第101話
『一緒に着替える』という危機的(?)事態を回避したあと朝食をすませた。今は真由美がオレの部屋で着替えをしているのをリビングで待っている。
「奈月の部屋でも空き部屋でも着替える場所はあるだろう」
と言っても
「ケイの部屋が良いの」
と譲らなかったからだけれど……
まぁあいつが変な悪戯をすることはないのはわかっているのでそれ以上は気にしない。そこに『ピロロン』スマホの通知音が鳴った。
さっちゃん:そろそろケイ君の家に向かいます
kei:おぉ良いぞ。こっちもだいたい準備できた。
mayuyun♡:着替えはもう少しで済むのでお化粧のお手伝いお願い
あぁそういえば自分でもできるようになったけど1人でやると時間掛かるって言ってたな。幸枝が手伝えば随分早いらしいから今日みたいな日は頼むんだな。
さっちゃん:いいですよ。腕によりをかけて綺麗にしてあげます。
なっち:にぃと真由美おねぇちゃんのイチャイチャで朝から胸焼けしそうです。みんな早くきてぇ
kei:雄二が来た段階でおまえらも異世界にいくじゃねえか最近
さっちゃん:うわぁ
ゆうじ:風評被害が酷い。撤回と謝罪を要求する
kei:拒否する。事実だから。今日はみんなに判定してもらうからな
さっちゃん:ちょっと足が重くなったんだけど
mayuyun♡:そんなこと言わないで。ケイの焼いたクッキーもあるよ
さっちゃん:そこに絶妙に欲しいものを。本当にあるの?
kei:おう、今日の遊園地でのおやつ用に結構沢山焼いたぞ
さっちゃん:真由美ちゃんのお化粧の前にエネルギー補給用に10枚のクッキーを要求します
kei:まぁそんくらい良いけど。そのくらいなら持って行くのと別にしてあるので足りるし
Ray♪:ケイ君のクッキーが食べられると聞いて。本当にあるのね。葉子ちゃん少し早めに行きましょう。
なっち:食べたいのに、胸焼けでたべ……やっぱり食べるぅ
kei:良いけど、みんなで食べるんだからな。遊園地でのおやつもあるし、食べきっちゃだめだからね
なっち:むぅぅぅ。あ、クッキーならそんなに時間掛からないじゃない。にぃが追加作ってくれれば解決
kei:今から作れって、もう外出用に着替えちゃったからやだよ。さすがに着替え直してとか勘弁してくれ
なっち:むぅ、しかたないガマンします。
葉っぱのこ:ふふふ、予定より少し早めに行きますね。私もケイ君のクッキー食べてみたいですし。
『ピンポーン』ドアチャイムが鳴った。確認すると幸枝がどうやら一番乗り。
「おはよぉ」
「さっちゃん、おはよう」
「幸枝、おはよう。上がってくれ」
リビングに上がると
「なっちゃん、おはよぉ」
「あ、さっちゃんねぇ、おはよぉ」
奈月が幸枝に抱きついて行く。随分と懐いたな。
「あ、ケイ君。クッキーを所望します。すぐにください」
「はいはい、飲み物はコーヒーで良いか?」
「うん、ありがとう」
コーヒーを淹れ、クッキーを皿に出して。幸枝の前に置く。
「どうぞ、召し上がれ」
クッキーを幸せそうな顔でつまむ幸枝にほっこりしていると。横から真由美に抓られた。
「もう、ケイって最近さっちゃんを見る目が優しくなりすぎじゃない?」
「え?友達を見る目は優しくなるだろ普通。真由美を見る目は優しさだけじゃなくて愛情も入ってるからな」
「え、そりゃ、あたしへの視線はちょっと違うけど、不意打ちで面と向かって言われると。心臓に悪い。ねぇなっちゃんあたし生きてる?心臓止まってない?」
照れてる真由美を抱き寄せ周りの死角になるようにそっとキスした。真由美は言葉も無くオレの胸に顔をつけてもだえ始めた。ん~可愛い。あたまをナデナデと撫でる。
「ん~、ぎりぎり……アウト」
奈月の呆れたような返事に
「……」
もはや言葉も無く、ひたすら悶えて可愛い。
しばらく悶える真由美を堪能していると、雄二が来た。当然奈月が飛んでいって抱きついてる。一瞬で異次元空間を形成した。オレの言ったのは言いがかりじゃ無いよなあれなら。
「なぁ幸枝」
「なぁにケイ君。告白ならいつでも……」
頭にチョップをして、雄二と奈月を示して
「あっちのことだ、あれってやっぱり異次元空間だと思わないか?」
「ああ、あれねぇ。ケイ君と真由美ちゃんと一緒までは言わないけど異次元空間だねぇ」
「え?オレ達ってあれより異次元?」
「自覚無いんだねぇ。はぁ。前にも言ったと思うけど。ケイ君たちのあれは私の前でするのは結構な勢いでデリカシー無いからね」
「お、おう、なんかすまん」
復活した真由美はメイクをするということで幸枝にまかせた。
『ピンポーン』ドアチャイムが鳴った。
「レイさんと葉子さんかな?」
確認すると、二人並んでいた。
「いらっしゃーい」
「「おはよおございます」」
「さ、とりあえずあがって」
「お邪魔しまぁす」
とりあえずリビングに案内すると。雄二と奈月がまだイチャイチャしていた。とりあえず異次元のふたりは無視して。
「ふたりともそこ座って。飲み物はコーヒーで良い?紅茶でもいいけど。話に出たクッキーはそのお皿のうえ……奈月」
「なぁに、にぃ」
「出しておいたクッキー全部食ったのか?」
「あぁごめんなさい、手が止らなくてつい」
「たくもうぅ。みんなでって言っておいたのに。別に取っておいてよかった」
別にしておいたクッキーを追加して
「これが話しに出てたクッキーね。飲み物はどうする?」
「私はコーヒーでお願いします」
「面倒でなければ私は紅茶お願いします」
レイさんはコーヒー、葉子さんは紅茶ね。
「ほいほい、まぁクッキーは適当につまんでね」
コーヒーと紅茶をそれぞれ淹れてテーブルに持って行く。
「クッキーおいしぃ」
「売ってるのより美味しいんじゃないですか?」
ふたりの感想が面映いけど、美味しいって言ってもらえるのは嬉しい。
「レイさんはコーヒー、で葉子さんが紅茶ね。どうぞ。今真由美が幸枝にメイクしてもらってるので食べながら待ってね」
ふたりの向かいに座って雑談に加わる
「ケイ君本当に料理上手ね」
「まぁうちは親が忙しくて家事があまり出来なかったので、オレが親代わりにやってたんですよ。そうしたらいつの間にかって感じですね」
「それにしても。今度教えてもらおうかしら」
「あぁ、うぅ。教えるって……」
そこにいつの間にかクッキーを咥えた奈月が
「にぃから教わるのは多分無理ですよ」
「え?どうして?」
「にぃの料理ってレシピ無いんです。色々な食材の味を頭に入れていて、頭の中でシュミレーションしてアドリブで作ってるので。正直言って私にはあれで何故こんな美味しいものが出来てくるのか謎です。あれこそ料理チートです」
「チート言うな。単純に味を足し算引き算してるだけだから」
「普通はそれが出来ないの」
「そうなの?」
「「はぁやっぱりケイ君ねぇ」」
「なんで??」
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