰だか分からない人にしがみ付きどうにか外に出ると近くのベンチに崩れ落ち

「あぁ太陽ってすばらしい」

たった10分足らずがまるで1日かのような体験だった。

「「「「「ケイ(君)(にぃ)可愛い♡」」」」

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