第104話
結局クラウドマウンテンはアトラクションそっちのけで抱きついて来る奈月の相手で終わってしまった。久し振りに長い時間一緒にいて『にぃ成分補給をしたくなった』とのこと。なんだよ、そのにぃ成分って。
乗るまでの間ずっと左は真由美が定位置として譲らず抱き着いていて、奈月が右側から抱きついている。一人は幼馴染にして恋人、一人は妹。なんら遠慮の要らない関係なんだが二人が美少女と呼べる容姿をしているがため周りからの視線が痛い。幸いなのは遊園地という場所柄男のソロプレイヤーがほぼ居ないことだろうか。
「なぁ周りからの視線が痛いんだが」
「そんなの気にしても無駄だし関係ないから。久し振りににぃに抱き付けるのに離れるなんてあり得ないもん」
「なぁ真由美、オレの恋人としてこういうのはって思わないか」
「なっちゃんなら平気。なんならキスくらいまではしても良いよ」
あぁぁぁ、そういえば付き合い始めた頃にそんなことも言っていたような……
「ほらほら、あたしもちょっとおっぱい大きくなったよ。真由美ねぇと同じくらいになってない?Cカップになったんだよ」
「押し付けてくんな、妹のおっぱいとか誰得なんだよ。それに真由美のはD……イテッ」
「ケイそこであたしのトップシークレットをバラそうとしないの」
「ご、ごめん。って真由美まで押し付けて。真由美はいいか嬉しいし」
ちょっとふにふに、うんつい頬が緩んでしまうな。
「ちょ、ケイこんなとこで、もう」
「真由美、可愛いよ」
真っ赤になって照れる真由美にほっこりしていたら
「ぷぅ、真由美ねぇは良くて、なんであたしはダメなの。差別だ差別だ。妹を真由美ねぇと平等に扱う事を要求する」
「当たり前だろうが、男は恋人が押し付けてくるのは喜んで受け入れるもんだ。妹が押し付けてくるのを喜んで受け入れる兄がどこにいるか」
「「ここに」」
「そこでなんでふたりハモるかなぁ。だいたい受け入れてないし」
「妹は兄の恋人なのは基本でしょ」
「いやいや無いから。どこの世界の設定それ?こわすぎ」
「だってラノベ読んでいると大体兄はシスコンでアマアマラブラブだし、妹は兄大好きブラコンで……」
頭を抱えた、本気で頭が痛いぞ
「フィクションをリアルに持ち込むな」
とりあえずチョップしておく
「いたーい。にぃ最近あたしの扱いが雑すぎない?」
あ、それは少しあるかなぁ。色々雄二にまかせちゃったし。でも彼氏の出来た妹に構い過ぎる兄って痛いよな。などと考えていると
「にぃ、雄二さんにあたしを色々任せるのは良いけど、もう少し構ってよぉ。あたしにぃの事も大好きなんだから。にぃが構ってくれないと泣いちゃうよ」
「あぁ、わかったわかった。もう少し構ってやるから」
このブラコン、雄二と付き合いだして少しは改善したと思っていたのにひょっとして逆に拗らせてないか。そうこうしているうちに順番が来たのでとりあえずコースターに乗り込む。オレが真ん中で左が真由美、右に奈月。ベルトを締めてスタートを待つ間も両側からベタベタとくっついて来る。真由美は良いけど、奈月は構いつつ少し加減しないと……
などと考えていた時もあったけれど
アトラクションの敵が奈月の担当エリアに来ると
「にぃ、敵が来た。撃って」
コースターの揺れで少し身体が離れると
「にぃ離れちゃやだ」
そんなに?たった数秒離れるだけの事に不安を感じるほどにオレは奈月を独りにしてしまったのか?一瞬そんな風に考えていると
「にぃ、偶になんだからもう少し嬉しそうにしてよぉ」
「妹にくっつかれたからって、そんなに嬉しそうにする兄は……」
そこまで言って、ふむ、以前ならもう少しニッコリして甘やかしたか
「ごめんな、ちょっと奈月を独りにさせちゃったか」
そう言って奈月を抱き寄せた。兄であるオレでさえ乗り越えるのにここまで掛かったあの事故。墓参りを平気そうにしていたので大丈夫だと思ったけれど、寂しさを感じるところとは別だったかも知れない。もう少し甘やかしてやるか。でも、その前に
「真由美、ちょっと奈月が不安定で心配なんだ。少し構ってやることにするね。本当は真由美ともっとくっつきたいけど」
一言言って、真由美を軽く抱きよせ。髪に唇を落とす。
「うん、なんかなっちゃん変なのは分かるから。あとこれ降りたら兄貴にちょっと聞いてくるね」
真由美も協力してくれるみたいだ。受験の不安でゆれている程度なら良いんだけど……
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