第103話
カルティックパビリオンを出てしばらく休み、どうにか再起動したオレの前には何故か頬を染めた女性陣とそれを呆れたような目で見守る雄二がいた
「あぁ、なぁ雄二オレやらかした?」
苦笑しながら肩をすくめる雄二にやらかした事を確信し頭を抱える。何をやらかしたのか、ほぼ記憶にない。が、過去の例からすると碌でもない事に間違い無い。となればすべき事はひとつ。
「ごめん」
みんなに向けて頭を下げる。
「オレだめなんだ。ホラー系は本当に。頭の中が真っ白になって自分でなにやってたのかも分からなくなる。今日もオレが何をしたのか分からない。でも皆の反応からして何かやらかしたんだろう。だから、ごめん。許されないことをしたかもしれない、それでも謝ることしか出来ない。ごめん」
最初に口を開いたのは真由美
「いやぁあたしはこうなる事わかっててケイを引っ張り込んだし。その普段の完璧みたいなケイだけじゃなくてダメダメなケイも好きだから。あたしこそ、そのごめんなさい」
続けて奈月
「その、にぃ。あたしも真由美ねぇと一緒でにぃがああなることは知ってて無理強いしたし。そのちょっと役得も……。にぃの事は大好きなのはかわらない。だから、そのあたしもごめんさない」
それに続いて葉子さんが
「嫌がっているケイ君を無理やり連れ込んだのは私達なんです。だから、ごめんなさい。その、あたしも別にこんなことでケイ君のこと嫌いになんてなりませんから。むしろケイ君にも弱いところがあるって知って親近感ましたというか、そのむしろ好きになりましたから、気にしないでください」
幸枝も
「みんな言ってるように無理やり連れ込んだのは私達だから。その正直言うとあそこまで苦手だと思って無くて。ごめんなさい。その、いつものケイ君の何をしても受け止めてくれる大きさに甘えすぎてて。それにケイ君も完璧じゃない、本当に苦手でダメダメになってしまうこともあるって知れて、嬉しいというか……前より好きになりました。やっぱり彼女にして欲しい」
「あぁその許してくれる受け入れてくれるのは嬉しいけどな、ここで告白してもダメだからな。良い加減友達で納得してくれよ」
「なによぉ、ここは良い雰囲気でオーケーするところでしょぉ」
最後にレイさんが近くに歩いてきた。そして、いきなり正面から抱き締めてきた。
「ごめんなさいね。面白半分にやりすぎちゃいましたね。でもこんな、こんな可愛いケイ君を見られて幸せ」
そこでちょっと間を空け
「ねぇ気づいてた?ケイ君今のホラーハウスで君みんなに抱きついちゃったのよ。だけど誰もいやだって言わないでしょう。そのくらいにはみんな君の事好きなのよ。好きには色々あるにしてもね。だから、そんなふうに謝るより、今日を楽しみましょう」
「え、抱きついた?」
みんなを見回すと。いつも通りだけど、ちょっとだけ拗ねている真由美。何か嬉しそうな幸枝と奈月。照れ笑いをしている葉子さん。ちょっとだけ引いている雄二。あ、察した。雄二に手を合わせて『ごめん』と送る。苦笑しながら右手を振り何でもないさと示してくれる。良い友人に恵まれた幸せを改めて噛み締め。
「ありがとう。少し時間ロスしたけど、遊園地を楽しもうか。ただしホラー系はもう無しでね」
「じゃぁファンタジークルーズにしませんか。ケイ君も少しゆっくりできるでしょうし」
葉子さんの提案で移動する。
ファンタジークルーズはペア座席が5列ある小船で小説の世界をめぐる遊覧船のようなアトラクション。自然にオレの隣に座ろうとする真由美に
「1回くらいはケイ君の隣に座らせてくださいね」
と幸枝が小声で話しているのが聞こえてきたり
「ケイ君に抱きつかれるのって結構嬉しいものね。普段はそれを真由美ちゃんが独占してるのよね。うらやましくない?」
「そんなこと言ってレイは花火の時にケイ君にシレっとキスしてたじゃないの」
等と話しているレイさんと葉子さんの声が聞こえてきたり。ポーカーフェイスを維持するのに苦労する展開。なんか変な方向に好感度あがってるなぁ。
それでも真由美を左腕で抱き寄せながらの園内クルーズは中々に気持ち良かった。
その後クラッシュフィールドで競争をしたり、コーヒーカップに乗るのに奈月と雄二以外の5人で乗る事になってドキドキしたりと楽しみ、ファストパスを取っておいたクラウドマウンテンに乗る事に。3人掛けの座席なので3人2人2人の3組に別れて乗ることにした。3人組みはオレと真由美と幸枝かなぁと考えていたら、奈月が
「これはにぃと一緒に乗りたい」
と言い出した。
「おい、おまえは雄二と一緒じゃなくて良いのか?てか、おまえがこっちに来たら雄二は誰と乗るんだよ」
「ん~葉子ねぇ雄二さんと乗ってもらっていい?」
「おい、勝手に決めんな」
てっきり雄二の横に幸枝を乗せるつもりかと思ったんだが。でも、この組み合わせはありっちゃありか……。奈月のたまには兄であるオレに甘えたいとの主張が認められて、奈月も一緒にのることになった。実際に乗るために並んでいると左腕にいつものように真由美が抱きついているところに右腕に抱きついてきた。
「おい、奈月ここでそれは……」
「えぇ、いいじゃん。ねぇ真由美ねぇ、あたしは良いよねぇ」
「くすくす。ケイ、なっちゃんについては諦めて」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます